第2話 カニバル
血の匂いで目が覚めた。不快感や恐怖よりも、
底知れぬ空腹間を感じた。
気が付いたら手に血付いていた。それどころか身体のあちらこちらに血が付いていた。
周りを見渡すと私が今まで食べてきたであろう骨や肉片があった。そして、咀嚼音も聞こえてきた。
クチャッ……ニチャッ……クチャッ
「なんだ、喰わないのか、さっきまでの食欲はどこに行った。」
暗闇から声がした。目を凝らして見てみると、人間のシルエットが見えた。
ただ、頭がない。私は短く悲鳴を上げた。
そのシルエットは低い声で笑った。
「何を怯えているんだ……そうか、わしの姿を見たからか、少し待って居ろ。お前らの姿に変身してやる」
と言うとシルエットが倒れた。少ししたらまた声が聞こえた。これで良し、この姿なら怖くないだろう。その言葉と同時にシルエットが両足を引きずりながら迫ってきた。
ジャリッ ズリズリ ジャリッ ズリズリ
「ほれ、これで怖くないだろう。いたいけな少女よ」
そういうとシルエットが私の近くに来た。
が、それはかつて人だったものだった。体の大半は骨になっており、もう誰かは判断できないほどだ。
まさか、周りに落ちている骨や肉片は……
こみ上げる吐き気。全身から吹き出す汗。それがすべてを物語っていた。蹲り、嗚咽を殺そうとしたが、嗚咽が漏れる。
「おいおい大丈夫か。ほれ、水でも飲め」
竹で作ったであろう水筒が目の前に置かれ、目を開け見上げると愛人が立っていた。
「なんだ驚いた顔して、こいつの姿だったが知り合いか?」
と首のない死体を指した。
過去に囁く夜龍 ニコ @NicoNicokusunoki
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