過去に囁く夜龍
ニコ
第1話 昔の話
昔、私には愛人がいた。愛嬌があり、とても優しい人だった私の愛人は、一種の病にかかっていた。治ることのない、止まない苦しみに蝕まれていた。だから私は愛人を殺した。
睡眠薬と毒を使用し奇麗な彼女の身体のまま、彼女を殺害したその日の深夜に家を出た。
不治の病で苦しむ姿なんて見たくなかったから、薬に睡眠薬と毒を混ぜた。
空には星がまたたいている。まるでこの世の果てに来たような清々しくも、少し不安と恐怖が含まれた気分だった。星々に照らされながら、あてもなく彼女を背中に乗せて歩いた。
村を抜け、川を渡り、森に入った。
森に入った頃には朝焼けが私を、私たちを出迎えてくれた。ふと、周りを見渡すと森の奥まで来ていたようで、村に生えて居た木々よりもはるかに高い木々が並んでいた。その奥に洞窟を見つけ休憩のために入った。
中は涼しく、水もあったが私には関係なかった。これから自殺をする人に生きる環境が整っていてもしょうがない。言うなれば、猫に小判、豚に真珠といったところだろうか。
その洞窟は外観からは想像できないほど奥につながっていた。
どれほど歩いたか全くわからないが、不思議なことがおきていた。全く疲れや、空腹が感じられないのだ。そして、彼女は少しずつぬくもりを感じ始めた。しかし、呼吸はしていないうえに脈もない。生き返ったときは、もう一度殺害すればいいのだから。毒には余分があるから。
私は歩くことを諦めた。途中で彼女を寝かせ、
私は墓の代わりとなる小さめの岩を二つ探してきて寄り添うように置いた。そして彼女を岩の左側に寝かせ、私はその隣で横になった。
これまでの人生を振り返り、多めに毒と睡眠薬を飲んだ。
最後に彼女の横顔と自分の身体が見えた。
首から下だけになった身体が。
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