あとがき

 いやはや…、それにしても世の中というものは…、どんなに善良な男であっても、ときに残酷極まりない落とし穴が待っていることもあるものでございます…。

 この失意の夫についてこれ以上お話しするのもはばかられるのでございますが、最後に少しだけ付け加えて締めくくらせていただきたいと思います。


 絶句した夫は思わずトイレに駆け込みました。ドアに鍵をかけると、しばらくなにも考えることもできず、ただただ、呆然と立ち尽くすほかありませんでした。しかしその後、気がつけば両手の爪で壁をガリガリガリガリ引っかきはじめたということです。あまりのショックでそのような奇行に走ったのかもしれません。

 それはそれは、猫の爪とぎに負けずとも劣らず、壁一面が傷だらけになったということでございます。


(了)

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今居一彦 @kazuhiko

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