イベント

 そもそも、ゲームクリエイターが何をしているか?というのは普通の人は知らない。何なら僕も全く知らなかった。

会社にもよるが、一般的にはゲームプランナー職(クリエイターと言う人はいないらしい)とデザイナー、エンジニア(プログラマー)という構成になっている。当然サウンドを作る方もいたりするが、人数の大半はこのメンバー構成となる。

デザイナーは大枠で言えば絵を描くお仕事だし、エンジニアはコードを書く。

プランナーは企画を作るのが仕事だ。


会社のカフェで適当に買ったサンドイッチを頬張りつつ、Slackを眺める昼休み。

 同僚は同じようにご飯を食べたり、寝ている人など様々な人がいる。

「東、食事の時は集中してとったほうがいい。何事もメリハリは大切だぞ」

 いつものような缶コーヒーを片手に由紀子さんが話しかけてきた。

 いつものラフな格好とは少し違って、シックなカーディガンにスニーカーではなくパンプス。

「今日は外部の人間とのミーティングがあるからな。TPOはわきまえているよ」

「そういうのは気にしない人なのかなと思っていました」

「個人的な考えとしては、服装で何かが変わるとは思ってはいないし、くだらんなと思っている」

「ではなぜ、そういう服装をしているんです?」

「皆が同じ価値観とは限らんし、どうでもいいことでつまらん感情を持たれても損だ。相手の気がすむのなら、それらしい服装にしてやるし、膝に手を置くことくらいはしてやってもいいと思ってるよ。私はめんどくさがりなんだよ」

「膝に手ですか…」

「今日のミーティングは昼間だし、そんな無茶な人はそうそうおらん。まぁ、本当に要求されたらあらゆる方法で相手や社会的立場を粉々にはしてやる」

 恐ろしいことを話しながらひらひらと手を振りながら由紀子さんは去っていった。

 姿が見えなくなると、僕はほとんど白紙のエディタを見たため息をついた。


-3時間前-

「さて、今日からは君に実務をやってもらうことにする。時空の狭間というイベントはやったことはあるかね?」

 時空の狭間、このゲームでたまに行われているイベントだ。仰々しい名前はついているが、ランダムに出現する敵を倒し、得たポイントでランキングを競うものだ。

「はい。最近までやっていたものはプレイしました」

「そうか。次回のこのイベントの企画を君にやってもらおうと考えている」

「企画ですか・・・」

企画をするというのは正直ピンと来ない、何をすれば良いのか僕は少し不安に思っていると、顔色で察したのか言葉を継いでくれる。

「そうだな。具体的にどうするのかを詰めてくれればいい。過去の企画もあるのでそちらも参考にすれば少しは理解できるかもしれない」

「わかりました。ではわからないことがあれば質問をします」

「わからないことがあれば質問をしろ と敢えて言っておく。しても良いではなく、質問をするのが君の義務だ。面白いイベントにしてくれよ頼んだぞ」


というわけで、今僕はうんうんと考えている状態だ。

試しに以前のイベントを遊んでみたが、正直面白いというよりは修行のように繰り返し行うだけで、面白いとは思えなかった。これをどうしたら面白くできるのか全くわからず、何かを書いたり消したりを繰り返している。

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