弥生さんは不機嫌
用事を終え、自宅についた弥生はソファに体を丸めてムスッとしていた。
「どうしたんだいやよち、お姉ちゃんに話してみなさいな、いや、体を通してグヘッ!」
「お姉ちゃんがこんなんだから弥生の機嫌が悪いのかもしれないわよ、少しは自重しなさいよ!」
「ふへっ、自重?私の辞書にはやよち~らぶしか載ってないぜ!ってさっきからお玉で頭を叩かないでくれる?!」
いつもどおり沙奈と芽衣のやり取りを前にしても未だにムスッとしている弥生に二人はどうしようもないといった様子でいた。
「ねえ本当にどうしたのさ、姉は弟が心配なんだよ」
「別に大したことじゃないよ」
「ならなんでそんなにムスッとしてるんだい?」
「面白くないから」
「何が?」
「相談」
「そっか」
ハンドサインで沙奈は芽衣に大丈夫そうということを伝えてから弥生の丸まって座っているソファに座って話を聞いていく。
生徒会長であり、弥生の姉である沙奈は相談部のことを知っている数少ない人の一人でありよくこうやって弥生がムスッとしている時は弥生の側で寄り添って聞いてくれる。
「恋愛相談なんだけど面白くないんだよ」
「どうして?」
「だって、どっちも嫌いじゃないんだよ、それなのに疲れたからって別れようとするんだ。面白くないったらありゃしない」
「そっかそっか、でもこういう相談は前にもなかったの?」
「一応あったはあったよ、嘘だったけど」
「ありゃりゃ・・・・・・まあでも今回のは本当に二人はお互いを愛しているんだよね」
「そうだよ、でも男のほうが疲れたからって」
「納得いかない?」
「うん」
「どうして?」
「好きなら好きでワチャワチャやればいいんだよ、何で相手に気を使わないといけないんだよ、好きだから付き合ってるのにそんな事で別れようとするなんて許せないよ」
「そっか、私はなんとなく分かるよその相談者の事」
その言葉を口にした沙奈を意外に思い弥生は顔を上げて沙奈を見た。
「大切なものだから自分のせいで壊したくない、無くしたくない、そう思ってずっと根を詰めて頑張ってると途中で糸が切れて疲れちゃうんだよ、そんでもって何やってんだろうってバカバカしく思っちゃうんだよね」
「男のほうもそう言ってた」
「そっか、まあ初めての試みってのはほとんどがさっき言った理由でほとんどが挫折するんだ。仕事であっても恋愛であってもそれは変わらない、だけど一歩踏み出せば状況は変わるもんさね」
「どうやって」
「こうやって!」
弥生の丸まった背中に一発平手で叩いた。
「頑張れ!まだお前はやれるってね!」
「なんだよそれ・・・・・・」
ヒリヒリする背中を擦りながら弥生はそう口にする。
「まあなんだ。やよち~は面白くないだろうけどそれが恋なんだよ。それが恋愛なんだよ。だから今はムスッとして面白くないなんて言ってないで相談者の背中に私がやったのと同じように鼓舞する様な言葉を口にして前を向かせてやんなよ。そしたらきっと面白いからさ」
にこやかに笑う沙奈に戸惑いながらも
「分かんないよ、面白くないよ・・・・・・でも、アネキチの言うことは大体合ってるからやってみるよ・・・・・・ありがとうおねえちゃん」
「おっ!おねえちゃんだと・・・・・・良い!!よしこのまま私を愛し、そして私を一生のグヘッ!」
「せっかく良いこと言ったのに台無しじゃない!沙奈、弥生、ご飯にするから準備手伝って」
「「は~い」」
沙奈との会話で機嫌が治った弥生は沙奈と芽衣のやり取りにくすりと笑いながらソファから立ち上がって芽衣の手伝いをしに向かった。
今日一日弥生は自分勝手な悩みにモヤモヤをいだき、そして先程の沙奈との会話によって解消し、今日を終えた。
女装男子、相談部の弥生さんは恋している! 柊木 渚 @mamiyaeiji
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