第3話 「攻略が始まった?」

ボクこと、赤沢ヒカリはこう見えてゲーマーだ。

学校の勉強は真面目にやってこなかったけど、ゲームに関してはかなり詳しい自信があった。

でもボクがやってきたゲームたちは、どうやらAIの作った数々の駄作を選別し、生き残ったまともな作品だけだったらしい。

この世にこんな酷いゲームがあったなんてね。



僕は今、全裸だった。



「……」


どうしてこうなった?


鍛冶屋でロングソードを手に入れたら、それと引き換えに服が全部なくなった。

男の子の大事な部分はモザイクが掛かっている。

モザイクかけるぐらいならパンツ一丁ぐらい残してくれませんか?



(先輩、どういうことですか?)

「待て。今調べている」


先輩にもわからないらしい。


「あー、そういうことか」

「わかりました?」

「お前所持金ゼロだろ? だからだな」


いやわからん。


「鍛冶にもお金がかかるらしい。だが所持金が足りなくて、服が自動的に売り払われたようだな」


そんなことある?


(どんなシステムですかそれ……)

「AIはそれでいいと思ったんだろうな」

(心配すぎる、このゲームも、現実世界のAIたちも……)


「まあ、ただの見た目装備だ。実質的な防御力は変わらん」

(いやそう言われましても……)


全裸にロングソードで戦っていけと?


「ひとまず、防具を買おうにもお金が無い状況だ。モンスターを狩るしかないだろう」

(お、ついに戦闘ですか?)


ようやくゲームらしいことが出来る。ボクのゲーマーの血が騒ぎだすぜ!


「ああ、戦闘だ。この辺りにいる一番弱い敵は……レベル18のトレントだな」


レベル18?


(先輩、ボクのレベル1ですよね?)

「そうだな」

(レベル18って倒せるものなんでしょうか?)

「1発食らったら即死か、よくて瀕死だろうな」


ええ……絶対に食らいたくない……。


(どうしてそんな敵配置になってるんですか……)

「サービス稼働時にも当然その批判は来たらしい」

「開発AIの回答によると、”だって普通、弱いモンスターの生息地が集中してたりしないでしょ?”だそうだ」

「ちなみにレベル1のモンスターは存在するが、各所に散らばっていて、ラストダンジョンでも出てくる」


そこにリアルを求めなくていいんだよ? AIさん……。


(えっと……もっと弱い敵がいるところは……)

「東の街に行けばレベル4のオオカミがいる」

(おお! じゃあそこに行ってみていいですか?)

「今の足の速さだと、2時間はかかるぞ」

(2時間……)


2時間も走りたくない……。


「それに、その一帯はレベル4のオオカミ以外は全て、レベル20超えだ」


……だんだんと、このゲームのヤバさがわかってきた。

これ、間違いない。クソゲーって奴だ。



(先輩これ、詰んだのでは?)

「まあ待て。まだ希望はある」

「さっきお前が作ったロングソードを見てみろ。ボーナスが付いている」


え? そうなの?

ボクはインベントリを開いてロングソードを確認してみた。

ボーナスの欄にはこう書いてあった。


*クリティカル率+52%

*クリティカルダメージ+120%


(こ、これは……!)


ゲーマーのボクにはわかる。

ランダムでボーナスが付与されるシステムにおいて、

この2つが同時に付くことは珍しい。

そしてどちらもクリティカル。これはかなり強いはずだ。


(先輩、もしかしてこれで……!)

「ああ。察しがいいな」


クリティカル型カッコイイ! なんだかワクワクして……


「そいつは高く売れる」


は?


(え? 売るんですか?)

「売る。今のお前には必要無い効果だ。それで新しいアイテムを買え」


えー。自分で作った武器で戦うんじゃないんかい……。


(まあ、わかりましたけど……何を買うんです?)

「火炎瓶、24本だ」

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サービス終了したクソゲーをクリアするのが僕たちの仕事です 水原キサト @ganta7188

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