幕間コラム5(カルテル)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
C市の二大カルテルの対決も幕を閉じました。次からは、勝者となったフアンと周囲の人間模様を描いていきます。
ところで中南米の麻薬組織は「カルテル」と呼ばれますが、どうしてなんでしょうね。今回はカルテル事情を簡単にご紹介します。
といっても、実は私はカルテルにさして詳しい訳ではなく、この物語を書くにあたって調べた付け焼き刃的な知識を基にしたご紹介になってしまいます。不正確なところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。むしろお詳しい方いらっしゃいましたら、「ここは違う」「実はこんな話が……」等々ご教授いただけますと幸いです。
※このコラムはさらっと飛ばして、本編に戻っていただいても、まったく支障ありません。
1.マフィア
欧米の犯罪組織といえば、真っ先に「マフィア」が頭に浮かぶのではないでしょうか。おそらく多くの方がご存知の通り、これはシチリア島に源流をもつ言葉で、主にイタリア系の犯罪組織に冠せられる呼称です。
「ファミリー」「ゴッドファーザー」という言葉で象徴されるように、家族的、互助組織的な性格が強い印象です。あるいは、
諸説あるマフィアの語源のうちでも最もロマンチックなものは、フランス兵に乱暴されて息絶えた娘を
「Morte alla Francia Italia anela!」(フランス人に死を、これはイタリアの叫び!)
の頭文字をつなげたというもの。
実に宿命的な名ですね。
ただ、一面の真実を表すエピソードではあるように思えます。シチリア島が最終的にイタリアに帰属したのは19世紀のことで、それまでこの島は長らく他民族の支配を受けてきました。その歴史がマフィアの形成に影響した部分は小さくないと思います。
2.カルテル
それに比べると、経済用語から出た「カルテル」からはずいぶん乾いた印象を受けます。
経済用語におけるカルテルは、価格等の競争条件を統制するための談合や協定、あるいはそれを行う企業連合のこと。各国の独占禁止法に触れる行為であることが多いですが、合法的な範囲内で行う抜け道を探して法と
おそらく最も有名な「メデジン・カルテル」は、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルを中心に結成された、南米のコカインを北米へ売る連合体です。
原料生産者、精製者、販売者をつなげるネットワークということで、「カルテル」と呼ぶようです。コロンビアではライバルのカリ・カルテルと激しい争いを繰りひろげ、最盛期は両者あわせてアメリカ合衆国へ流れる麻薬の8割を寡占していました。
3.シンジケート
もうひとつ、犯罪組織に冠せられることの多い「シンジケート」の名も、「カルテル」と同じく、その出自は経済用語です。
シンジケートは、カルテルを一歩進めて共同販売を行う形の連合。こちらは合法的と判断される形が多いようです。「シンジケート・ローン」なんかが有名。
4.まとめ
こうして見ると、犯罪組織間の連帯が、「カルテル」「シンジケート」と呼称される理由のように思えます。
日本の広域暴力団も、複数の組が集まって一大組織をつくり上げている点では「シンジケート」なのかもしれませんね。
無機質な印象の「カルテル」「シンジケート」と、浪漫の香気漂う「マフィア」。
平気で人の生命を奪う残虐さはいずれ劣りませんが、脳裏に思い浮かべる絵や色合い、温度や匂いは、その呼称によりすこし異なるかもしれません。
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