第2話猫は犬にはなれない

剛田アキラ、ジャイアンかよ!!って思ったのが第一印象。背が高くて筋肉も人並みにあり決して美男子ではないが、笑うと柴犬のような笑顔が可愛い人。もちろん、歌はヘタで鼻歌も何を歌っているのか分からない、少し音痴なところも素敵な人。

そんなアキラと出会ったのは、初めて応募したシェアハウス。さみしがりやの私には、シェアハウスは心地よく猫にでもなった気分にさせてくれる。ゴロゴロしてたら誰かが煮干しをくれて、たまに愛想を振りまいたらなでなでのご褒美をくれる。温もりが欲しくなったら温めてくれる。私は誰かの飼い猫になりたい。

アキラはそんな私の望みを全部叶えてくれた。欲しい時にハグ、お腹がすいたらご飯を、髪の毛を洗ったり乾かしたり。自由気ままな私をそのまま受け入れてくれた。

私はいつからか、アキラがいないと生きていけないと感じ始めた。飼い猫のはずの私は、掃除をしたり料理をしたり、いつの間にか大好きだった合コンも行かなくなって、友達もいらないと思っていた。初めて人を大事にしたいと思っていた。

アキラが帰ってくると、玄関に迎えに行って、一番に抱きしめて欲しい、今日頑張った事を褒めて欲しい。もう、猫じゃなくてただの犬に私は変わっていた。

だけど、私は今まで犬でいることが無かったから、犬のなり方が分からない。感情や行動がどうしていいか分からない。言葉にできないことが多くなって、涙に代わってしまう。嬉しかったことも楽しかったことも、素直に顔に出すことができない。

アキラはいつも優しい。こんな私でも大好きだよと言いながら抱きしめてくれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妄想バカでも腐女子と呼ばれたくない Kurom @Kurokolama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ