第21話 日記

7月15日

パソコンで日記をつけ始めてもうすぐ1か月になる。

一日の出来事や自分の気持ちを振り返って文章にするとなんだかスッキリする。

いつかお話しをつくって書いてみるのもいいかなと思う。


 今日は一日ずっと学校にいた。先生はつらくなったら保健室に行って、それでもつらかったら早退してもいいと言った。

 私は時々遅刻や早退をして、たまに欠席して、でもだんだんと普通に学校に居られる日や時間が長くなった。

 野中くんや愛ちゃんも時々教室に来るようになった。



 学校にいる間、時々自分の身体と気持ちを見つめてみる。今日は3回ぐらい緊張している自分を確認した。

 まずは朝。校舎に入る前の消毒まち。朝はいつも緊張が強い。でも今日は乗り越えられた。ドキドキを意識した瞬間に久美ちゃんが話しかけてくれたからかな。少し離れた場所からマスクをしていても大きな声で話しかけてくれる久美ちゃんはすごく頼もしい。

 次は15分休み。友達との密接を避けて過ごさなきゃならない15分の休みは長過ぎる。いつもは久美ちゃんとお喋りしてすごすんだけど、久美ちゃんは今日は日直で黒板を消したら、先生に呼ばれて職員室に行っちゃった。仕方ないから本を読んで、なんとか15分が過ぎた。

 あとは給食の時間。誰も喋らず、食器の音とスピーカーからの音楽だけが聞こえる給食の時間は気持ちが悪い。先生に相談して、図工室で1人で食べる事にした。1人だったら静かでも変じゃないから気持ち悪くもない。窓の外を向いて座っていると気分が晴れる。途中で一度先生が様子を見に来てくれた。ドアをノックする音に少し驚いて振り返ると、先生が顔を覗かせて、笑顔で手をふっていた。ホッとして手を振り返したら行っちゃった。余計な事を言わないのがいい。先生が担任でよかった。


 帰り道。少し前を歩く久美ちゃんに、あのお隣の家のお兄ちゃんが話しかけてきた。久美ちゃんの危機に間隔なんて空けていられない。慌てて駆け寄ったら、お兄ちゃんが久美ちゃんに必死に謝まっていた。

 久美ちゃんはお兄ちゃんから顔をそむけて、真っ赤な顔をしていた。そして「もういい!」と言って歩き出した。私はビックリして一瞬遅れて久美ちゃんに並んだんだけど、久美ちゃんを見ると、ニヤニヤしちゃうのを我慢してるみたいな顔をしていた。不思議だから

「なんなの?何が"ごめん"で、何が"もういい"なの?」って何回も聞いたけど久美ちゃんはおしえてくれなかった。「そのうち…そのうち話すね」って…。そのうちっていつの事だろう。

 久美ちゃんばかりが秘密を持っててズルいと思う。


 来年は中学生になる。私にも久美ちゃんみたいに秘密が増えていくのかな。その頃にはコロナもなくなっているといい。できれば中止になっちゃった修学旅行のかわりがしたい。久美ちゃんと一緒にどこかでお泊りができるといいな。

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小学6年生 コロナの日々 @yadatamared8304

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