どうしたいの?ぼくはこうしたい。

おうさかひなと

プロローグ

 このところ、やる気がない。

 胸の片隅に持ち込んできたものがぽろぽろとこぼれ落ち、止められない。心が虚ろになり、一日が一月のように長い。

「こんな僕に何ができるのだろうか、何を残せるだろうか」

 白い紙に筆で塗りたくったように墨で真っ黒な世界に滲んでしまいそうだった。


 僕は、生まれつき身体が丈夫ではない。小学生の頃なんて六年間の半分を病室で過ごした。父さん、母さんは僕がどんな病気なのか、どこが悪いのか教えてくれたことはない。

 知りたい。

 と思いながらもなぜか聞くことが出来なかった。そして、聞くことが出来ないまま、父と母は不慮の事故で先月亡くなった。何も言わないまま二人は僕の前からいなくなった。葬式には出席したが、その時の父と母の遺影に眼を向けることは出来ずどのような式だったかあまり記憶にはない。

 式の最後、父の叔父が僕の前で

“君の父母から預かっていた手紙だもしものときは君に渡してほしいと頼まれていた”

 と手紙をもらった。

 そして、一月後の現在。まだ、手紙の中を見ていない。どうしても、読む気にならなかった。でも、今日は読んでみようかなと思っている。主治医の先生から話があるとさっき呼ばれたからだ。きっと僕が聞きたかったことすべて知れる気がする。その後、この手紙を読もう。「冬咲 蒼真さ〜ん!」看護師の人が僕の名前を呼ぶ。へたへたになった手紙を服のポケットにしまい、車椅子を診察室へと向けた。診察室の扉へと車輪を動かし部屋へと入る。カチャカチャ。僕の止まっていた心は歯車の音のように静かに動き始めた。

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どうしたいの?ぼくはこうしたい。 おうさかひなと @OusakaHinato

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