第六話 想定外














午後七時十三分



俺たちの第一日目のスタートの火蓋が切られ


た。



出現する魔物のレベルは50ー100Level。初心


者ならなんとか行けるレベルである。




だから、ラスとタッキーの二人だけで、ザッ


クザックとゴブリンやらオークやらを倒して


進んでいる。


正直俺は何もしていない。


まるで指導者みたいな、そうかと思えば実は


弱いザコキャラに見えるかもしれない。


しかし、何度イメージしても、ラスとタッキ


ーに殺されるというビジョンが浮かばない。


いや、浮かんでほしくないというのが本音


だ。


初めてのチーム。裏切られたら、その後に他



のチームを作ろうと思わなくなるかもしれな


いから。



「俺ら二人だけで、ほぼ全員の敵倒してるん

じぇか?」



ゴブリンを真っ二つに斬りながらタッキーは


つぶやいた。


「丸さんは最初からやってて強いんだよ!こ


ういう弱い魔物は私達がやるべきなの!」


ラスは弓でオークの頭を貫通させながら言っ


た。




その時だった。



全員正面に敵を持ってくることによって一方


的に攻撃できていたが、一体のオークが裏を


回って、ラスに飛びかかろうとしていた。



「さおり!!後ろ!!」



タッキーは叫びながらラスのもとに向かおう


とするが別のオークが進路を塞いでいた。


「どけよ!!おめえら!」


リーチの長い大剣を台風のように振り回し、


周りのオークやら、ゴブリンやらを上半身と


下半身の2つに分けていく。


「さおりの手入れした剣は切れ味がいい


な。」


決め顔をして、ラスに近づこうとする。


しかし、脳が揺れてうまく立てないのだろう


か。ヨロヨロとふらつき倒れ込んでしまっ


た。






「あーらよっと」


タッキーに襲いかかろうと走ってきた数十体


のゴブリンを丸は瞬殺した。処理にかかった


時間。わずか1.5秒。


すぐにラスのいた方向をみたがそこにはラス


はいなかった。




「来ないで!」



ラスはオークから走って逃げていた。ときよ


りつまずきそうになるが、タッキーの作って


くれたチャンスを無駄にしまいと懸命に足を


動かしていた。


走力アップのアイテムは底をつき、少しず


つ、オークに間を詰められていた。


「丸さん……助けて」



あの人は何をしているのだろうか。まさか兄


ちゃんが殺されるところ見物していたりし


て…。いや!あの人はそんな人じゃない!で


も、なんで助けに来てくれないの?



「いやぁ!」


考え事をして走っていて、下を見ていなかっ


たラスは地面から出ていた石につまずいた。


後方を見ると10メートル先によだれを垂ら


し、目が笑っているオークが迫ってきてい


た。




「ここから約150メートル先だな」



両手で足を足首から太ももまでを下から上え


と滑らせた。する度、瞬く間に足は金色に光


りだす。


「スキル。神速。レベル8!!」



左肩にはタッキーが背負われている。しかし


60キロを持っているのにも関わらず、一瞬


で風になった。




「やだ!!来ないで!」


彼女の手は震え、弓を構えることすらできな


い。


ごめんね。お兄ちゃんが作ってくれた間に逃


げ切れること。できなかったよ。丸さんも倒


すのに苦労してるのかな?あんなに油断する


なって、丸さんに言われてたのに。私のせい


でお兄ちゃんも…。




そして9…8…7…6…5メートルと近づく


たび、死か近づいていることを覚悟した。



3…2…


オークが、バットのようなものを振りかぶ


り、ラスは瞼を閉じた。





タタタタタタタタタ…シャキン




ドドドドドドド…ドシャァドシャドシヤ




「間に合った間に合った」


服についた返り血を払いながらラスの前で止


まる。


ラスは目を開けると、そこはリスポーン地点


ではなかった。




リスポーン地点の回復役の人たちかなぁ?



しかし、そうではなかった。


少しずつ、目線を上げていくと目の前には、


信じていた丸と担がれたタッキーがいた。



「丸さん…」



丸はタッキーを寝かせ、腰を下ろし、涙なが


らのラスを安心させるかのように抱きしめ、


背中をポンポンした。




「よく頑張った。よく走りきった。」














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