第五話 兄弟

「待った?」



「待った?じゃねーだろ!普通何分前とかに

来るのが普通じゃないのか?」



「現実でも色々あるのよ。これでも頑張ったほうよ。そろそろバカ兄貴もログインするから」



現実でもか……。たしかにそれはある気がす


る。っていうか俺が暇すぎるっていうのが普


通じゃないのかもしれない。学生なら、勉


強、部活、風呂、食事など時間が足りないの


が普通なのかもしれない。


「ラス。七時十分から、イベント用サーバー


に行こうと思うけど、武器の手入れや回復は


大丈夫か?」


「すべて私がやっておきました。わざわざ行


列に並んでまで回復アイテム買いに行ったん


ですよ?それにあのバカ兄貴の分の武器の


手入れもしておいたし。もー!少しは褒め


てくださいよ!」



ラスはタッキーに対する怒りと一人でちゃん


とやったことを褒めてほしいの2つの感情が


入り混じり、口はとんがっているが、目はど


こか疲れている。



「あんなタッキーの分まで頑張るなんて本当


に頑張ったね。やっぱり兄貴のことがなんや


かんや心配なんやな。」



彼女の顔は「頑張ったね」ってところまでは


嬉しそうな表情をしていたものの、そこから


の後半はまるで憤怒に満ちた顔に変わってい


た。



「何言ってるんですか!あいつのせいで負け


たら、洒落にならないからに決まってるじゃ


ないですか!」



「そ、そうだな」



落ち着いてというふうに手で慰めて、ふと時


計を見ると七時五分を回っていた。


「バカ兄貴何してるの?結構待ってんだけど!」


いやどっちも遅いです。と言いたい。だが、


もしこれが原因て裏切られたらたまったもん


じゃないと言い聞かせ、言葉を飲み込んだ。



タッキーの遅さに呆れて壁にもたれて座って


いたら、すぐにタッキーが来た。


「待った?」


俺は壁に持たれたまま、スイーと立ち上がり


タッキーを指さした。 


「十分遅刻だぞ。これからは気をつけるようにしてよ」


「わかった。気をつける」


気をつけるってことは気をつけたけど間に合


わなかったっていうのが通用するから次もま


たやるなと心の底から思うのだが、こう話し


ている間も時間は進んでいる。


何も言わずに街へとあるき出した。


イベントは扉に入るとすぐに開始された。


「わぁ、映画の中みたい」


周りは深い木々に覆われ、ときより吹く風


で光がランダムに差し込む。全く手の入れら


れてない自然感が溢れ出ている。



「絶対生き残るぞ!作戦どおりに動こう。周


りをよく見て、決して油断をしないように」



「わかってるわよ」



「おけ丸吉之助」



二人の気合は十分に感じられるため、注意す


る必要はなさそうだった。


正面に俺、右サイドにラス、左サイドにタッ


キー。こうして俺たちの一日目のサバイバル


は幕を開けた。

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