第四話 意外











直樹は迷っていた。


今日七時にタッキーとラスとで待ち合わせる


予定をしているのだが、今日は6時半まで図


書委員の仕事があるのだった。


どううまく口実を作って切り抜けられるか‥


直樹は悩んだ。


「どうすればいいのかなぁ?」


独り言をつぶやくと


「どうしたの?」


6時間目のホームルームが終わりかけの頃、


隣の優等生、名取若葉が話しかけてきた。



「今日ね、大事な大事な約束があるんだけ


ど、図書委員の仕事があって困ってんだよ


ー」


お願いをするような目線を贈り、わかっても


らおうとする。


「今日は何もないから変わってあげよう


か?」


「まじで!?」



「これはあなたのためじゃありません。もし


サボって、相方が一人でやるハメになったら


大変と思っただけです。」



「じゃあお願いねー」



良かった。まさかやってくれるとは思わなか


ったというのが本音である。


「ねぇ」


「ん?」


「あなたまさか、無償でやってくれると思っ


たの?」



「え?あ、あぁ。思ったけど‥‥」



何かを企ん出る表情だ。女は何を考えてるの


かわからない。


「やってあげる代わりに一つお願いを聞いて


もらえる?」


「あ、あぁ」


やってもらうのだ。覚悟はしている。


「断れるわけないよね」


鼻で笑う名取。


「さぁ来い!何が望みだ!」



「うるさいよ。何をいきなり。私が悪いみた


いじゃない。」


そう言うと、耳を貸せとジェスチャーしてき


た。


「ゴチョゴチョゴチョ‥‥」


「それでいいのか?」


「いいの。」


「意外だな。」


「あなた達もやってるみたいだから」


そう言い、またノートを取り始めた。






改めて説明しよう。名取若葉。一年D組クラ


ス委員。成績は安定の学年トップ3。顔もそ


こそこ可愛く、男子の中では狙いの的とされ


ている女子だ。あいにく俺は女性を女性とし


てみない性格でね。一人の人間としてみる方


だ。そういう視点で見ても彼女は評価が高


い。





「図書委員の仕事よろしくね」


「あんたこそ約束は守りなさいよ」


こうして契約は成立したのだった。




午後6時55分


「アイツら遅いなぁ。普通5分前には来るのが当たり前だろ」

わざとらしくため息を付きやれやれと独り言をつぶやくと


「待った?」









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