第10話 ボギンスの謀略

 ボギンスは時間が欲しかった。勇者の進行は予定よりも30日以上早く、避難や軍備は間に合うが、ヒト族との共闘については、目処が立っていなかったのだ。

 しかし、悪いことだけではない。国境線において、勇者の力でヒト族が大量に殺されたという情報だ。ヒト族には悪いと思いながらもボギンスは、その情報に尾ひれがついてヒト族各国で広まるように仕向けていたのだ。

 作戦上、共闘を企図するボギンスは、隠密に進めてきたヒト族側でのプロパガンダであるダンジョン同士の交易やヒト族との交易もここにきて役に立ってきた。一部のヒト族から一定の信頼を勝ち取っていたのだ。

 しかし、ヒト族からの提案による共闘がしたいボギンスには時間がなかった。


 そして、ヒト族からの動きが・・・


 ボギンスは、待つだけではなかったのだ。ボギンスは、ヒト族の巷に情報を流していた。

 その情報は大きく4つ

1勇者がヒト族を数十万以上殺したこと

2勇者が魔族領内で暴れているが、領内のヒト族は保護されていること。

3勇者が「神」とヒト族を裏切り、世界を征服しようとしていること。

4魔族が救援を求めていること

 この四つを本当に保護したヒト族をヒト族領内に避難させ広めさせたのだ。

 しかもそれだけではなく、ボギンスは他にも一つ策を弄していた。


 ヒト族の首脳陣は、勇者災害と銘打った「偽」勇者討伐計画を魔王国が作成していることを事前に掴ませていたのだ。ヒト族の首脳陣の政権や王たちは、国民が勇者を酔心していることが気に食わなかった。自分の権力をいつでも奪われる状態だと感じていたのだ。勇者の蛮行や「偽」とするも勇者を倒すことで国民の信用を勇者から奪えるタミング、その功名心に。その心の隙間に、ボギンスの策は見事にハマったのだ。「偽」情報による世間で広まる勇者のへの恐怖、今までの魔族との交易での十分な利益、魔族への恐れの低下、全てがうまく噛み合い、ボギンスへ光明が現れる。


 BOSSの部屋でボギンスはつぶやいた。

「たんたんと必要な手を打ち続けるだけだ」


 ボギンスへ、報告が来る。

「ヒト族の一国が、勇者の後を追い軍隊が推進してきています」


 ボギンスは、幕僚に各ステージ長やBOSSたちを集めさせ会議を開いた。

「ここまでや策を打ってきたが、みんな思っている通り、ヒト族の進軍は勇者討伐ではない。魔王城への進軍だろう」

 会議に集まったステージ長は息を飲んだ。

「だが、これも予見通り、ヒト族は出兵理由は「偽勇者の討伐」で出発してしまっていることが確認できている。あとはこの理由を本物にするだけでいい」


 アスラムが、会議室に飛び込みボギンスに報告した。

「ヒト族の進軍は勇者により壊滅させられました。救援を求めています」

 ボギンスは、一気に全員へ指示を出した。


 アスラムはタイミングもバッチリだった。



 勇者はゆっくり進む、時々後戻りをしながら、まるで休日に公演を優雅にある歩くように、まるで一歩一歩を噛みしめるように、もし、誰かがこの姿を見ればその姿に安心と安らぎを感じてしまうだろう。


 勇者は、時々その場に止まり休みながら進む。


 テトは、そんな勇者に合わせてゆっくり後をついていく。

 トテトテと…

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ボスの本懐 拳パンチ! @kobushipanchi

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