聖龍伝説
あるところに白の一族がいた。白の一族は白き龍と心を通わすことができた。
あるところに黒の一族がいた。黒の一族は黒き龍と心を通わすことができた。
二つの一族は互いに協力し、一つの国を作り上げた。
川に流れる水は美しく、こうべを垂れる穂はたわわで、素晴らしい国となった。
ある時、世界に終焉の夜が訪れ、夜がすべてを覆った。
黒と黒き龍は夜に支配され、この世に永遠の夜をもたらそうと、白を裏切った。
夜に支配された龍は邪龍となり、黒とともに破壊の限りを尽くした。
水は枯れ果て、大地は荒れ、国はみるみる荒廃した。
白は祈った。
この夜を討ち払う力を与え賜え。
すると天から聖なる光が降り注ぎ、白き龍はその光を身に纏い、聖龍となった。
その光を浴びた邪龍は、その身を浄化され、聖なる光に感謝した。
聖なる光を浴びた黒は、その支配から解放され、己の過ちを悔いた。
白はいった。
その山の向こうを黒によこそう、山のこちら側を白のものにしよう。その命を抱え、懺悔して生きよ。
黒は心優しい白に感謝した。
黒と黒き龍は一人残らず、山の向こうへ消えていった。
そして国に聖なる光が差し込み、夜はその身を滅ぼし、朝が世界に再び訪れた。
枯れた水は湧き上がり、荒れた大地は肥沃になり、傷ついたすべてが癒された。
以来、白き龍は聖龍と謳われ、そして黒は、二度と姿を現すことはなかった。
夜の子 海橋祐子 @Luna_72
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