10話 交流会の始まり

 それから、数十分ほど経った。

 あれから、何も変わったことは起こってない。

 それどころか、本当にこれから生徒会長がこの場所に来て、交流会を開くのかも少し怪しくなってきた。

 でも、担任の先生がやると言っていたのだから、やるはずだ。

 場は少しずつざわめき出し、そろそろ、体育館から帰ろうとする人が出始めた頃、一瞬で、それまで点いていた体育館の電気が全て消え、体育館の出口も閉じられた。

 そして、ステージの電気だけが点き、そこには一人の少女が立っている。


「皆さん、大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。私が生徒会長の永遠野鴪華です」


そう、そこにはこれから交流会を開くと言っていた生徒会長が立っていた。

 帰ろうとしていた生徒ランカーたちも、ステージの方を見ている。


「皆さん、私の開催する交流会に参加頂き、ありがとうございます。これほどの生徒ランカーが集まるとは思ってませんでした。それでは、これから今回の交流会において行うことについての資料をお配りします」


 彼女がそう言うと、次の瞬間には、手元に資料がある。

 一体、何をしたというのだろうか。

 ただ、一つだけわかるのは、これが彼女の能力マギアであることだ。

 そして、彼女の能力マギアが、学園最強と言われていても、なんも不思議がない。それだけの衝撃。


「皆さん、よく考えて参加されたようで、とても素晴らしいです。二組のパートナーごとに、資料は違ったものを渡しました。それぞれ、資料を見てください」


 そう言われ、俺は場の空気に流されるように、資料を開く。

 そこには、これからするであろうゲームのルールが書かれていた。


「今からテーブルを16個用意します。もちろん、一つの机に、4つの椅子を用意してます。そして、テーブルには、それぞれのゲームが置かれているので、皆さんにお配りした資料の一つ目のゲームと同じゲームのマークのテーブルを探し、椅子に座って下さい」


 なるほど、テーブルを探す必要があるのか。


「そして、この交流会で、最後まで残ったパートナーの方々は、特別に生徒会役員の方と勝負できる権利をあげます。もちろん、等級ランクが降格するという罰、無しでです。それでは、スタートです」


 彼女がそう言った瞬間、今まで何処にあったのか、辺りにテーブルが並んでいた。


「釘宮、これはチャンスよ。本気で勝ちに行くわよ」


 勝ちに行くというのは、別に構わない。

 ただ、そこには一つの疑問もある。

 それだけのことなのか? ということだ。


「それはわかったが、なぜだ?」


「はあ、とりあえず私たちのするゲームのあるテーブルを探してからよ。きっと、全員分も用意してないはずだから」


 彼女はそう言うなり、俺の手を引っ張って、テーブルを探し始めた。



「どうしよう、なかなか無いわね」


 テーブルの上に置いてあるのはトランプのマークが大半を占めている。

 けど、俺たちの資料に書かれていたのは、トランプを使ったゲームではなかった。


「おい、マリー。あそこにあるやつじゃないか?」


 俺は一つのマークに気づき、そこのテーブルを指す。


「えっ、ああ、そうね。あんた、やるわね。A等級ランクの私が見逃したのを見つけるなんて」


「たまたまだろ」


 そんなわけで、俺たちは席についた。

 それからしばらく待つこと数分。

 そうして来たのは、男子二人組のペアだった。

 どちらも見たことがない奴らだから、たぶん同じクラスではないのだろう。


「よろしくお願いします」


 そう片方のそこそこの顔のやつがそう言って、二人とも座る。

 だからと言って、まだゲームは始まらない。開始の合図があるまでは、待機することになっている。

 そんなわけで、その間に資料に書かれてるゲームについてのルールを詳しく読むことにした。

 一つ、ペアの高 等級ランクの方は能力マギアは使用できない。

 片方がA等級ランク以上の場合、一つ目のゲームは合計3人としてゲームを開始してください。その場合二人でうつ方は、得点が合計の3分の2となります。

 そうしてルールを読んでると──


「空いてる座席は埋まりましたので、ゲームを始めてください」


 そうアナウンスのような声が聞こえてくる。間違いなく生徒会長ではない。

 一体誰なのだろうか。ただ、そこで俺は考えることを放棄する。

 相手はあの、生徒会長なのだから。

 そこで、俺は辺りを見回してみる。

 そこには、ゲームに参加できなかった生徒が何人もいる。

 つまりは、マリーの予想は当たっていたことになる。


「ところで、お前って麻雀できるのか?」


 俺たちが初めにするゲー厶は麻雀なのだ。

 俺はまあ、ぼちぼちできるぐらいの程度なのだが、A等級ランクである彼女ならかなり上手いかも知れない。


「……ルールは知ってるわ」


 つまり、できないらしい。

 ただ、マリーはA等級ランクであるため、これからするであろう麻雀は3人ですることになる。


「えっと、始めていいですか?」


「そうね、それじゃ始めましょう」


 そうして、俺たちの交流会で初めてのゲーム、麻雀が始まったのだった。

 このときの俺たちは知らなかった、2対1の麻雀があれほども過酷なものになるなんて。

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