アンドロメイド3
あれから、しばらくの時間が経った。
まだ来ない、私を呼び出したその人を私は生徒会室でまだ待っている。
けれど、刻一刻と入学式の時間は近づいていた。
それから、私はあと5分だけを繰り返していた。
そのせいで、気づけばあと5分だけも、時間的にこれが最後のあと5分だけとなった。
もう来ないのかと、そう思ったそのとき、その人は来た。
タッタッという足音が止まったのとほぼ同時に振り返る。
そこには、綺麗な真っ白な髪の毛に、紅と黄色のオッドアイを持つかわいい女の子がいた。
まるで、天から舞い降りてきた天使のようだった。
彼女は、私よりも背は低いけれど、私なんかとは比べものにならないほど可愛かった。
私は彼女に見惚れていると、彼女は微笑を浮かべる。
「まずは、自己紹介からするとしましょうか。私は、生徒会長の
鈴のような声音でそう発する。
いつまでも聴いていられるような美声に、私は思わず余韻を楽しんでしまう。
けど、すぐに我に返り、私も自己紹介をしようとする。
けど、それはすることないまま終わった。
「私は──」
「あなたのことなら知っています。私からのお手紙は読んでくれましたか?」
「は、はい」
「そのお手紙、私の直筆だったんですよ? いえ、今はそのことはあまり関係ありませんね。それでは、本題に移りましょう。少し遅れてしまい、時間も多くはありませんから」
彼女は自らのミスを反省するように、そう言った。
きっと、遅くなったのはわざとなのではなく、なにか予定外のことでもあったのではないだろうか?
私は、そこで思考を打ち切ると、続きを聞く姿勢を整える。
「それでは、お話しますね」
そう言うと、急に雰囲気ががらっと変わる。
今までの堅い感じが嘘であるかのように。
「ねぇ、あなたにちょっとお願いしたいことがあるのだけど、聞いてくれるかな?」
あまりの変わりように、思わず、
「あ、あの、生徒会長さん、ですよね?」
そう訊いてしまった。
それだけ、予想外のことだった。
「そうだよ?」
「その、D
「そう、あなたに。難しいことじゃないから、安心していいよ? あなたにはちょっとしたお願いを聞いて欲しいだけなの」
「その、私なんかにはできないかもですし……」
「まずは、お話だけでもどうかな? 聞くだけならいいんじゃない?」
「わ、わかりました。それじゃ、お話だけでも……」
「あなたにしてほしいのは、簡単なこと。あなたと同じD
「む、無理です……!私なんかにそんなこと──」
「神経衰弱。それなら、できると思うんだけどなぁ~?」
そう言われて、私は全てを理解する。
「……っ!わ、わかりました。で、ですが、約束ですよ?」
私は、手紙に書いてあったことの話をする。そう、これは手紙に書いてあった表面上では理解できない、もう一つの文の話。
つまり、隠し文字。
「もちろん。私は約束を、絶対に破らないから安心していいよ」
そこで、生徒会長はニコッと微笑んだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
食事も済んだところで、俺は一つの疑問について考えていた。
その疑問を覚えたのは、夜ごはんを食べ終えて、食器を片付けるためにシンクに皿などを持って行ったときだった。
そのとき、アイシスの髪の毛に触れたのだが、とてもさらさらしていて、アンドロイドとは思えない、髪の毛だった。
髪の毛が普通の人同じなんだったら、女の子特有の二つの膨らみ、即ち胸はどうなのか?
俺はそこに、淡い期待をしてしまう。
ただ、それに触れることは許されない。
ただ、そう思えばそう思うほど、触りたくなるのが人間というものだ。
「あの、どうしましたか、ご主人様?」
「えっ……? いや、べ、別に、なんでもない」
「はぁー……? ですが、そんな血走った目でそんなことを言われても、説得力にかけると思いますが? なにかあったのでしたら、言ってください」
アイシスはそう言うと、俺の方に近づいてくる。
そして、アンドロイドなのに、女の子らしい甘い香りが俺の鼻孔をくすぐってきた。
その香りは、俺から理性と呼ばれるものを根こそぎ持っていくかのような効果がある。
そのせいで、思わずあれに手を伸ばしてしまうところだった。
これは、まずい。
「ご主人様……?」
そこで、俺は気づいた。
こいつ、わざとやってやがる。
俺がなにをしたいのかわかって、わざとこれをしてやがる。
とんだドSメイドがいたものだ。
「ふふふ。気づかれてしまったようですね」
そして、俺が気づいたことに、アイシスはすぐに気づいた。
というか、
「お前、気づかれないようにするつもりなかっただろ……」
実際、アンドロイドのアイシスが本気を出したら、絶対に俺では気づけないと思う。
だって、アンドロイドなのだから。
けど、俺はそれに気づけた。
それはつまり、本当の意味で気づかせないようにしてないということだ。
「そうですね。ですが、それでもご主人様は気づくのに、手間取っていらしたようですが……?」
彼女は、そして笑った。
とりあえず、俺はそのことは忘れることにしたのだった。
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