アンドロメイド2
いつまでも玄関に立っているという明らかに不自然な状況なので、別の部屋に行き、とりあえず制服から着替えることにする。
俺の借りてる部屋は2LDKなので、一人暮らしには十分すぎるほど部屋がある。
俺が別室に移動する前にリビングを通りかかると、そこには昨日まではなかったテーブルが置いてあった。
やっぱり区別がついてなかったのだと、心の中で苦笑しながら、別室に移動する。
別室で俺が着替えてる途中で、アイシスに「先に夜ごはんにしてください」と声をかけられたので、一応返事をしておいた。
着替え終わって、リビングに戻るとテーブルの上には数多くの品が夜ごはんとして並んでいた。
「俺はそこまで大食じゃないからこんなにいらないんだが……」
ポツリとそうこぼすと、近くにいたアイシスがすぐに夜ごはんの品が多い理由を教えてくれる。
「残ったら次の日の分にするので、安心してください」
そういうことらしい。
ずっと突っ立っているのもおかしな光景なので、俺は食卓の椅子の上に腰を下ろすことにした。
アイシスは、俺が椅子に座るのを見届けると、向かいの椅子に腰を下ろす。
アイシスのその行動に、ちょっとした疑問を感じるも、気にせずに夜ごはんを食べることにする。
アイシスが作ってくれた料理は、普通の家庭料理といった感じで、普通においしい。
さすが、お嬢様に仕えていただけのことはある。アンドロイドだけど。
ただ、アイシスがさっきからずっと俺が食べてるのを見ているため、とても食べ辛い。
むず痒さというか、こう、なんともいえない恥ずかしさがある。
「その、ずっと見られてると食べ辛い……」
気づけば、俺はこう言っていた。
彼女は一度こてんとかわいく首を傾げ、意味がわからないという感じだったが、すぐになにかを察したような表情で、
「その、私の作ったお料理が、ご主人様のお口に合うものだったのか気になったもので……」
涼やかな声で、俺にそう言った。
アイシスのその言葉を聞いて、俺は納得する。
もし、俺がアイシスの立場だったら実際、気になるところだ。
なので、俺は「おいしいよ」と一言そう言った。
そのときのアイシスは、どこかホッとしたような、それでいて嬉しそうな表情を浮かべていて、とても女の子らしいと感じた。
そんな彼女の顔を、俺はぼんやりと、かわいいなと思って見ていると、
「その、なにかおかしなところでもありますか?」
あまりにも俺が彼女の顔を見ていたから不思議に思ったのか、彼女にそう言われてしまう。
俺は少し慌てたように、
「な、なんでもない!」
そう言って誤魔化したのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時間は、入学式が始まる少し前ぐらいまで、遡ることになる。
私が校門についた辺りで、知らない人から手紙を渡された。
手紙をその場で読むのは、なんとも不自然な光景になるので、私は女子トイレに向かった。
私は、トイレに着くなり、手紙の外見を観察する。
けど、手紙はかなりシンプルなもので、男性からなのか、それとも女性からなのか、封筒からじゃ全然わからなかった。
とりあえず私は、封をとめるためについている、一枚のシールを封筒が破けないように、それでいて素早く剥がし、中身を確認することにする。
そして、中身には一枚のカードのようなものが入っていた。
その一枚のカードにはこう書かれていた。
『生徒会室まで来てください。あなたに少しだけ、お話があります』
私は、それを読み終えてすぐ、混乱していた。
私が混乱してるのはこの文章にではない。
この文章を書いた人間の意図がわからず、混乱していた。
なんでこんなものを私に送ってきたのか?
私はそのことを考えようとして、やめた。
いくら考えても、答えが出なものを考えるのは無駄過ぎる。
かわりに、これからどうするのかを考えることにする。
私にとって、どうすることが正解なのか?
生徒会室ということは、たぶん生徒会長からの話ということで間違いないとは思うが……。
少しの間、私はその場で考え、生徒会室に行くことにした。
なにが起きるかわからないが、なんだかこれが罠じゃないような気がしたから。
そうと決めてからすぐに、私は生徒会室の場所を確認し、そこに向かう。
生徒会室には鍵がかかっておらず、ガラガラとすんなりドアが開いた。
私は開いたドアから、どこかに侵入するような気持ちで、慎重に足を運ぶ。
生徒会室は片付いていたので、すぐに、私は生徒会室の最奥にたどり着いた。
もし、片付いていなかったら、もう少し時間がかかっていたと思う。
けど、そこには誰もいなかった。
そして、誰かが直前までそこにいた形跡もない。
そんな、生徒会室の様子に一瞬、罠かと思ったが、相手はこっちがこんなにも早く来ると思ってなかったのかもしれない。私はそう思った。
いや、そう思うことにした。
だから、その場で待つことにする。
どうせ、入学式までの時間なんて暇なわけだし、それに、特にやることがあるわけでもないんだから、ここで入学式までの時間を過ごしても、私にとっては大差ないことだったから。
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