『白昼夢』

あん

第1話『白昼夢』

今は昔の話である。

祖父と一緒に波止場を散歩していた時に、ふと港の海底に奇妙なものを見た。4枚の太いヒレのある丸いものが海底でゆっくりと旋回していた。私は祖父に尋ねた。「あれがみんなが海にいると言っている海坊主?」

祖父はそうだと答えた。今考えてもあれが何だったのかわからない。



今は昔の話である。

大宰府天満宮の参道は観光客や受験生でごった返していて、私は参道の小脇にある『菊池』で梅ヶ枝餅を食べながら外を眺めていた。「本当は参道の中央って神様の通り道だから、道の端を歩かなきゃいけないのに、みんな真ん中歩いてるね」私がそう言うと、晴れていたのに突然雨が降り始め、滝のようなどしゃぶりになった。観光客が一斉に左右の店の軒下に避難する。しかし一瞬のうちにまた晴れ間が見え、再びみんなが道を歩きはじめた。連れがこう言った「今まさに天神様がお通りになったね」それがほんとかどうかはわからないが空はまた綺麗な青空であった。



今は昔の話である。

ディズニーランドに行く途中、うとうとしながら電車に乗っていた私の前には三人の外人のお姉さんが座っていた。しばらくして気がつくと、私は三人のお姉さんの膝の上に寝ていて、白人と黒人の女性たちに頭を撫でられていた。あんまり心地いいのでまたそのまま寝てしまったが、今考えるとあれは夢かうつつか検討が付かない。



今は昔の話である。

巻き網漁船で漁をしていた時に巻き上げローラーに何かが挟まり、漁網の巻き上げがストップした。海亀である。海亀を殺すと祟りがあるとして船員たちは亀を助けようとしたが叶わず亀は死んだ。数日後嵐がきて周囲の船とともに港に急いだが、亀を殺した船だけが一瞬で沈んでしまい、船長以外の船員19人は皆助からなかった。ほんとかどうかはわからないが、家族を失った同級生たちが泣いていたのは覚えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『白昼夢』 あん @josuian

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る