第三章「絶対な夜明け・死亡時刻:3月19日」

 外の町は夕暮れの暖かいオレンジの光に浴びていた。歩いてゆく人や町の賑やかさ、特に今週末のバイバイ祭りの準備で、生きているという雰囲気が漂う。

 しかし、日昇商店街の入口の近くにあるカフェに入った俺と高巻の気分は鬱陶しくて陰気な雨の日だったのだ。

 正直、現実はたまにアニメやドラマの世界のようなタイミングであって欲しくなる。

 高巻をあまりプレッシャーをかけたくないが、知ったその情報が今までの事件の視点を変えてしまうのだ。

「あのれっきとしたストーカーのことはさておき、小林の携帯に映像や写真があったんだ。お前……いや、俺は聞く権利はないか……」

 昨日あったばかりの彼に事情を聞いたら、流石に無茶なことだと分かっている。しかしコイツ、高巻の死に関係あるのなら黙ってはいられない。

「ハァァ。おのさ、俺は友人や相談できる人ではない。しかし、流石にアレを見て気になってしょうがない。突っ込まないが、お前……いや。ごめん、本当に言うのも聞くのもするけ――」

「兄さんは英志君みたいに道を外していると思う」

「高巻……」

「いいとは言えないけど、兄さんは色々期待されているんだ。副局長や両親。二か月前に署の先輩と集団の事件の担当になった。それで兄さんは僕の英志君との繋がりで集団と近づきたがった。もちろん、僕は英志君を利用される訳にはいかなくて……」

「兄にがっかりされ、中々解決の見込みのない件のプレッシャーに迫られてある日突然ってオチか?」

「大体そんな感じだ。でも兄は――」

「俺に説明しなくていいんだ高巻。お前の気持ちが分からない訳がないのだ」

 正直、彼はどこまでいいヤツかにとっくに感心した。しかし、あの警部のことは別だ。

 最初から英志への態度が気になったのだが、もしかして、あの警部は自分の弟を……

「もちろん、両親も知らないのさ。小林さんが知っていたのってびっくりしたはびっくりしたけど、内緒にしてくれる?」

「誰に言えるのか? もしかして昨日出会えたばかりって忘れったか?」

「エヘヘ、変だよね。確かに松原君との付き合いは短いけど、なんかこう……近いという感じがする。僕、あまり友達はいないさ」

 その言葉が耳に届くと、驚くのは顔の出てしまった。確かに幼馴染が不良となったし、ストーカーに尾行されるけど、普通にこのような美少年はモテるだろう。

 俺の表情を呼んだ高巻はクスクスと笑って更に説明してくれた。

「嫌われるとかのではなく、むしろ学校の皆と仲良くなんだ。しかし、友達と呼べる人大体英志君だけだ。変だと思われるけど、皆と友達になる価値は見えないんだ」

 その言葉に不思議に引っかかる。意味している事は分かるような気がして、紅茶のガラスをゆっくり揺るがす高巻の言葉を強く意識した。

「だって、繋がりはないような気分だ。同じ学校に通うから義理で関係を築いて日々を過ごす。そのように見える。転校したら、まるで存在が消えてしまうと同じなんだ」

 コイツ......もしかして。

「しかし、英志君は子供の頃から素直に友達になってくれた。だから彼との絆は本物だと感じている。でも今その唯一の本当の友を失ってしまうのが怖いんだ」

「高巻……」

 かつて、いや『今』と言うべきか、俺は似たような気持ちだった。親父の事件の後もその気持ちが悪化となり、友人その物は俺の周りには全くなかったのだ。

 大学に入ってからもう諦めかけたが、ある日アイツに助けられたのだ。放課後に、町を知らなかった俺は市役所に行く必要があった。途中で子猫のように迷子になって英志に見つけられた。

『あのう、大丈夫? もしかして君も市役所へ? 僕もだよ! 一緒に行こう!』

 そのようなつまらない出会いから、あのバカ程いいヤツに心を閉ざされていた心の俺は救われたのだ。ライバルとなって、誰かと繋がりができると証明してくれて俺を力を与えてくれたのだ。『生きる』という力を。

「なら、どうして今俺にそんなに大事な事を話してくれた?」

「僕だって分からないけど、不思議に松原君とその絆が何となくできそうかと」

「何だその曖昧な答え!」

 向こうに座っている彼に笑われて、しょうがなくやれやれと微笑んでしまった。

「な、流石に早いけど、アキって読んでいいか?」

「えッ?」

「俺はさ、凄く大事な人達がいる。何でもない場面で友達となった。お互いに過去の事などにあまり知らないが、一緒にいると妙に『友達』って気分だ。俺はアイツラをそのようなあだ名で呼ぶんだ」

「松原君……」

「無理と言ったらいいんだ。流石に男同士で変だと思われるし」

「……んじゃ、アキって読んでくれるなら、敬君って読んでいいか?」

「もちろん!」

 満面の笑みで俺は高巻に向かう。彼は少し戸惑っていたが、物憂いの笑顔で答えを出す。

「それじゃ、よろしくね敬君!」

「こっちこぞアキ!」

 それで俺達は飲み物を終わってバス停に向かっていった。

 アキはまだ動揺していたと思うが、少し落ち着いてみたいのだ。それで明後日に西光街に遊びに誘い、喜んだアイツは是非是非と。

 上手く行けば、事件当時に彼を真朝町を離れる事が出来たかもしれない。

「ちなみに、敬君の友達ってどんな感じ? 先の言葉で凄く仲がいいみたいけど」

「アイツらか? あまりアイツらの前に言いたくないが、最高の友達だ。お互い励み合ったらり、からかったりして、それに何があろうとずっと一緒だって感じだ」

「そ、そうですか……何か長いからのお付き合いらしい。もしかして幼馴染かな?」

「いやぁぁ、二年くらいの付き合いなんだ」

「二年で最高とか言える?」

「あぁ。だってそんな感じがするから。俺は気づいたことだが、ほら、ガキの頃友達を作るのは凄く楽な事だったんだな?」

 アキはコックリと頷いてくれる。

「大人になって変わると普通に思われるけど、俺にとっては何故変わるかが意味不明だ。新しい人に出会って、何となく仲良くなりそうと思って近づこうとする。感動的なエピソードや出会いがなくげも、一生の友達が見つけられる」

 話しながら、俺はつい笑顔を浮かぶのが分かっていた。アキにちゃんと説明したかどうかが分からないが、少なくとも気持ちが伝えられたと思う。

「だから二年だけの付き合いで言える。もちろん、今からアイツらに怒ったり、喧嘩したりすること何千回はあるが、本当の友情ならその全てを乗り越える。なきゃまぁ、外れって感じだ。しかし――」

「その皆はないと何となく感じるということかな?」

「そう! はい、ベタな友情の演説終了」

「アハハ。まぁ、ベタなことって特別ではないでしょう? ごく普通に当たり前だから、それはそれなり事実とでも言うべきかもしれない。ダサいのは確かだけど、否定はできない」

 コイツ今俺を凄く聞き捨てないことを言っただろう。

「敬君は凄いよね。不正確を抱いてその人達を大事と呼ぶなんて。僕には無理かも」

「千里の行も足下に始まるって。昨日出会ってばかり赤の他人に呼び捨てにされて」

「アハハ。そうね!

 バス停に着いたら、アキと分かれた。

 今日の一日が長かったが、また眠気や空腹を感じ始めることで改めてこの体のエネルギー消費に飽きてしまった。

 バスに乗ったら、また一番後ろの窓側の席についた。

 西光街までに一眠りしようという考えを辞めたのは、二つ目の停の乗った乗客に気づいたこと。

 彼女が俺を見たら、逃がさずに堂々と空きの隣の席に座った。

 幸い、俺の方からも色々話したいことがあったのだ。

「驚いたな。俺を見た途端、降りるかと思った」

「もうアレを見たら、そうする必要はなくなるでしょ」

「俺は色々聞きたいのさ。面倒くさいなら次の停で降りた方がいい」

「……質問なら答える。代わりに私が聞きたいことも素直に答えたらね……」

 テレビでみる裏の取引が行われている気分が俺達に漂う。

 小林の言葉に気になって先に彼女の質問を聞くことした。

「高巻君とどんな感じかしら? もちろん昨日まで無関係だと既に知っていると分かっているでしょ」

「彼はあの中川ってヤツに助けられた恩人だ。今日はそのお礼だけだ。友達になれそうということもあるけど」

「素直に答えてもりたいと言ったはずだよね?」

 商店街の怯えた子と違って、今俺と話している小林の本気のある表情に少し驚いてしまう。ある意味別人とでも言えるかもしれない。

「私に分かるさ。あんたの目に何かの裏がある。不自然に私達の学校に来て中川さんと高巻君をあんな風に接触して偶然と思わいの。意図を感じるのよ」

 思った以上鋭いの今のこの子、15歳の体にいる大人として、商店街のエピソードの怯えた子の姿より余程魅力的だと普通に考えるのだ。なので、彼女の行動の意味が全く分からなかった。

「本当だよ。たまたま学校をサボって真朝町に来ることにした俺にあったことに過ぎないよ」

「そうなの? フン、まぁいいわ。注意しておくけど、私の明に勝手な事をしたらただで済まないよ」

「私の……明だって?」

「あぁ、あの子はまだ知らないかもしれないけど、彼は私の運命の人なんだ」

「……俺の質問に繋がるかもしれないが、お前はどうしてアイツをそんない夢中してる? あそこまで尾行して、虐待を受けた瞬間まで目撃してくせに何もしなくて、それでも運命の人とか言いって」

「あれは私の明と私だけの物だよ。私だけが彼の痛みを知って当然だ。勝手に見てしまったあんたなんかが万死に値するけど、もう注意したのよ」

 15歳のJKに脅かされるのは正直、ばかばかしいとは思ったのだ。彼女は怒れてるのは確かだ。しかし、あそこまでアキとの執着が無視できない。

 彼女の体質を見ると、あくまでもぶん殴りによる殺害は出来なさそうだ。でも無関係とは別だ。

「あれは単なるの妄想だ。アイツはいいヤツだから辞めてくれよ。好きになれる他のヤツなら後で見つけるんだ。だから、アイツ――――」

「好きって? ……他の好きになれる相手を見つける? あんた本当に分からないよね?」

 怒りに動揺してる彼女の顔は記憶に焼き付きそうだ。瞳の揺らぎ、正気を失った人の笑顔、そしてその割に合わない冷静に溢れる声色、その組み合わせは今まで誰にも見たことのない狂った表情だ。

「私は彼をただ好きという半端な気持ちでじゃないのよ。私は彼に救われた……私だけが本当の彼と彼の痛みを知っている……私だけが彼の全てを受け入れて邪魔物を排除してあげられるのよ」

 この子は最初、ギャグキャラっぽいのストーカーだと思った。商店街の件にれっきとしたストーカーだが、危険だと思わなかった。

 しかし、今俺の隣に座っているのは狂った人間だ。目的を果たすには手段を選ばない、妄想に囚われる女子高生だ。

 何気なくそのようなことを言い出した彼女は、立ち上がって着いた停に降りていく。

 少し俺から離れたら、もう一回俺に振り返って可愛いらしい笑顔でとんでもないことを言い放った。

「だから松原・敬さん、痛い目に遭いたくないなら二度と私の明と関わらない方がいいのよ。それじゃ、バイバイ」

 それを言い残した小林はバスの降りて、窓の外から彼女はまだその笑顔で俺を見送る。

 俺の停まで後20分で、今日あったこと全てに顧みた。

 2日後に高巻・明が死んで、5年後に英志がその罪を擦り付ける。英志は殺さなかったなら、別の犯人がいるはずだ。

 アキは兄の冬馬に虐待を受けた。小林という子の妄執で何をするかが不明だ。清永・正弘とあの牡牛の野郎のこともある。

 そして、真朝町の治安を乱す少年不良集団。

 アキは様々な危機な要素に関わっているせいで、どこから責めればいいか分からなかったのだ。

 少なくとも確信したのは、3月19日に彼をどうしても真朝町から離れさせないといけない。

 幸い、そう約束をしてくれたのだ。

 明日は彼に会えないが、まだ調べないといけないことが多い。 

 事件の知っている事を踏まえて次のやるべきことは割と明確なった。俺は真犯人の隙間を当てたくれた要素を除けば、より効率的にアキの殺害を防げるだろう。

 という訳で俺は次のやるべきことを決めた。明日、この時代の英志を探してまた接触してみないといけない。

 どうアプローチをすればいいか分からないが、この時代の英志に話せば何かできると思う。

                 。。。


 昨日からずっと町中に色々調べみたけど、さすがに5年前にいきなり姿を消した人の跡に付けるのは端から無理だったのだ。

 仲田さんも多忙で面会ができないらしくて、僕たちは行き止まりについてしまう。

 それでも皆はまだ諦めずに次の行動を必死に考えて、中村という大学の先生に相談してみたらしい。

 その人は大学の近くにある居酒屋に呼び出されて僕たちはすぐそこに向かった。大学の本校の前で集合することになって、僕はそこに足を引きずった。

 少し遅れたことに皆に謝れ、店に着いたら何故かに皆は僕の名前を言い出す。

「すみませんが、本日その名前で予約はされていないんですが……」

 まだ妙な視線を浴びられたけど、正直にもうどうでもいいと思ってきた。

「ごめん、先生はやるだろうと思って」

「そっか……なぁケイちゃん、今日は部屋で休んだら?」

「お兄さん」

「今のケイちゃんならあんまり役に立たないだろ? 疲れているのがこっちも同じなんだが、俺たちはやれることはやるに決まったんだ」

 返す言葉はない。今日も授業を出ずに色んな所を調べた揚句、手掛かりになるもの一つたりとも見つけられなかった。さぞ疲労が感じるところだろう。

 しかし、僕は別の意味で疲れていたのだ。

「ちょっと高山君、その言い方――――」

「勘違いすんなって。俺はな、エイちゃんみたいに強くないのに喧嘩っ早い。恵理とケイちゃんみたいに頭よくないし、美月のやる気や決心に負けている」

 怒られたと確信したトシさんは以外と、僕の肩に手を置いて穏やかな笑顔で激励を告げてくれた。

「お前も辛いだろう。俺より遥かに英志に近いんだら、ずっとお前ばかりに頼っちゃいけね。いざという時にアイツに向き合うのはお前しかないが、今やるべきことを決めるぐらいは任せておけって!」

 片目を閉じて歯を見せたトシさんは今まで知った彼と別人にみえた。半分ヤンキーな振る舞いで半分だらけたような人だと思ったのに、本気という時もあると驚かせてくれる。

「さすがにそこまで言ったら、帰ると不味いんじゃない?」

 男が廃ると言いたかったけど。

「ハハハ、だよな?」

「……あんた誰?」

 高山さんが今目の前にいる人の正体を疑っている目で彼を問い詰めた。

「お前の愛しき兄に決まってんだろ、バカ」

「ヒュー、宇宙人がお兄さんを晒して偽物と入れ替わったかと心配した」

「フフフ、私もだよ」

「チッ、さっさと中に入ろう!」

 先生と会って決めたのは明日にまた警察署で集合することに決めた。

 トシさんの強引で結局三杯のビーるを呑むことになって 妙に、トシさんの中に雑音はないようにリラックスしていた。この体に宿ってからの違和感がなくなって悩みも払われたよな気分だ。

 駅の近くにあったコンビニでトシさんは最後に一杯だとか言って広場のベンチで寛いでいく。

「先輩はどう思う? 英志君は高巻警部を殺さなかったなら、一体誰が殺したでしょう?」

「そうよね。今の所で容疑者さえはいない。高巻さんは殺害される動機だってまだ判明していない。例の矛盾以外、中川君が教えてくれたのは警部と大体同じことだ」

「美月は明日それについて聞いたらどうだい? エイちゃんに辛いかもしれねえが、今は喉から手が出る程情報が欲しい」

「そうよね……でも英志君と1日での時間が凄く限られているから、有効に使わないと」

「でもトッちゃんがいい筋だと思うよ。高巻さんは警部の親戚だから殺害されるのはそれだけで理由となるかもしれないが、中川何の目的で疑われるのも明確しなくちゃ」

「やり方や証拠になりそうなモンはあるけど、何でやったのかってことか?」

「そう!」

「……凄い……先輩はちゃんとお兄さんの頭を働かせたの」

「この子はこう見えても割と頭いいよ。ね~」

 いきなりの佐藤さんの素直なキャラ―の変わりについ笑い出してしまった。その一方、トシさんは照れて彼女から顔を逸らす。

「何であっち向いてんの! 褒めているのにも……」

「……皆の前でいいかって……」

「もうバレちゃったから別にいいんじゃない? 美月ちゃんだって大丈夫そうだ」

「っていうか最初から何で隠してたかと」

 トシさんは言葉を呑んで困りそうに片手で頭を掲げる。少し下を向いてから、僕に情けをかけた眼で見つめた。

 ぼやっと自分は何があったか分からないけど、高山さんと佐藤さんの表情で何となく事情が分かる。

「僕を気にしないで幸せでいてよ! アハハ」

「お前……あんなに好きだって言ったのに……怒ってねぇのか?」

「怒る権利はないよそもそも」

「何だよその他人事みてぇな言葉。怒ってんならハッキリ言え!」

「お兄さん!」

「トッちゃんそこまでにして。松原君だって色々混乱し――」

「いいや、それはできねぇ。今までま黙っといて理解してやろうとしたんだが、コイツの態度はおかしい。なぁ敬、俺ら友達だから頭にあるモンをは――」  

「何が友達かよ……」

 口は滑った。ある意味パンドラの箱を開けてトシさんにその言葉を突き付ける。

「親友など言うのに、お互い相手の事なにも分からないだろう? 中川さんの過去や抱えていたことを知らずに助けたいだと? 僕を友達と呼んだものの、好きな人と秘密裡に付き合っていて……意味分からないんです」

「敬君……」

「ねトシさん……説明してくれるんですか? 僕たちはそんなに大事な友達なら、何でこんなに距離を感じるんですか? ただと自己満足じゃないですか」

「松原君それは――」

「言わせてやれ恵理……」

「トッちゃん……」

 ずっと前から抱えていた全てをさらけ出していた僕は立ってトシさんに立ち向かった。振る舞いを構わず、15歳の松原・敬として向っている。

「友情って物……そもそも無意味なんだよね?」

 ぶん殴られるかと何故かに思ったが、トシさんはむしろただそこに座って優しく笑っている。

「それで悩んでいたのか……お前も英志も……お前らって本当にバカなんだな」

「トシ……さん」

 居酒屋と同じように肩を掴め、眼を反らさずに重みのある言葉を返してくれた。

「いいかお前、恥ずかしから1回だけ言うぞ。全てを自分の枠組みにはまるなよ。それはお前の弱点だぞ?」

「訳の分からないことを言うのは辞めてくれるんですか?」

「この世に分からないことだって山程ある。全てを知らなきゃ世界で生きるのは無意味のなか? 生きてそのうちに何となく分かるんだ」

 冷静を失ってしまっている僕比べてトシさんは平然とした。

「俺は確かめたいんだ。もし英志は本当に高巻の弟を殺したなら、俺はその時にまだアイツの友でいられるかを? 美月もそうな?」

「そうよね……敬君の言う通り、ただの自己満足なのかもしれない。必死になって真実を知りたいが、もし私の彼は本当に人殺しなら、まだ好きと言えるかと……」

「美月ちゃん……」

 トシさんは妹に手を伸ばす。その兄妹愛に少し頭を冷やされてくれた、この人達の気持ちを理解しようとしなくて、ちゃんと見ていなかったようだ。

「私だって一緒なのかも。松原君の気持ちを知っても、友達として失って嫌だ。トッちゃんと秘密裡に付き合って好きな相手と大事な友達どっちも譲れずに、本当に最低なのよね……」

「プラス殺人のエイちゃんを含めて俺らって本当にクスの友達のサークルだよな」

「フフフ。まったくも」

 皆はトシさんの物騒な冗談に笑わせった皆を見たら、この人達がどうかしていると確信した。

「僕は……昔から見出さないんです。僕はただ、人との絆という物に意味があるかどうかを知りたいです」

「俺はバカだからその答えを教えられねぇんだ。『今』を全身全霊で生きるしか知らねぇぞ。考えるより感じるってことかな?」

「ちょっと違うと思うけどトッちゃん」

「……ねぇ敬君、お兄さんが言いたいことはさ、不正確に怯えるこそ生きているということだよ。人と交流して得るもの、友情であろうと何であろうと、分かるより感じるのよ」

 僕は何となく皆の言いたい事は分かったように気がする。しかし、僕の理解を超える概念だ。

「もし何も感じられんかったら、僕って人として壊れているんだ。それが怖いです……」

 そうだ。本当に恐れていたことに立ち向かなかったのだ。

 親友だと呼ばれる人について何も知らない上、人殺しなのかもしれない。好きな女の子に奪われた友が平然として僕に友情を語る。この事情に何の役にも経たない自分は義理で付き合わせてもらい、その全てに欺瞞を思う。

 きっと、この事件の結末は何であろうと未来の僕はこの人達と会わなくなる日が来るはずだ。

「分かるよ、んなモン」 

 突然、トシさんのその言葉に我に返った。

「俺はな……ったく」

 頭を掻いて切ない顔に血相を変えた彼は、ベンチに腰を落として夜空を見上げる。

「高校ん時、酷くいじめられた。それに中高ん時の友達にな。敬みたに家族と距離を広げた程、人を信頼できなくなった」

「その時のお兄さんは本当に毎日寂しそうな顔をしていたんだ……妹として何もして上げられなくて悔しかった」

「ある日僕はダラダラと校内を歩いて、体育館にあったプールについた。誰もがいなくて、何となく身をそこに投げてしまった。水の中に泳いで世界が止まってしまった。身をその空間に任せて俺の悩みをすっかり忘れてしまったんだ」

「凄いよね。もしかして、それは水泳部の切っ掛けだと?」

 佐藤さんも初耳らしいのだ。

「できるだけ水に中にいたくなったのだ。水泳部はそれへの近道って感じだ。でも驚いたのはな、その時俺と似たよな事を思ったヤツがいたな。周りの連中に話して小馬鹿にされたが、俺を分かってくれる。何というか……コイツが信頼できそうなヤツだって」

「あッ!」

 その時高山さんが何かに気づいた声を上げて少し驚かせた。トシさんは照れ臭そうに頬を掻いて俯いた。

「まぁ、結局ボクシング部にしたおかげで俺の部活は多少楽になったんだがな。でもあの時俺を理解してくれた英志がいて俺は人とまた関わり始めたんた」

「フフフ、中川君らしいだ。松原君もきっとそういう事もあったね? だってよく友情が分からないと言っても、二人はあんに近くて」

「本当、たまに私だって気になる程中がいいよね」

 佐藤さんの発言である事は判明した。未来の僕の答えは中川・英志にやどるかもしれない。彼はこのサークルの中心らしい。

 もしかして彼と接触すれば、未来の僕の事をよっぽど理解できると思った。

 答えはともかく、皆に迷惑をかけたことは確かだ。勝手に未来の自分に背負っていた事をぶつけておこがましかったかもしれない。

 謝ろうとしたら、トシさんと同時に肌に人の気配を感じた。近くにあった駅前のコンビニからある女性は僕たちを見つめていた。バレたと気づき、彼女は逃げ出してしまう。この眼で何となく姿を把握したけど、さすがに誰かが分からない。

「どうした二人共」

「もうこんな時間だし、帰ろっか美月? 恵理、君もな」

 トシさんはその風に話題を避けたけど、僕に視線で語った。秘密にしろと読んで僕も彼に賛成する。分かれていた時、気をつけろと言ったのも重い顔で告げてくれた。

 寮へ向かっていた時によく後ろに振り向きながら、周りを強く意識する。

 幸い、無事に寮に着いて部屋のドアにすぐ鍵をかかった。

 あの時僕とトシさんの会話を思い出す、要するに見張っているような感じがしていた事だ。この状況の危険度を見直すべきと思い、トシさんが無事に帰ったかとメッセージを送った。

『無事だ。恵理もオーライだそうだ。明日オレラだけで先生に相談しよう』

 不安を抑えながら、ベッドに倒れる。

 明日はまた未来に眼覚めるだろう。その言葉を呟いたら、トシさんたちは頭に浮かんだ。彼らの暖かそうな笑顔と僕を支えようとしてくれる言葉、彼らは未来の僕を本当に大事に知っているとは否定できない。

 未来の僕の気持ち、彼らへの想いを知りたくなった。

「分かるより感じる……か……」

 その言葉の意味を考えても、1日の疲れに負けた僕は何時の間に眠りにつく。


                 ***


「お袋、明後日友達をこっちに誘いたいけど、いいのかな?」

 驚いた両親は聞き待ち上げたかのようにお互いに見つめ合った。

「友達を誘いたい? 本当?」

「あぁ、最近出会ったいいヤツなんだ。最近は大変なことが会って気分転換にしてやりたいんだ」

「敬は誰かをこっちに誘いたいなんて初耳だで、お母さん」

「でもいいことよ! お母さんが喜んで大歓迎だ」

「多分夕飯までいると思う」

「じゃ、食事はちゃんと準備しなきゃならないよね」

「そうそう! 何を作ろうかな~」

「お袋の料理なら何だっていいよ」

 お袋が興奮してくれる。確かに、初めに誰かを家(ここ)に誘ったのはアイツらだ。その時の反応は大体これと一緒だ。親父はお酒まで出してトシと英志と俺4人で呑み競争をしてしまった。もちろん、底なしトシさんはあの時の勝者だった。

 あの時アイツらは親父を見たら、情けも何も普通の人間のように扱ってくれる。まったく、本当に腹が立つ程いい連中だなと思った。

「帰る途中で何か必要だったら、教えてね」

「もちろん! でもね、敬ちゃんって本当に変わったのよね。成長したって感じがする。早すぎろのは気にならないけど」

「そうかな? あまり変わっていないよな気がするけど」

「いいや、お母さんの言う通りだ。この間も言ったけど、眼や笑い方にみえる。ちゃんと生きているんだよ」

「そう。敬ちゃんは学校以外でずっと家に籠ってあまり友達がいなかったのよ。正直お父さんとお母さんはちょっと気になっていたのよ」

「そうだな……心配をかけちゃってごめん。ただまぁ……」

 アレについては未来でも両親に話したことがない。俺のあの時の悩みや恐れ、他の人との繋がりをどうみえたとか、それに英志達に助けられたこと。

 もちろん、恥ずかしくて言える訳がないのだ。

「――――まぁ、青春してるだけだ!」

 満面の笑いを見せて両親に安心させようとした。しかし、親父は案外にケチをつけてくる。

「青春か。んなモンはお父さんだってしてるさ。いいか敬、青春を裏返すと生きてると同じことだ。人生は高校(今)で終わらないよ。人と出会って、恋に落ちて、家族を作って、その全ては青春をしてるんだ」

「いいや、ちょっと違くないか? 青春って思春期に限られているだろう?」

「自分の枠組みに物事をはまるなよ。青春に期限が本当にないよ。人生をどうやって立ち向かうことだ。精一杯で生きてるこそ青春だ」

 親父の言いたいことは実に言うとかっこいいと思ったのだ。でも息子である限りにはもちろん、そのようなことは許されないのだ。

「いやぁぁ、おっさんの発言オツ」

「誰がおっさんだ!」

「あなた! 腰に気をつけて!」

「腰に何の問題もない! 光花、コイツの見方にすんな」

「いやお袋、むしろ血圧は心配だ」

「あらそうよね」

 俺達はそのように笑い声に溢れた時間を過ごしてからそれぞれの部屋に戻った。

 今晩に妙な記憶がなかったので未来(向こう)で進展はなかったかと気になりながら、また過去に飛ばされた前のことを思い出そうとした。

 やることに夢中し過ぎて、何故どうやってこんなことになったのかを考える時間があまりなかったのだ。

 何の理由や現象でここまで来たか分からない。多分、答えが見つけられないかもしれないが、好奇心旺盛の自分は流石に知りたくなる。

 そもそも自分に時に戻る保証はないが、慌てるより人生のやり直しチャンスだ。もちろん、同じ大学などのような基本の選択を変わるつもりはない。

 次の日に目覚めたら、軽くストレッチとシャドーをして頭の中に英志との対立を想像してみる。その後に朝ごはんを食べて学校に出掛けた。

 何ともないでありながら、覚えた以上の難しい授業を乗り越えて休憩時間に学校の連中とふざける。15歳の体でいる20歳の俺は昼休憩の時に可愛い子とランチを食べて、数学の時に居眠りをしたり、アニメやゲームの話をしてりして、本当に平和な時間を存分に楽しめた。

 最後のチャイムがなって皆とさようならをして直ぐにバス停に向かう。

 たまたまに同じルートで行くクラスメートがいたおかげで何も考えず、高校生らしくどうでもいい気分を40分に延長された。

 バス停で彼と別れたら、俺は英志を探し出そうとした。つまり、ここからは本番だ。

 もちろん、無暗に探したら、限られている時間が無駄になってしまうと思った時、あることに気づいた。

「川岸か」

 俺はまだ事件現場に行っていないことだ。そもそもアキと英志はどうしてあそこにいていたのだろう?

 気になってそこを最初の目的地にしたのだ。仲田警部によると、アキの死体は廃墟された倉庫の近くに見つけられたそうだ。

 真朝町公立高の方面に向かい、途中に公園を抜けて南西に進んで向こうに繰り広げる川岸が眼に入った。

 10分ぐらいアスファルトの道に進行すれば、おんぼろな大きいサインが見える。錆びつぎ過ぎてあまり文字が残していなくて、『―――倉庫』しか読めない。そのサインから廃墟ビルが突き当りに建っていた。

 ここで中村先生と何回トレーニングをしにきたことがあるおかげで道が直ぐに分かる。

 廃墟倉庫から結構な距離があるものの、はっきり人の影がみえる距離ではあった。目を細めて何となく何人のシルエットを見たような気がする。しかし、それこそが不思議なことだ。

 そこの所有会社が打倒してから、誰にも使われていなに場所……

「ま、まさか……」

 俺の思いを確かめてくれたのが、向こうから段々明確なる人の影だ。2日前この時代に出会った自分にとって大事な存在だ。

「見つけた……」

「テメェはこん間の?」

 口調はともかく、英志は今幸いに落ち着いているらしいのだ。思い出してくれたのはありがたいが、見た途端に襲い掛かってるのもある程度気を引き締めていたのだ。

「ここに何をしてんのか? 町から結構離れてやがんな。迷子になった訳か?」

 言いながら、アイツは俺から眼を離れない。まるで獲物を弄ぼうとする獣のように距離に意識をし、俺を動きに注意をしていた。

 所詮、何回相手をしていた俺は分かることだ。

「実にはお前を探していたんだ」

「んだよ、落とし前をつけてきたのか――――言っとくけど」

 拳をポきっとなった英志は疲れそうに言葉を絞り出す。とても気が重いにみえたが、コイツの底なしの体力が俺は知っている。

「今はとてもその気はねぇんだよ。やんなら、ぱぱっと終わらせてもらうぞ」

「いや、ちょっと待って! そのつもりで会いにきた訳がない。ただ、お前と話したいだけだ……」

 その言葉を聞いて、英志に怪しまれるように血相に変えて何故かに廃墟倉庫に振り向いた。

「オレと話だって? 赤の他人に話すことなんてあるわけねぇだろう? テメェ、もう一回聞いとく。何でここにいる? 何でオレはここにいると分かりやがったのか?」

「たまたまだ! 偶然ここにきてお前に――――」

「先からお前お前って馴れ馴れしい呼び方をしてやがんな……それとも喧嘩を売ってんのかコラ」 

 落ちづいて低い声の割りに、英志の次の動きがみえてくる。できれば、その展開を避けたくて彼に弁解しようとする。

「ま、待って! 本当だ! 一昨日、アレの後からアキに面倒を見てもらってアイツから色々聞いてさ。だから、おめ、中川と話したくなったんだ」

「アキ……明のことか?」

「そうそう!」

「そうかそ―――ッか。昨日一緒にいたのはテメェってことか」

「それはそうだけ――――」

 一瞬の瞬きだった。

 俺の体は反射的にガードを上げ、ギリギリで左にストレートを躱せる。驚くも譲るもない英志は左手でフックを放ったが、俺は膝を咄嗟にしゃがみ込んで英志の後ろに回り込んだ。

「ほぉぉ、動けるんじゃぇか?」

 アイツを驚いた割りに、この体はそんな初心者レベルの動きで息を少し乱れてしまう。膝の熱気や腰の反応で1ラウンドなんて耐えられないと予測した。かかってくる攻撃を躱すことで一杯になるかもしれない。

 でも、動ける。この限りのある体でも見事に襲撃を何とか躱せてある程度安心をしたのだ。

 よく聞かれるのは『体で覚える』ということだが、親父とのスパーリングでカンで何となく動けると分かった。

 3日ぐらいこの体で歩きまわして何となく再び慣れてくる。

 これなら少なくとも、英志と言葉を交わす目的を果たせるだろう。

「ㇸㇸ、動けるも何も。ラッキーだけだったんだ」

「ラッキーか。そんなら、これでどうすんだ!」

 言い切れる前に彼の態勢、前の左足と胴体を少し左に傾けることで、次の襲撃をお見通しだった。

 右手でかかったストレート、たかがの誘い込みで俺を右に躱させようとし、突発的の左手のボディーで相手をへし折るというパターン。1回それにやられたら、2度はない。

 右にステップし次第後ろに距離を広げた。

 英志はその後直ぐに上げた左手を下ろし、俺と同時に態勢を整える。

「そっちも読めたか……テメェ、〃こういう〃のが慣れてんのか? 2日前一発をくれてやった野郎とは思わねぇな」

「あの時は突然過ぎて仕方ないんだろう?」

「チッ、言い訳はいらんな」

 拳は顔を隠れても、彼の笑顔がハッキリみえる。しかし、それはいい事とは言えないのだ。むしろ、興奮して本気になるということだった。

 英志はてガードに入り込み、右のアッパーで後ろに躱し、電車の如き右にストレートが接近する。つい、左手で払ってコイツのお気に入りのフォローがきるだろう。

 上から左手は俺の頭を狙っていたが、右腕で防御した同時に腰を地面に落とす。おかげで無事にあのオーバーヘッドを躱せ、無様に逆熊歩きでまた距離を空けて立ちあげた。

「ダッセーとこ見せやがんな」

 偉そうに笑い出した英志を見たら、湧いて来る感情を全力で抑えようとしたのだ。

「てっても、まだ一発なんか食らってないね」

 格好を付けのせようとした俺に英志が顔から殺気を溢れ出す。完全に怒らせてしまったみたいだ。

「オレをバカにしてんのか? いい度胸じゃねぇか」

 アイツの表情と俺の言葉で、気づかないうち熱くなってしまうと分かる。このままだと埒があかなくてやばいことになるかもしれない。

 深呼吸をした俺を見たら、英志はまた挑発してくる。

「フン、もういいか? 次てぶっ倒すからな」

「いや、ここまでにしよう」

「ざけんな! いいとこだ」

 5年前も5年後も問わず、英志は英志だと確信した。少しでも、この小競り合いで興奮の様子や戦い方が紛れもなく俺の知っている事だ。

 それは自分をある程度安心をしてくれた。

「お前……大事な人どれくらい迷惑をかけていると思うんだ?」

「何だと?」

 俺は両手を下ろし、彼を眼に見つめて決心のある声で語ってみる。

「お前にあんなに腹立たしいほどいい幼馴染がいるして凄い才能に恵まれたものの、どうしてあんな連中に付き合うのか? 分からないんだ」

「知った口を叩くんじゃねぇよ……オレの何が分かるというんだ?」

「分かるさ!」

 つい大きい声を出してしまって英志を驚かせたそうだった。

「お前は傷ついたんだな。もう痛い目に遭いたくなくて強さを求めているんだよね? しかし、今ある強さは捻じれた物なんだ。あの清永とかのヤツは何が言おうと、お前には正しい強さうがある。どうぜ」

 俺は左手を伸ばして英志の顔の辺りを指す。

「お前の目に見えるんだ。それに、避けた拳で伝わったんだ」

「……バカなことをそれ以上言ったら本当にころ―――――」

「気軽にそのようなこというんじゃねぇぞこのバカ‼」

 英志が言おうとした言葉が俺を怒らせてしまった。どうぜ、俺は〃今〃ここにいる理由はそれに関係があるのだ。その言葉すらを口にさせる気さえなく、ふとキレた俺は言葉を飲み込ませた英志に近づいていく。

「お前は今のままでアキはどうなってると思うのか?」

 俺の知っている英志なら、友達を悲しませることなどはする奴ではない。

「さっきのその言葉が家族に聞かれたら、どう想われるだろう?」

 アイツなら、大事にする母に辛い思いをさせる酷い息子じゃない。

「お前はたかが不良の分際に付き合い、罪を犯す奴なのか⁈」

 何より、俺のライバルである親友は悪に染まることはない。

 そうだ。俺の知っている中川・英志はその中にいるはずだ。俺の言葉で心をこじ開けて見せたかったのだ。

「だから先からオレを知った事を抜かすんじゃねぇ!」

 俺のこの体の全力がかかったんだが、英志の一発を何とか手で受け止められた。呆然とした彼に、まだその拳を抑える全身が震えながら、過去に目覚めてから言いたかった事をそのまま言い放つ。

「お前はそうやって心を閉じたら、後戻しはなくなるぞ……この道に進んで自己崩壊でいいのか? 知るかと言っても、そうさせる気はないよ俺は」

「何でわざわざとここに来やがってそのバカげた事を言いに来たのか? そもそも誰だテメェ⁈」

「俺は松原・敬だ‼ お前を悪の道を歩ませないバカだ‼」

 残った力で、英志を地面に転がして彼の傍に倒れた。もうそれ以上続ける力もなく、ただ地面で息を何とか整えようとした。

「ったく、弱えぇ癖に喧嘩になれてんのか? おまけに攻撃をわざとしてくんね。ぶっ飛ばされないし、ぶっ飛ばせねぇ。面倒くさいな」

「ハハ、喧嘩じゃないんだよ。技をちゃんと頭に焼き付いただけだ。パワーがそんなにないよ」

「技か……細かい事は性に合わねぇ。俺はただ――――」

「蹂躙して何とか相手を倒すってことかな?」

「まぁな……ぐぅ……ぐぅふ、グアハハハ!」

 俺達が突然で微妙なタイミングで笑い出してしまう。英志はとりあえず頭を冷やしてくれたのはありがたくて一安心が出来たのだ。

「ったく、テメェ心読めんのか?」

「エスパーと言ったら?」

「えすぱぁ? 何だそりゃ?」

「聞いたことがないか? 考える事だけで物を動かしたりして。ほら、念動って奴」

「……オタク野郎に倒させて恥さらし」

「オタクじゃ……ない訳がないね」

 この時代の自分が確かにオタクだが、中があまりそうではないのでオタクかどうかということを一人で思い込みながら、英志は体を起こす。

「明に言われて俺を会いに来たとは思わねぇけど、アイツとのどんな関係か?」

「お前に襲われた後、面倒をみてくれて何となく仲良くなっただけだけど」

「そっか……アイツって本当に面倒な。手を出さないのに、強いにみえるんだ……テメェ、なんでここに来やがったか分かんねぇ。だが、もう帰ってもらうぞ。じゃなきゃ、本当ぶっ飛ばすからな」

「……例の集団は倉庫を拠点として使ってるからか?」

 険しいな眼で睨みつけた英志に、被害を及ばなと分かったもらうようにう両手を上げるた。

「お前の反応で分かっただけだ。別に知ってここに来た訳がないんだ。たださ、アキがお前に心配して、少なくとも彼の言いたい事を聞いてやれって」

「彼の言いたいことか? 彼は俺の悩みが分からなねぇ。弱いことで否定され、独りぼっちでいる暑苦しい気持ちだ。完璧なアイツが分かる訳ねぇって」

 アキの事情は流石に暴くわけには行かない。しかし、裏を知っている俺がその言葉に少し刺されたという気分だった。

「分からなくても、彼の気持ちは確かだ。まだ幼馴染であるお前を大事にしているんだ……部外者の俺でも分かるほど。だから、聞いてやることだけで損がないよね?」

「そりゃ……」

「おかしいね。英志は帰ると言ったのに、何でここで知らない奴と一緒に寛いでるだろう?」

 突然、向こうから聞き覚えのある声が耳に入る。その方面に振り向いて、直ぐに立ち上がった俺と英志は清永・正弘と牡牛野郎が見えた。

 驚いたのは、タバコの匂いを先に気づかなかったことだ。吐き気が出る程激しかったのに、どこかに覚えのある匂いのような気がしたのだ。

「清永さん……」

「オエ中川! 何であのヤロウがここにいんだよ? デカの弟にここの事を抜かしたら、どうすんだい?」

「いいんだよう涼太。彼はそのような真似はしないさ。一本でもあっちに吸って落ちづけ」

 清永は冷静のある声で俺から眼を反らさずに、牡牛野郎を黙ってくれた。ここに彼と出会って想定外だが、利用できるチャンスだ。

「清永っというね? 自己紹介遅れたみたい。俺は松原・敬だ」

「礼儀正しいよね。 お前、細かい事にこだわるタイプ? まぁいいんだ。名は清永・正弘。さて、松原・敬さん、どうしてここにいるかと説明してもらおうか?」

 次の言葉を考えながら、頭の中のどこかに引っかかったような感じがした。ハッキリ分からないから、それはさておいて清永の質問に答えた。

「コイツと話したことがあったのだけだ」

 清永の後ろから牡牛野郎はまた物騒な思い足取りで俺に前に近づき、シャツの襟を掴み取る。

「話すことって何なんだ? テメェ、オレらをバカにしてんのか? きっとあのデカにオレらのい場所を通報するタメにここを嗅ぎつけたんじゃねぇか?」

「ったくお前、タバコ臭ッ!」

 出来る限りにアイツから顔を逸らそうとした。どうして今になってこの臭い匂いに気づかなかったかを自問してしまうほど。

「だから違うんだ涼太……話しをしにきただけと言ったらそれ以上と以下でもない。放せ」

「チッ。命拾いをしやがったな」

 力を入れて離した威力で俺は地面に倒された。

「中川。いつも言ってんだ! オレらを邪魔する奴をぶっ飛ばせって。コイツもあの金髪野郎も。ドイツもコイツもオレらを見下す連中だ。忘れてんじゃねぇよ。清さんが教えてくれた生きるという意味」

「……言われるまでもねぇって」

「いいかテメェ。二度オレの前に顔を出すんじゃぇねぇ。死にたくなきゃならな」

 それを言い残して牡牛野郎は立ち去って倉庫の方に向かう途中に、ある見覚えのある物、オレンジ色の小さな箱をポケットから取り出してここを去った。

「言い方はともかく、彼の忠告を聞くべきだ。ここにまた来ないようにするがいい」

「脅威なのか?」

「どう受け取るのは自分勝手だ。英志、お前も。何をやろうとはお前の自由だ。だが、分かるよね。この俺に歯向かう物の始末。それに高巻・明と関わらない理由も」

 英志は恐怖や戸惑いに近い表情でその場で凍えついてしまった。静かにはいと答え、両手の拳を握り締める。

 先の俺の言葉の効果が消えていくと分かり、黙っていられない。

「そうやってこの町の少年達を脅迫をしながら、洗脳してるのか⁈ 自由とか言って綺麗言葉でアキに近づくなとよく言えるよね?」

 英志に向かったままで俺に言いかける清永は不気味に冷静に大人しくみえた。

「それも俺の自由じゃないか? 俺は邪魔物が嫌いんださ。この町の警察は特に面倒くさいんだ。たまに喧嘩したり、優位性のを見せつけたりするのは何が悪いんだ?」

「優位性って?」

「もちろん俺様の強さという生き様だだ。上に立つ者は下に這う者を好き勝手にするのは当然のことだ。しかし、社会の鎖に結ばれる羊どもがそれは流石に理解できていないさ。哀れとしか言えないな」

 この人はどうかしていると、その発言で分かった。先から落ち着いた態度が余裕とでも解釈してもいいかもしれないのだ。

「大人の癖によくそんな中二病めいたことを言えるね。この町の最高峰に立っているか? 力の利用で勝手に町の治安を乱してるだけだろう⁈」

「フン。改めて言うが、どう考えてもらうのはお前の自由だ。だが、俺様の自由の邪魔をするつもりなら、流石に綺麗な言葉で済まないぞ。オエ涼太、行くぞ。そんな汚い煙草(モン)早く捨てろ」

 俺に背中を向けた清永は向こうの牡牛野郎と共に立ち去った。

 あの清永という男は大違い。冷静を保って平気そうな顔をしても、隙間などを全然見せなかったのだ。むしろ、あの涼しい顔をして俺を誘い込んでいるような気がした。

 もっとも厄介な相手、脳みそがちゃんと働いている奴だ。

「聞いたよな……もうここに二度と来んなよ」

 さっきから黙ったままの英志に突然言われたこと。彼はまた俺の話しを聞く気もない顔に戻ってしまい、不機嫌そうに地面を見つめていた。

 まるで、少し近づいた時にまた遥か彼方に飛ばされたように気がした。

「お前……何であんな奴に付くのか? 分からない訳ないよ。あのような男の危険性を」

「清永さんに救われたんだよ。テメェなんぞに分かる訳ねぇ……あの人は悪いことをしたい訳がない。ただ全力で自分を貫いているだけだ」

「それはそうかもしれないが、自分より弱い人を利用してもいいかという考え方ってどう見てもおかしいんだ」

「弱くねぇテメェに何が分かるんだ⁈」

 その大音声に驚かされて俺は立ち尽くす。〃記憶〃上、英志は何故あの男の強さを求めたのはあ分かったが、今の彼なら十分強いし、誰かに執着する必要はないだろう。

 それでも、そこまでしてあの清永・正弘を庇うなんて。

「弱くない……か。な、お前にとって弱さって何? 強いでいることは何?」

「……分かる訳ねぇよそんなモン……」

「そっか。今日はここまでにするけど、明後日俺とアキに会って見ないか?」

「何のため?」

「ますはアキの話しを聞く為にな。それから、三人で考え出したんだ。強さと弱さの意味を、皆一緒にね」

「チッ、誰がんな下らねぇ事に付き合うか」

「ご飯奢ってやるよ」

「……ざけんなよ。それでここにもう近づかねぇなら一回きりでな」

 その半分の約束を言い残した英志に日昇商店街の入口で集合だと伝えた。どれぐらい説得したか分からないが、できることはしたのだ。

 アキは明日俺ん家に遊びに来る約束の次に、明後日英志と三人で会うのは単なる保証に過ぎない。

 後は、全ての段取りを実行することのみ。

 疲れた体を向こうのサインで少し休んだら、帰る事にした。幸い、思ったより今日の準備を早く済ませたおかげで早めに帰れるのだ。

 両親とまた時間を過ごしたくてたまらない俺はバス停に向かったその時、中央広場にある光景がみえた。

 今日用事があったと言ったアキが、ストカーの小林と話していたようだった。言い争いに近く、激しい仕草や大きい声でなんとなく分かる。

 聞こえる距離にあった地域図の後ろに身を隠し、彼らの会話に耳を済ませた。

「お願いだから、行かないで‼ 私の……私の明君がいなければ、私は生きていけないよ‼」

「これは僕の夢なんだ。お願い理解してくれ小林さん、僕は君にその風に思わない。この町、この国を離れるからもう僕の事を諦めてほしい」

 国を離れる? その言葉が何を意味しているのかは分からなくても、嫌な予感がする。

「明君は私の救い主だ。忘れろと言われても忘れられないだろう?」

「僕は君を救ったなんてしていないよ。ただ困った君に手を伸ばしてあげただけだ」

「……明君まで私の気持ちを否定するなんて……時間があれば、向いてくれるだろうと。でも留学に行っちゃうなら……させない……許さないそういうの……」

「小林さん?」

「明君は私の運命の人だ。誰にも譲る気はない。あの不良の中川・英志も、あの変な松原も、欧米の国でもね!」

「ちよ、待って!」

「お前は昨日の……」

 アキとあの子を追いかけようとした時、後ろから高巻警部の声に呼ばわれた。

「ここに何を知っている?」

「兄さん?」

 最悪のタイミングで向こうの二人に感づかれてしまう。アキはともかく、小林の顔が俺を見た途端に怒りを溢れ出してしまう。

「何か問題あるのか、明?」

「い、いいえ。ただ―――――」

「どいつもこいつも……貴方明君の兄だよね?」

 身振りが抑えられないJKは警部さんの前まで近づいてきた。

「それはどうした?」

「アレをして、次に国から追い出すなの⁈ よくも私の明君を」

 その言葉に戸惑った高巻警部はアキに振り向いって意味を問い詰める。兄を直接目に合えないアキはオドオドとした声で答える。

「りゅ、留学が決定だ……来月から向こうで高校を済ますことになる」

「そうか……それは確かにめでたいことだが、この子が言った『アレ』という意味を知りたいんだよ」

 アキの背筋は凍えたように立ち尽くして無言のままだった。目の前に散々言われるJKを無視して、高巻警部が弟に近づいて両肩を掴める。

「彼女に何を言ったのか?」

 警部は震え出したアキの方に更に力を入れて、少し痛みつけさせた。それを見て、俺はつい前に出して彼を止めようとした。

「ここは身内同士の問題だ‼ 部外者が突っ込むな」

 喉が裂けそうな大きい声で怒鳴った高巻警部に立ち止り、彼の表情にどこかに恐怖を覚える。猛獣と言ったら過言ではないかもしれない。歯を見せながら、激怒に顔を歪ませていたのだ。

「大丈夫だ、敬君……兄さん、約束通り何も言っていないよ。本当だ。別の話しさ」

「そっか……まぁいいよ」

 俺と小林から目を反らさずに、警部は弟を手放す。その時、また最悪のタイミングで、道の向こうの路地から牡牛野郎が現れた。ついさっき、あの廃墟倉庫の辺りで会ったのに、ここで現れるとはもしかして俺を尾行してたと疑問に思った。

 だが、同じ事に気づいた小林は何故かに決心の顔に血相を変える。

「私は……私の明君を誰にも譲らないよ……」

 それを言い残して立ち去った小林は、路地の向こうに消えた牡牛野郎の方に向かいそうだった。

 その場に残して俺達三人に漂った空気が正直に息苦しかったのだ。

「帰るぞ、明」

「でも、僕この後友達と会う約束を」

「ほぉ、誰と? もしかして例の中川の奴?」

 大当たりのように、アキは少し動揺して目を泳がせる。

「ち、違う……い、いいのよ。帰ろう」

「明……もしかして俺を騙す気か? アイツと隠し会う上、庇うつもりか? あの集団をどれだけ捕まえたいと知って――――」

「俺だ‼ 俺と会う約束だったんだ。さっきのあの変んな子とのいいとこに挟むのはちょっとなって思って、身を隠しちゃったよ。アハハ」

 明らかに嘘をついていると分かった警部に睨まれて、アキがさの場に思いついた言い訳に肯定した。

「そっか……そもそもお前は誰? 見覚えのない子だ。征服もこの辺りの生徒じゃないよな」

「アキのクラスメートの知り合いを通して友達になった松原・敬です。この間、失礼なことをして申し訳ないです!」

「そっか……覚えて置こう。行こう明」

「はい。今日はごめんね、敬君」

「言いってことよ! また明日ね!」

「あ、ああ」

 それで、高巻兄妹は中央広場を後にした。

 正直、明はまだ心配だ。兄にまだ虐待を受けているか分からないが、流石に先の事で気になってしょうがないのだ。

 小林のことも気になったが、その方は今は無視していいだろう。

 それでもまだ明日会う約束が守れそうだし、だいぶ時間が取られてしまって直ぐに帰る事にした。

 愈々明日は色々が決まる日だ。できるだけ早く目覚める為に今日は早く寝ることに決めた。

 親父とトレーニングに付き合ったら、直ぐに。


                  。。。


 一晩中に寝たり起きたり、それが何回繰り返してあまり睡眠を取れなかった。二日酔いになって心配していたけど、さすがにこの大人の体がお酒に慣れているおかげで体験せずにすむ。

 しかし、二、三杯を飲んだことだけで口がどれほど軽くなって恐ろしく思ってはいた。6時の少し後に着替えて寮を出る。折角まだ朝早くて町を少し見回したくなった。タツ兄と商店街の辺りにしか行かなくて、もっと将来居場所となる所を把握した方がいいかと。

「いいやでも、自分の時に戻ったら、記憶がちゃんと残るなのかな?」

 そも思い込みながら、まぁいっかとさり気なく町の探検をし続ける。

 人があまりいなくて結構寂しい散歩だけど、割と意味は丁度いい光景だ。

 迷子にならないように、常に商店街からあまり離れないことにしていた。川岸や住民街を見て、昨日ランチを食べた公園に足を運んだ。

 『自然と共に豊かな食事の時を:森のピクニックレストラン』 

 公園の入口の近くにそのような面白そうなサインが昨日と同じように歓迎してくれる。トシさんの行きつけの店の一つらしいのだ。テーマからにして凄いと思った。公園の特定エリア内に、テーブル席かシート席を選び、食事を注文してバスケットで渡されてピクニックをするっという特殊な店だ。真朝町の観光スポットの大人気な所らしい。

 あまり考えなくて昨日、ガーデンペストパスタにして新し世界に誘われた程の絶品だった。トシさん達によって未来の僕の大好物だそうだ。

 それを思い出したせいで小腹がついてしまった。しかし、幸いにこの店の開店時間が早いのだ。まだ時間があって朝食をここで決める。

「おはようございます。森のピクニックへよこ、あッ!」

 店員のお姉さんは何故かに驚いてしまった。後ろに何かがあるかを確かめてみたけど、何もいなかった。

「大丈夫ですか?」

「え、えええ……何の用かしら?」

 この人は大丈夫かと頭の中に思いながら、首をかしげる。

「えっと、注文したいですけど? もしかしてまだ早いですか?」

「ちゅ、注文だけなの、か」

「はい、そうですけど?」

 5秒ぐらいに見つめたら、店員のお姉さんが僕の困った顔に気づいてくれそうだった。

「で、では! 注文を承ります‼」

「はい、えっと~……ソーセージマフィンとイチゴスムージーをお願いします」

「は、はい! 1150円です」

 お金を渡してテーブル席に座ってゆっくりと食べていった……と言いたいところだけど、店員のお姉さんはずっと僕の方にじろじろと見つめる。知り合いではなさそうだけど、正直にそれであるかもしれない。ひょっとして元彼女とかフラれた子とかかな?

 何であろうと、彼女の視線を耐えられなくて早めにマフィンを終わって署へ向かう。店を出る時の通常な挨拶と違って、後ろからパシャッという音が耳に入った。

 カウンターの方からだと判明して振り返ったら、またパシャッとあの店員のお姉さんが写真を撮る。

 これでまた、何の前振りもなく、訳の分からない状況に落ちた。何をすればいいか分からなくて彼女をただ見つめている。

 気づかれて慌てた彼女は、携帯をカウンターの下に咄嗟に締まって僕の隣にあった掲示板をひたすらに指していた。

「お客様の写真を載せるためです! そ、それだけです」

「そ、そう……ですか」

 嘘に決まっているだろうけど、そろそろ行かなければならない時間もなってあのぎこちなくそこを後にする。

「だからもう勘弁してくれよ。このとんでもないことの上にあのような変な人はごめんだよ」

 そのシーンは忘れようしながら、警察署に辿りづいた。まだ誰にもいなくて外で待つ事にしたのだ。未来の僕の携帯にあったクソゲーに恥ずかしく思って暇つぶしをしてたその時、お袋からのメッセージが届いた。

『明日何だけど、お父さんとお母さんは二人切りのデートに出る。もしお父さんと話したいなら、今日の午後にかけてね!💓』

 フッと笑わせてくれたそのメッセージに、『分かった。手が空いたら連絡するよ』という返信を打つ。

 その内に、高山兄妹と佐藤さん以外に中村先生と中川の小母さんが次から次に署に着いた。

「小母さん、今日来る予定なの?」

「いいえ、こちらの先生に呼ばれて来た」

「どういうことっすか先生?」

「今日は担当の刑事と話したいことがあんで、それを中川の奥さんが付き合ってもらいたいやん」

 何のことかが分からないけど、昨日に二人の刑事の事を先生に任せることを決めたからそれ以上、誰も問い詰めなかった。

「オマエらはそのうちに英志に会うてみろ。話したいことって山ほどあるやろう?」

「それはそうですけど、正直に美月ちゃん一人で行った方がいいと思うの。中川君に事件についてもっと聞きたいけど、今日はむしろそれの休憩をして恋人同士でいいかと?」

「そりゃそうな。美月だってエイちゃんもそれでいいか?」

 高山さんは少しを考えてから、思いやりに溢れる笑顔で僕に向ける。

「いいえ、今日は敬君に任せようっか」

 僕はもちろん驚いたが、中村先生までその答えに途方をくれた。

「ぼ、僕って。どうし―――――」

「今、英志が必要なのは最も頼りになる人なの。悔しけど、それは私じゃない。それに、敬君にも必要な気がする。多分、英志君と話して答えがみえてくるかもしれない」

「高山さん……」 

 1分前と真逆に、高山さん不機嫌に血相を変えて溜め息をついて僕にさっと指差す。

「それはもう禁止だ。ここまでしてやれば、私だけ仲間外れして許さないよ?」

「えッ、どういうこと?」

「だって、お兄さんと英志君を下の名前で呼び捨てするでしょう? 先輩はともかく、美月だけ冷たく苗字で呼ぶのはもう耐えられないよ。私にみ・ず・きって呼んで。深く考えず、友情に溢れるように友達らしく」

「……ぐ、ぐぅ、ハハハ! 参ったなこの妹」

「美月ちゃんっぽいというしかないよね」

 返す言葉もなく、僕はそこの立ち尽くしていただけだ。今はこのようなこと言われる場合じゃないのに、皆の反応からにして凄く大事なことらしい。

「ほら敬、レディーの頼みやで。聞いてやらなきゃ男がすたるで」

「……中川さんと話してから預けていいかな?」

「別にいいけど、敬君は既に分かるよね? この高山・美月は決めたことなら、後戻りはない。アンタの友人としてあの二人と同じようにしてくれるため、それにアンタに答えを導くためにそう必ずを呼んでもらってみせる」

 彼女の強引な姿と強さの前に、笑わずにはいられなかったのだ。高山さんは本当に凄い人だと改めて感心したのだ。

 彼女の言葉を甘えて中川さんに会うのは賛成した。そして面会の手続きの途中にトシさんに話しかけられる。

「昨日よりマシな顔じゃん」

「トシさんの言われたことをずっと考え込んでいた。とりあえず、答えを探し出す覚悟が決めたんだ」

「そっか。そりゃいいんだ」

「あの、本当に大丈夫? 僕だけ中川さんに会うなんて」

「大丈夫な訳ねぇよ、バカ」

 言われながら、頭の上が軽く兄妹愛の拳金槌のように食らった。物理的より、精神的のダメージを与えてくれる。

「彼女はどれだけエイちゃんに会いたいって分かるだろう。しかし、美月は英志に似ている。いいヤツだ。今のお前に英志と話し合う必要があると判断して面会を譲った。無駄にすんなよ」

「いつも思うけど、トシさんは妹のことになってつい笑い出して」

「ったり前だろう。自慢の妹だからな!」

 満面の笑いを見せたトシさんのおかげで、改めてこの機会の重さを知らせてくれた。

 事件について聞きたいことが多いけど、僕の真の目的は別だ。

 僅かな15分で中川との会話で求めていることが見つけがたいけど、高山さんがくれた想いを無駄にできない。

 僕一人で面会室まで案内されて向こう側に中川さんが現れる。

 ゆっくりと席について僕に聞き出した。

「今日は敬だけ?」

「あ、ああ。たか、彼女が僕と中川さんが話し合う必要があるって」

「さん? 何それ。ハハハ。親友は殺人だと疑われて突然にその呼び方して以外と」

 中川さんは冗談として受け止めてクスクスと笑われてしまう。二人だけで見ると、本当にこの人が誰かを殺すとは端から思わないだろう。

「それはね、今この体の中に5年前の君が知っている松原・敬が宿っているからだ」

 もちろんその事実を述べても、中川さんが一瞬に黙って次の1秒に爆笑した。信じてくれる何て思わなったが、妙にその宣言で肩から重い荷が降ろされたような気分になる。

 それで、何の紛れや迷いもなく彼と話せるようになった。

「あのさ、皆はよく君と僕がどれ程仲がいいと言うけど、それは何故だと思う?」

 僕の質問に中川さんが少し言葉に詰まってしまったみたい。答えに苦労するだろうと思ったけど、想定外に彼はちゃんと答えてくれる。素直な笑顔を浮かびながら。

「知るか。ハハハ。僕達にはただその関係だからだじゃないか?」

「そう、ですか……」

「……ね敬、僕達ってどのように出会ったかって覚えている」

 まさかここでまたあのようなクイズみたいな質問にぶつけるとは思わなかったのだ。黙っても騙そうとしても何もならないけど、さすがに知らないと答えたらもまずいだろう。

 しかし幸に、中川さんがその意気で思い出話に顧みてくれた。

「大学に入ってから別の自分になりたくて、気づかない間に″彼″を真似し始めたんだ。何しろ、僕は知っている人間の中で明はるかに潔白だったんだ」

 語りながら、中川さんの笑顔が暖かくて寂しくみえる。亡くなった友人に誇りに思って話しているか、その友人の死に関わって罰として話してもらっているか、どちらにしても今の中川がとても切ないだろう。

「ある日偶然で町に出かけたら、市役所へに転入手続きをしに行っていた敬と会った。迷子になっていたから市役所まで連れて行ったその時は、敬はどうしても明を思い出してくれたさ。どこかに罪滅ぼしをしたくて近づいたなのかもしれないけど、いつの間に君と仲良くなった」

 手錠がかけていた自分の手を上げて見つめる中川さんは、赤ちゃんの鹿に近く震えて、涙が潤んでしまった。

 その姿が目に入ったら、ほんの少しだけで琴線に触れるように感じる。

「その罪深い中川・英志にもう一回″友人″と呼べる存在に与えてくれるなんて……オレなんかに、こんなに幸せでいるなんてアイツ不公平だよ。きっとあの世でオレを睨んで祟っているだろ」

 今、そのように取り乱している中川・英志をみたら、二つのことが明らかになる。

 一つ目、この人は僕に答えを教えられないのだ。そもそも、彼自身がどうして未来の僕は親友として受け入れたか分からないのだ。

 そして二つ目、皆の言うことを確信した。この人は高巻・明の殺害ができる訳が無い。その涙で溢れる瞳に嘘偽りは絶対にないのだ。彼の言動、喋り方の変更、動揺などその全てはそれを物語った。

 僕は中川・英志のことを知らないけど、少なくとも人殺しではないと断言できるようになる。

「な、英志……もし、あなたが犯人じゃないこと、つまり高巻・明の殺害を犯さなかったが証明できると言ったら……」

「だから何回言ったらわかるんだ? オレ以外アイツを殺せた第三者などな――――」

「答えてくれ。もしその可能があればあなた、いやお前はどうする?」

 僕は決心を瞳に込めて中川さんの目を見た。彼に理解してもらわないといけないのだ。この闇に潜り込む事件はもう彼だけの戦いではなくなったことを。

「……もし、オレは本当に明を殺さなかったら、彼に顔を向けて謝罪できるようになる。この長年に渡って背負ってきた罪から解放ができる。もしかしたら、本当の意味で前を歩き出せるかもしれない」

「彼女達はこう言った……もし本当にお前が犯人ならまだ大事な人として思うだろうと……馬鹿馬鹿しいことを言うよね」

「フン、そうだな……あるわけ――――」

「当然、何も変わらずに英志を英志としてみる。それ以上と以下ではない」

 僕は英志を遮って、見えてきた″アレ″をここで利用させてもらった。

「皆はまだお前を誇りを思って恋と、友、生徒や息子などを呼ぶ。過去に犯罪を犯したのはゆるし難いが、一緒に生きていけば報いられるだろう? 高巻・明に、自分に」

 後ろの係員さんはぎこちなく五分しか残らないと報告する。もうこれ以上僕から言えることはないと思うけど、少なくともできることがやってみた。

 英志からにもう言うことはないと思って、立ち上がって部屋を出ようとした時に。

「あの日、明は留学の決定を教えてくれたんだ……清永さんが町とオレ達を捨てると言われた後。捨てられっぱなしのオレの中に、その時何が壊れたかと感じたんだ。はっきり覚えていない。しかし、明を襲ったのは確かだ。裏切られたかと思ってオレの悩みを全てアイツにぶつけた。でも彼に名前を呼ばれてそれを続いたら、本当に殺してしまうと思った。直ぐにそこから立ち去って救急車を呼んだんだ。怖いので彼の側を待つことなく家に帰ってしまった。卑劣だな……その後、ニュースで明のことを知った」

 期待もしていなかったのに、大事なことが得たみたいのだ。

 これで確信する。仲田警部の情報と一致しないこの矛盾は明らかにこの事件の鍵となるだろう。後は中村先生の方を待つだけだ。

 1、2分しか残らなくて、英志に最後に大事なことを確認するのは忘れるところた。

「英志、逮捕された時に高巻警部に犯行の概要とか、特に死亡原因や時刻に何かおかしいこと言われた?」

「? 何も言われていないんだ。そもそも僕は罪を認めているし、尋問の時はやけにその日のことばかり聞かれるだけだ」

 その言葉を聞いて、つい笑顔を浮かんでしまう。もう時間だと言われる頃に最後に一言を言い残しておいた。

「多分前も言ったかもしれないけど、この松原・敬はお前を救うよ。″色々が分からなくても″この″今″にある全てを守る覚悟ができたからだ!」

 その言葉の意味に途方をくれた英志にいた面会室を後にして、一階のロビーに駆け出す。

 彼女にも感謝すべきだ。完全に求めていた答えではないけど、大事なことと掴んだような気がしたのだ。

 皆と朗報を共有したくて、廊下の扉を勢いよく開けたけど、その向こうに待っていたのだまた新たな試練だ。

「何やて?!」

「お前らの大事な矛盾など何の意味もない。そもそもアイツは何を言っても真実が変わらない。中川・英志が犯罪者だ」

「んなことを言って本人と確認してねぇよな?! 彼は救急車を呼んで殺した訳ねぇだろう!」

「いいやでもまぁ、救急車を呼んだのは不明だよ」

「だからといって彼の話も聞いてあげないと!」

 二人の警部と皆の揉め合いは、ロビーに出た途端に目に入った。中村先生は何とか二人との面会ができたみたいけど、どうしてここで揉めているのがさっぱりだ。

 皆を呼びかけてみたら、喧嘩を一時的中断したのだ。

「敬君! どうだった?」

「ちょっと待って。先に何を話しているかを誰か教えてくれる?」

「中村先生は何となくお二人の警部と面会できたけど、彼らは忙しくてここで話を聞いてもらおうと。丁度今、仲田警部が教えてくれた情報と英志君の矛盾について話している」

「まぁ、矛盾と言っても、本人は君らそう言った訳ではないだろう?」

「仲田! そもそもテメェは余計な口をガキどもに叩いたことだ」

「悪かったっス」

「コラ何回言ったら分かる? 指紋の結果が後に届くそうだ。そこまで待って下らないことを言い回ってんじゃねぇぞ」

「ちょっと待って下さい、高巻警部! 僕は丁度今英志と面会をしてました」

「それで?」

 僕の話を聞く興味もなくても、今ある情報は何かのきっかけを与えてくれると信じてみたのだ。

「彼を逮捕した時に、犯行概要をちゃんと教えたかを疑ったことに言われたのだ。英志は高巻・明を襲撃した後、自分のしていたことがわかって救急車を呼んだのだ。その後家に帰ったそうだけど、不思議なのはどうしてその後のこと彼に教えていないですか?」

「ちょっと待って下さい。さっきから皆さんに矛盾とか言い出していますが、何のことを説明してくれますか」

 何も知らなさそうな中川さんは焦って話を遮った。それを見て高巻警部の顔に汗が出ていく。その一方、いつも通り仲田警部はまだ平然として気怠くその場に立っていた。

「叔母さん、落ち着いて聞いて下さい。検案書により、被害者が二度と襲われたそうだ。最初は英志君の事らしいけど、もし彼は本当にその後救急車を呼んで帰ったら、その後の襲撃が彼の手によるものではない可能性だ」

 その言葉が耳に届くと、中川さんの目に再び光がついたように見みえる。少し俯いて手を硬く握りしめた。僕の思った事にすぎないけど、あの時の中川さんは多分希望を掴んだと共に侮辱を言葉に込めてる。

「一体、何のことかを説明してくれますか?」

「そもそも教える必要はない。言ったはずだが、指紋検査の結果さえ分かったら後は――――」

「いい加減にして下さい! 私の息子をそうやって心をへし折って罪をなすりつけるおつもりですか? 彼は弁護士の権利まで捨てたと分かってもそれを騙したなのですか?」

 そんなことはさすがに知らなかった僕たちの背筋が凍えた。英志はそこまで心を閉ざして諦めていたのは、どれだけ心が痛んでいるのだろう。

 僕は想像すらできない。

「当然のことですよ伯母さん。この警部はあそこまでして英志君を犯人にしたいだけだ。敬君」

 高巻警部の前に堂々と立ち向かう彼女は、どれだけ根性のある女だと思わせながら、僕に振り向いた。

「ありがとう。大事な武器を持ってきてくれた。流石英志君の親友のことだけあって」

「あはは。役に立ててよ、かったツキちゃん」

 その場は、その言葉が僕の口から出た時に、静まり返る。頼まれたことをやっただけでこの大げさな反応はさすがに飽きる。

「な、なんか変なことでも言ったのか?」

「ふふふ。いいえ、ちょっと元どおりに戻ったみたいだけだ」

「ぼ、僕は?」

「それより高巻警部、私の息子に今のこと全部をお話しさせて頂きます。今すぐ」

「だからそれは不要だと」

「決め付けないで下さい! 貴方の上司に通報して訴える覚悟だってできています。私はずっと真実に怯えたが、あの子あのような悲惨なことをしない可能性があれば、例え小さくてもそれに掴んで戦います!」

 ツキちゃんといい、母といい、英志の周りに強い女ばかりとは感心した。

 高巻警部は何かを激しく反論しようとしたが、その前に仲田警部に肩を掴めて落ち着かせようとする。

「高巻さん、もういいんです。気持ちはわかりますが、この方に息子ぐらいを合わせてるのもそちらの権利だ。俺は許可します。皆も一緒でいいです」

「仲田さん!」

 いよいよ、僕たち僅かでありながら、希望を掴み始めていた。手続きをしなくても、仲田警部は受付のお姉さんに事情を伝えて僕たちを案内をさせてくれる。

「ざけんな……」

 しかし、面会室に向かう時に僕たちは高巻警部のその言葉に止められた。彼の血走った目は僕たちを呪うかと、怒りに満ちる。

「俺の家族を奪った野郎のタメに戦うのだと? ああいいんだ! 好きなだけ探偵ごっこやりやがれ。俺は絶対に中川・英志を黒にして見せる。アイツは……アイツだけが」

「あの、すみません」

 飛びかかろうとでもする高巻警部の脅威を遮ったのは、坊主頭の背の高い男だった。いつの間に警察署に入って警部たちに用があるらしい。

「あ、涼太さん。はいはい、待っていました。そちらの席へ。もうここまでにして下さい高巻さん、もっと大事なことがあるっしょう?」

 小さい声で仲田警部がそれを言って先に客人の方に向かった。深呼吸で自分を落ち着かせた警部は行く前に、僕たちに不吉な言葉だけ残す。

「取り乱して申し訳ないです、中川さん。しかし、俺は決して正義を実行する。覚えて下さい、貴方の息子は黒に染めた罪深い犯罪者です。そのものとして処罰を受けて頂く。では」

 それ以上揉め合う意味もなく、僕たちは早速に面会室に向かった。その部屋は何回訪れたものの、今回はいつもと違って、いよいよ希望が見えてくる英志の味方としてだ。

「母さん、先生に皆。どうした急に? 先の面会が今日で終わりかと」

「英志、大事なことをいいに来たのよ」

「母さん、大事なことって?」

 ガラスに隔て息子の前の座った中川さんは、ミズちゃんの手を握りながら、生きた笑顔で言いかける。

「あの日、英志がやったことは完全に許されrないかもしれない。だが、あんたの素晴らしい友人達のおかげで、もう一つの真実が明らかになったのよ」

「もう一つの真実。ひょ、ひょっとして……」

 英志の目がその言葉に泳がせた。彼はオドオドと僕に視線を移ったのは先の話を覚えただからだろう。俺は思った以上、その約束を果たせそうになる。

「あの高巻とやらの警部が英志に隠していたけど、その日もう一人があそこにいた痕跡があるらしいのよ」

「な、何?」

「伯母さん、ここは私に」

「ああ」

「英志君、仲田警部の話によって高巻の弟は二度襲われたらしいのよ。間に襲撃がなぜかに一旦止まって再開した後は彼の死んだ時だった。つまり、分かるよね?」

 二人の視線が見合わせた、まるでその一瞬彼らだけの世界でいたような一時だった。ミズちゃんはガラスに手をそっと置いて英志に笑顔を見せた。

「ぼ、僕……オレ、オレは殺してると思ったら、そこから離れて救急車を呼んだ――――」

「検案書によると、その後にまた襲われたそうだ。英志君……あの日どうしてあの人を襲ったか分からないけど、君は殺していない可能性だった……ある」

 英志の頰に一筋の涙が零れてゆく。彼は立ち上げ、ミズちゃんの手を合わせてガラスに置き、肩から荷が降ろされたような一息をつく。

「それ、信じていいのか? それでもオレはアイツに危害を加えた……オレは裁かれるべきなんだ。な、美月? オレは」

「それとこれは別だ」

 堂々とミズちゃんの凛とした声は室内に響き渡った。英志はどうしても罪悪感のせいで裁かれたいに違いないけど、意味の彼女が遠く離れてゆく自分に手を伸ばしている。多分、ミズちゃんがその時、自分の答えに辿り着いただろうと思った。

「君はやったことは簡単に許されない。私だってそうよ。それでも、私は私の英志君に信じる。まぁ殺人より、元不良少年の彼女でいた方がいいけどね。だから、私は全力で君が殺人者ではないと証明して見せる」

「美月……」

「ったくお前さっさと目を覚ましやがれ!」

 先から黙って様子を窺っていたトシさんは突然そのように声を上げ、ガラスに痛そうな一発を放った。痛そうというのはもちろんガラスのではなく、無謀に打ったトシさんの方だった。

「いいか? お前は償いてえのか? ああ分かったぞ。でもそれはちゃんと罪を知ってからだ。アイツを殺してないのに、牢屋で命を捨てるなんて認めないぞ英志!」

「トッちゃんの言う通り」

 トシの拳の上に優しく手を掴んだ佐藤さんも英志に言葉をかける。

「中川君、それは大きな間違いなのよ。後で皆と一緒に君は罪をどう償えばいくらだって考えるけど、今はあの高巻警部との勝負だ」

「ほんまに恵まれとるなオマエは」

 一番後ろに下がっていた中村先生もこのノリを絶えず、前に一歩を出してミズちゃんの反対側でガラスに手を掛けた。

「才能を見た時、怪しいとは思ったやん。拳の裏に何ぞ物凄い重さが感じること。恥ずかしがらず、素直にその裏を払ってくれと言うたらどやい?」

「先生……」

「英志よ、お母さんはずっと君と共にこの息苦しい暗闇に生きてきたのよ。目を逸らさず、本当にあったことに立ち向かいなさい。ほら、皆が付いているので怖くないよ」

 中川さんも、長い縛りから解放されて前に歩き出そうな覚悟で、粛然とガラスを触れる。

 残った一押しが任されたみたいで、僕もしっかりとガラスに手を置いて言い出す。

「誰かに言われたことだけど、生きていけばそのうちの答えが見えてくるはずだ。ここからどう生きていけばいいか。それは皆と一緒に笑ってふざけて、怒られて許しあって行く事で、答えに辿り着くだろう!」

 目の前に支えてくれる手が突き出された英志は、下を向いて震えていた。

 僕たちはこのように彼にいる、暗くて遠いはるかに届こうとしている。何があってもここにいるよという気持ちを込めて。

 もうこれ以上抵抗しても全員が引かない僕たちに、いよいよ被告人である中川・英志は待っていた言葉を言ってくれた。

「……もういいよ。お願い……お願い皆。助けてくれ……あの時本当に何があった事を見破って、この長年背負っていた闇をどうか、晴らしてくれ!!」

 喉が裂けそうな叫びで、英志は僕たちに助けを求める。その泣きじゃくる姿を見たら、僕たちは笑顔を浮かべた。

「いよいよ言いやがったか」

「任せてよ、中川君!

「私の方から正当な捜査を要請する。後は弁護士を探す事」

「そこはウチに任せておくれや!」

「必ず助かるよ。だから待っててね、英志君」

「はい!」

 その光景はまた中に心を揺さぶったような気がしたのだ。さすがにこの感慨深いな展開を見たら、誰だってそうだ。感情の整理を後回しして今僕にできることを考えて、英志にある頼みをすることにした。

「いいところ悪いけど、せっかく英志は話してくれるなら、何かの情報はないかな? 何だっていいよ。今の僕たちは喉から手が出る程必要なんだ」

 まだ半分泣いていた彼は顔を拭きながら、僕に答えてくれる英志は今までより素直にみえる。

「もう事件について多分全て話したと思うけど、そうだね……昨日一つ、おかしいと思ったことはあった」

「何の事?」

「昨日、皆が帰った後、ある人に訪れたのさ。昔の集団の知り合いだった。涼太と言う人はここに来て、警察に何を話したかと聞かれた。事情を説明したら、そのまま立ち去ったのだ。まだ自分のことに囚われても、変だとは思った」

「涼太……」

 聞き覚えのある名前だと思ったが、佐藤さんは突然スバリっと答えに追い越されてしまった。

「ついさっき二人の警部のお客人じゃないの?」

「何であんなヤツがあの二人のデカと用事あんのか?」

「……五年前、不良集団の英志の知り合いがこんなタイミングで現れるとは。事件と無関係なわけない」

「まだ署内にいるかもしれない。すごいよ先輩! そんな些細なことを覚えてて」

 佐藤さんの照れ臭さそうな姿を見て、後二秒僕だって思い出せたことに惜しいと思った。

「皆さんは先に言って頂戴。私と先生で今から英志のやるべきことを相談し合おう」

「おお、すぐにすぐに友達の弁護士に掛けるで」

「ではここは任せました、行こう皆!」

 僕のその合図で皆は一階のロビーまで降りたけど、客人と警部たちはどこにも見当たらなかった。受付のお姉さんも不在で、とりあえず外で見に行った僕とトシさんは署から飛び出しす。

 まだ誰もいなくて、両側の角に覗いて見ようと決めた。しかし、署の隣にあった路地を通ったら、突然誰かとぶつかってしまう。体の頑丈さのおかげで僕は転ばなかったけど、地面に倒れていた女の人に手を伸ばした。

 彼女は顔を見上げて僕を見たら、前一度見た顔の女の人だと直ぐに分かった。

「あなた公園の……」

 僕を見てなぜかに恐怖に溢れた表情になって、そこから逃げ出そうとする。しかし、幸いに走り出した方向はトシさんのいた所だった。

「トシさん! あの人を捕まえて!」

 素速くて器用にトシさんは彼女を後ろから捕まえてくれた。女の人は足掻いていたけど、ここの通常の「離して!」などを言い出さない。むしろ、彼女は恐れ恐れ周辺に見回している。まるで、僕たち以外に何かに警戒しているように。

「どうした敬? 今はあの涼太のヤツを探すんじゃなかったっけ?」

「あっ!」 

 あの名前を聞いた彼女の反応を見たら、当然の結果に至った。偶然でまたここで会ったけど、まさか彼女は……

「いや、今朝公園で会った人だ。でも、今涼太って名前を聞いてその反応……ひょっとしてお知り合いとか何かですか?」

 彼女は少し答えるには戸惑っていたらしいけど、気難しくて小さい声で答えてくれる。

「知り合いも何も……私の旦那だ」

「何?!」

「あの、今涼太さんはどこにいるかが知っていますか? 話がありますけど」

「知らない、探しているからここに来ててんだ。もう離して!」

 トシさんは僕に見て視線で大丈夫かどうかを問いかかった。今朝からもう思ったけど、この人どう見ても怪しいだ。今朝、僕を見てからの反応も気になったけど、その上涼太という昔の不良少年集団の一員の妻であるこならさすがに無視出来ない。

「ちょっと待って下さい。あなた、中川・英志のこと知っていますか?」

「知らないよ! ささっと離して」

「トシさんまだ離さないでくれ」

「お、おお」

 大人の人の抵抗は激しくなったけど、幸いにトシさんに対して余裕みたいだ。おかげで、少し考える時間を与えてくれる。

「んじゃ、今朝どうしても僕のことを見たらそんなに怯えたんですか?」

「変なこと言わないで頂戴。私、何も知らない。こらササッと離しなさい、このッ!」

 これ以上続いたら、人に気付かれて大変なことになってしまうだろう。少し焦った僕はこの人のことどうしても気になるけど、事件に関係しているかはなの根拠もない。そのうちに彼女を観察していたところに、視線は先からやけに署に中心していたと気付いた。

 僕の好きなゲームで会ったセリフが覚えた、人が迫られる時に視線がどうしても動いてしまう。特に何かを隠している時に。

「わかりました。でも、今朝のことはさすがにどうしても気になります。すみませんが、ちょっと警察を呼ば――――」

「いいや! それはダメだ」

「何でだよ?! 隠してることでもあんのか?」

「そ、それは」

「教えてくれないなら呼びますよ」

「……チッ、わかった。話すから離して」

 トシさんが彼女から手を離しても逃さないように、僕たちは逃げ道を塞いでたい。

「まずは名前からでいいですか?」

「……小林だ。小林・多寿子」

 聞いた覚えのない名前だ。少し落ち着いてくれた小林さんを、警察に見られたくなさそうで、角を曲がった先にある喫茶店に連れた。

 ミズちゃん達に待たせるのもよくなくて、店員さんにお冷だけ頼んでおいた。

 もちろん、それだけかよ顔に睨まれてかしこまりましたと。

「では小林さん、あまり時間がないので、いくつか確認したいことがあります。まずは、今朝僕へのその反応と妙な行動はどういうことだったんですか?」

「ちょっと待ってケイちゃん、妙な行動って?」

 トシさんに今朝のことを要説したら、彼は驚いて彼女を更に説明を問い詰めるる。どこかで僕に怒ったような気もしましたけど、それは恐らく黙って何も言わなかったからだろう。

「それは……その……」

 彼女は言葉に積もって気難しくなったみたいだ。多分、言ってはいけないことに違いないけど、ここで長引いている時間がない。答えを引きずり出す必要があると思って、今まであったことに振り返った。

 同じ集団の一員のあの涼太という人は英志を訪ねて色々聞き、同日に突然で署の辺りその奥さんが現れて旦那を探していたという。更に偶然で今朝僕と会って、何故かに慌てたような妙な反応をした。僕を見て慌てるのなら、何か隠していること……

「トシさん、2日前と昨日の夜の事に妙な気配を感じたことが覚えているのですか?」

「? まぁ、覚えているけど」

「そして昨日の夜、駅前にいた時誰かに誰かに見つめられていたんだろう? 顔は見えなかったけど、トシさんも気づいたと思う」

「あッ! もしかしてそれは」

 確認するまでもなく、小林さんのビクッとした目で分かった。彼女は昨日の夜、もしかするとその前に僕たちの動きを観察していたかもしれません。あの変な事をしたおかげで何となくその可能性を思いついたのだ。

「オエ、どうして俺らを見張っていたのか? 英志の件に関係ない訳ねぇな。最初に気づいた時は叔母さん家から帰っていた頃だった。それにあの涼太という人の妻である以上、無関係とは思わなねぇな」

「それだけじゃないよね、小林さん」

「えッ? まだなんかあんのか?」

 もちろん、一つの大事なことだ。むしろ、先のことより気になっていたことだ。

「警察に警戒していながら、どうして署の隣にある路地にいたのですか? 旦那さんは署内に着いた頃は僕たちが見ました。探しているのなら、当然署内に入るですよね?」

「そ、それは.……」

 彼女は突然、何かに怖がっているかのように両手を震え出して、また逃げ場を探すようにあちこち眼が泳ぎ出した。

「あの涼太さんは、何故英志に面会をしに行ったんですか?」

「知らない。私はただ署内のお騒ぎを聞いて入っちゃいけないと思った。路地にある窓から旦那がいたかどうかを確認していただけだ」

「臭いな話しだぞ」

 確かに信頼できなさそうな話しだが、それより今知りたいことはその涼太という人はこの事件に関係があるかどうかということだ。

 その二人はいきなり、このモテそうもないボサ頭やストカーめの怪しい女を呼び合って揉めながら、僕が手にある僅かな情報に振り返ってみた。どう繋がればいいか苦労したけど、涼太という男は5年前から英志と関係している……

 この場面には僕の好きな推理ゲームにで難しく考えず、柔軟で簡単にいった方が答えが見えてくるはずだ。

 5年前に同じ集団の二人は、今の場面で繋がるなら、関わるなにかの理由がる。その理由なら……

「あの涼太さんは……英志を通報した人だったりして?」

 二人は僕の言葉で沈黙に沈んでしまう。ガーンと口をあんぐり開けていたトシさんはともかく、小林さんの表情ではまた当たりだと知らせてくれた。正直、半分賭けをしてそんなことを言い出したにすぎない。

「そ、それは……はぁぁ、その通りよ」

 ここまで追い詰められていよいよ話す気になってくれたらしいのだ。これは新しい手掛かりとなることに期待できそうだ。

「私知っていることだけだけど、あの人は突然ある手紙が届いて警察にあの中川・英志の事を通報したんだ……」

「その手紙の差出人て分かりますか?」

「わ、分からない」

「内容は?」

「知らない。呼んだ後直ぐに処分したのさ」

「心当たりは」

「知らないと言ったでしょう? その日からあの人は何故かによく家から出入りしていた。無職の癖に、他の女と遊ぶ時と違って深刻な顔で帰ってくる。おかげで娘に余計な心配をさせちゃって」

 とても複雑そうな夫婦関係のことをさておき、手紙のことはさすがに気になった。これで、あの涼太という人と絶対に話さなければならなくなったのだ。

 その手紙の内容さえ教えてくれれば、事件の裏に近づかせてくれるかもしれない。

「最後に聞きたいことですけど、小林さんは五年前の高巻・明という人の殺人事件について何か知っているんですか?」

「……知らない。あの人は確かに当時の少年不良集団の一人だったとは知ってるけど、それくらいだ」

「……そうですか?」

 トシさんもう同じことに気付いたみたいで、彼女に飛び出そう前に携帯の着信音に止められた。

「はい。美月か、どうした? ……な、何だと⁈」

 トシさんの叫び声に驚かせて、何かあったか聞き出した。

「分かった、直ぐそっちに向かう……敬、署に戻ろうヤバイことになったらしい。遺体が発見されたそうだ」

「な、何⁈ 誰の?」

「その……」

 トシさんは言わなくても、重い視線の先にいた彼女、小林さんを見つめることで分からない者はないだろう。

 本人は恐れ恐れとその席に凍えづいて下に俯いていた。

「トシさん、行こう」

「で、でも」

「ほっておこう……ああ言っても、辛いだろう?」

「あ、ああ」

「話してくれてありがとうございます」

 僕たちは直ぐに喫茶店から飛び出して署の向かう。もちろん、小林さんに聞きたいことはま山ほどあるけど、職場が分かった以上で直ぐに会えるだろう。

 五分も経たず、署に着いた僕たちは外でミズちゃんと佐藤さんと合流した。何があったかを直ぐに問い詰めた。

「私達はロビーでお兄さん達を待っていた時、いきなりあの受付のお姉さんが慌てて警部達を呼んでいた。仲田警部が丁度ロビーに戻って私達と話していたところだった」

「いきなり騒ぎになって署内から追い出されたのよ。先からあの路地に集まり、のトラテープで人を通らないように張っておかれた」

 佐藤さんが指した先に何人の警察がその場にウロウロしていたのだ。あの路地は確かに……

「そして高巻警部は着いたら、直ぐそこにいた仲田警部と話してあ、あることを聞いた……リョウタが刺されたと……それに、高巻警部が凄く怒っていたみたいだ」

 何かの反応をできる前に、二度と見かけたくない風景が目に入ってしまう。ドラマや映画でよく見ることと同じく、人にサイズ程の黒い袋が来た救急車に運ばれることだった。

 路地から出てくる二人の警部に気づかれたけど、多忙で無視される。

「あの喫茶店に戻る‼」

「と、トッちゃん?」

 僕はその時に、重大な過ちに悔やんでしまったのだ。多分、あの店へ行ってもその人はもういない可能性が高いだ。

 もう一度この一歩に進んだり、次の瞬間に振り出しに戻されたりする滅茶苦茶の事件に、手掛かりという希望が手の中から失ってしまった。

 その後、トシさんが彼女を見つけずに戻る。先生達は署から出た時に皆事情を説明して、今日できることは必死に考えようとする。もちろん、大体皆は小林さんを探し出す筋だった。

 しかし生憎、公園の店へ行って彼女はさすがにいなかった。店長さんに彼女の事を聞かれたら、スタッフの個人情報が警察でなければ、教えられない決まりがあったらしいだ。町中に探しても時間の無駄だと判断して、最後に中村先生と中川さんは仲田警部に相談してみると提案をした。

 警察署をまた訪れたら、二人の警部はさすがにその展開で忙しくて僕たちに構う暇がないそうだ。

 後はできることがなくて、また明日に会ってみることになった。

 今日は色々あり過ぎて皆はグタグタで解散をする。高山兄妹と佐藤さんが中川さんを家まで迎えるとして、中村先生が友達の弁護士と会う約束したらしい。

 一人で寮に帰ることにした僕はベッドに転がりたくてしょうがなかった。

 英志に約束したのに、皆との仲が埋まって近づいたように感じたのに、唯一の手掛かりがあのように前に消えてしまった。そもそも僕はできる事はあったのか……

「……しっかりしろ!」

 ピタンと僕は両側の頬を引っぱたいて気合いを入れた。もう自分を情けてばかりして何もならないのだ。

 まだ一つの手掛かりが残っているだ。それは小林・多寿子だ。彼女を見つければ、きっと何が分かるはずだ。どうせあの嘘くさいこと言って、まだ何かを隠しているに違いない。

 明日、どんな手でも仲田警部に会って話すべきだ。まずはそれからだ。

 着替えを済ませてベッドに転がった時、トシさんたちからのメッセージがないかを確認したくて、いくつかの不在着信の知らせを見た。両親かららしいだ。

 疲れ果てるけど、確かに今朝連絡の約束はしたのだ。掛けてみようとした時、いきなり着信音がなった。お袋がもう一回掛けてみたらしいくて緑のボタンを押す。

 携帯はこれほど進んだのかに感心したのは、お袋のハッキリ映る映像が画面に現れた。この間言ったビデオコールの奴だろう。凄いとしか思わない。

「あっ! 出た出た。どこにいてたんだもう。五時からずっと掛けていたのに~」

 五年後のお袋の姿を見ていいか少し悩んでいたが、さすがに気になって仕方なかったのだ。そもそもこの事件を解決して過去に戻ったら、〃今〃の記憶は綺麗に忘れてしまうオチもあるかもしれない。

 しかしあのお袋のあまり変わらない顔を見たら、その心配は綺麗に消えてしまった。シワが確かに多少に増えてけど、まだ20代後半にみえるだろう。時にしているその若っぽいな髪型は凄く似合うとは思った。

「ごめんごめん、今日は凄く忙しくて中々出られなかった。実は丁度今掛けるところだったんだ」

「フーン。まぁいっか。講義に頑張ってるならお母さん許してあげるよ」

 ぎこちなく笑いながら、全然行ってないことはさすがに言えない。そもそも営業のことさっぱり分からなくて、未来の僕のノートを見て難しい単語が次から次に並べて、事件を専念した方がマシだと。

「ってお袋元気?」

「いっぱい! 達ちゃんはさ、連休で来る時に朗報があるって。もしかして孫ができちゃったかも!」

「ㇸㇸ。いいね」

「敬ちゃんはやっぱり来ないのか? 朗報は家族皆一緒の方がいいよ」

 机にあったカレンダーを見ると、三日連休は確かにあったと分かる。その前に一周に『決勝戦』ということが書いてあったけど、帰れない理由があっても僕に不明だ。

「ま、まぁ考えとくよ」

「お願いね! あッ、ちょっと待っててお父さんに変わるよ」

 こんな時間なら、きっと外で運動しているだろうと思った。親父がどのように変わったかを楽しみながら、変な音が耳に入る。

 何か軋んでいるというか、高くて嫌な音だった。親父は何かを修理しているだろう。

 遠くから声を聞いて廊下の外からキッチンに入ると、僕は自分の目を疑った。

「やぁ敬、元気かい?」

 携帯に映っていたのは、笑顔で挨拶をしてくれて筋肉の付いた体の、優しそうにかっこいい親父だ。しかし、彼は何故かにキッチンに〃歩いて〃入った訳ではない。

「お、親父……か」

「お父さんだよ? どうした急に。あんなショックを受けた顔で? あぁもしかして椅子のタイヤ―の事か? 明日友達にみてもらうよ。心配すんな!」

「……なぜ……親父はなぜ……」

「敬?」

 抑えろ。抑えるんだ。僕はそれを自分に言い聞かせた。既に知っているはずだから。

 でも、さすがにみて聞きたい。言葉を飲み込んでも、誰かが説明してほしい。

 その瞬間、正直に叫びたくなった。もうなにもかも分からなくなってしまったからだ。

「敬、大丈夫? おいどうした?」

「……もういいよ……」

「えッ? どういこと?」

「どうしたの、あなた?」

「いや、敬の様子はちょっと」

 英志の事件とはいえ、あんなバカな事に悩んでばかりして僕は今まで何をしてたんだ?

 今親父の事を見ると、やるべき事は間違ってたかと疑問を抱いてしまった。あの僕の強いのイメージである親父、毎日うんざりして一緒にジョギングしてこいと言われて、お母さんを体重もないようにあっさりと持ち上げてチュウした彼は……何故……

 もう何もかも聞こえなくなって頭が魔白になる。

「ご、ごめん。疲れてるだけだ……明日にまた掛けるよ」

「ちょっと待って。光花、悪いけど、二人にしてくれる」

「……いいよ。敬ちゃん、今日はたっぷり休んでね?」

「はい……」

 それで僕と親父は二人切りだ。正直、何を考えればいいか分からんくなってしまう。未来に来た本当の理由は何なんだ。すっかり英志の事件を解決だと思い込んでたけど、ひょっとして親父の〃今〃の状態を分かって過去で防ぐのか。もしかして、特に意味はそもそもなかったか? 僕は英志の逮捕がのショック狂うって高校学校の記憶を忘れたか?

 その時僕はもう……なにもかも分からなくなってしまったのだ。

「明日って19日だよね。事故を覚えて悲しいかい?」

 ……

「いいか、敬? あの時のお父さんの言ったことを、覚えてる?」

 その後、親父は僕にある言葉を言ってくれた。僕を心底から大きく揺さぶって、ある意味深い悲しさを与え、ある意味大いなる希望を与えてくれる。

 その言葉のおかげで、僕は今からやるべきことはハッキリとなった。


                 ***


『日昇街区の最近目撃される少年集団による暴力行為が更に悪化なりつつあり、昨夜にある店の店員が今朝病院に運ばれたのです。かの店の店長に証言によると、その店員さんは閉店時間はに姿を突然姿を消え、翌朝に店の前に重傷を負ったままで発見されたとのことです。郊外の皆様になるべく町の中心に近寄らないように申し上げます。それに、日昇街区の皆様はもし不審な人を目撃したら直ぐに警察にお呼び下さ――――』

 朝食中俺達はニュースを見ていたテレビがお袋に消されたのだ。

「朝ごはんが不味くなっちゃうよ」

 お袋の事とそのニュースより、今日の事で頭がもういっぱいだった。実行する案は実に朝から始まる。親父は先から会議の準備をしていて、どうしても家から車で出かけるのを阻止しないといけない。

 幸い、それは極めて簡単な事だ。息子としてダメなことをやったかもしれないが、今はそれをとても気にする事はない。

 段階その一、親父は車で真朝町へ向かう。それを防ぐにはやるべきことはただ一つだ。

「光花、車の鍵を見てた? どこにも見当たらない」

「ううん。鍵掛けにあったと思うけど?」

「いない。ズボンのポケットやテーブルにない。完全に消えちまった」

「おかしいようね……この間に冷蔵庫の中にあったけど、そこ探してみる?」

「そもそも誰が冷蔵庫に鍵を置いとくかね?」

 トボけながら、突っ込まずにはいられなかった。俺は朝に誰より早めに起きてその鍵ともう一つの何かをカバンの底に確保したのだ。しかし、これだけで往生際の悪い親父は簡単に諦めないだろう。

「あまり時間がないね。予備のを使おうっか」

 二つ目の鍵がなければ、二人共がきっと怪しく思うだろう。だからその二つ目の鍵に手は出さない方が合理的だった。

 でも俺は決まった案が実に親父をある事を思わせる事だ。

 今日はその会議に行かない理由を。

 予備のキーを持って部屋から出た親父は、玄関で靴を履いて出かけようとしたら、段階その二と出くわす。

「な、なんだこれ?!」

「どうしたの?」

 リビングのテーブルから二人の声が聞こえて段階その二は成功したらしい。

 そうだ。俺は昨日の真夜中にキッチンのナイフを使ってタイヤをパンクしたのだ。

 どうか、絶対にバレないようにと願って叶えても、許しくてくれよ親父。

「それに四輪綺麗に!」

「一体なんでそれをするようね? 悪戯にしてもやり過ぎる。そこは任して! タクシーで行きなさい」

「あぁ、任せて悪い」

「いいから早く早く! 風のように走れ!」

 次は最後となる段階その三だ。親父は家の中に駆け込んで片手に電話でタクシーを呼んでいた。事件のきっかけとなるは親父は真朝町に行くという事なので、収束″の決まりで自分の車でもタクシーでも同じことが起るはずだ。

 というわけで、俺の思い付いた案はただ一つだ。会議の参加に対する最悪の展開を偶然にして積み重ね、出ない方がいいと親父に思わせる事だ。でももちろん、それは簡単な事とは言えないのだ。

 仕事熱心である親父の上に、真朝町の交通アクセスは残念ながら本当に便利だ。どうぜ、俺だって三日連続で気付かれないように行き来してきた。だから向かう方法、いわゆるどうやって行くの次には会議の参加理由だ。

 それに、思ったより大成功みたい。

「どこだ? あの資料は確かにここに置いといたんだ……光花! リビングのガラステーブルを片付けとかしたか?」

 まだ外にいたお袋はいやと答え、親父はますます不機嫌になる。

「どうした親父?」

「時間もないのに、突然大事な資料が見つからない。赤色にファイルをここに置いといたはずなのに。敬は見ていないかい?」

「ごめん、知らないよ」

 役者の見込みあるなと中に自慢をしながら、親父に平然としてそのように嘘を付いた。もちろん、その赤いファイルも俺のカバンの中にあって今晩にソファーのクッションの下に置いておこうかとまだ考え中た。

「あの資料がなかったら、会議に言っても無意味だ。はぁぁぁ、お父さんいい年になってんのかな? 課長に連絡してみようっか。もう遅刻してしまうし、誰かに庇ってもらおう」

 タクシーの手配をやめて上司に連絡した親父を見たら、できたと言ってもいいのだろう?

 お袋はまた入って俺は事情を説明する。すぐにソファーのクッションを覆って、そこに隠さなかったことにありがたく思わせてくれる。手伝いふりをして流石に見つからないと親父に報告した。

 まだ電話中の親父は親指を立てて大丈夫だよと伝えてくれる。

 テーブルを片付けてくれるお袋がキッチンの向こうに消え、僕はまだやり残している事に直ぐにかかった。

『今日は西光街・一丁目バス停で待ち合わせhしよう。お袋はご飯を作ってやるそうだ」というメッセージをアキに打ち、五分も経たずに『それはお楽しみだ。ではまた後そこで!」と返信が来る。

 とりあえずアキの事も大丈夫そうだ。今日は定期的にメッセージを通して様子をみる事にした。

「課長は理解のいい人で良かった。佐藤さんは庇ってくれそうだ」

「あら、それは良かった。佐藤さんに何かのお礼をして置かないと」

 凄く聞き捨てならない事が耳に入ったような気がするけど、それはともかく親父の事件が防げたみたいだ。これで、これでこの家族はあんな残酷な思いをしなくて済むんだ。

 正直、喜び過ぎてふと笑顔になる。

「敬ちゃん、遅刻知っちゃうよ! 早く行って」

「は、はい! 今日友達と帰ると忘れないでね。アイツはお袋のご飯を楽しみだなって」

「はいはい」

 これから二人でいっぱいトレーニングもできて苦しまずに、普通の家族として過という生きていくという輝かしい未来。それを想像をしながら、玄関に靴を入って扉から飛び出た。

「敬! 待って」

 親父に呼び止められる。正直、バレたと心配はどこかにしていた。しかし、そのはずもなくて家に振り返る。

「ほら、弁当を忘れたぞ?」

「あッ、助かった。ありがとう」

「今日はついていないお父さんと違って元気いっぱいじゃないか?」

「まぁ、いい天気だしね!」

「はは、そうだ。今日も全力で生きて来い!」

「おお!」

 その風に俺は親父と別れて学校に向かった。

 昨日と同じようななんでもない一日だ。数学は少し手強かったけど、未来に経験のおかげで英語に優秀したのだ。

 クラスメートとどうでもいい話をし、好きなアニメやゲームを語ってふざける。オムライスに小馬鹿されたが、正直に淡白として結構よくて構わずに一粒残さずに食いつぶす。

 化学はちょっと一眠りをしちゃって先生に怒られたが、おかげで体育がこの体でもよくやった。放課後に昨日バスと一緒に乗った奴にファミレスに誘われた。コイツ結構いい奴に見えるし、アキと英志と一緒にいつか行きたくはなるだろう。また今度にしようという約束をし、まっすぐにバス停に向かった。

 まだ早いかもしれないが、アキは昼の休憩に学校が終わってから直ぐに来るそうだ。

『待ってるから近くに行ったらメッセージするように!』

 誰もいないベンチに座って天井を見上げる。この四日間は最初にとんでもないこと次から次にあったが、今日がこれで過去での冒険の最終日だろう。

 無事に日が暮れてアキは助かる。それで英志はその事件に巻き込まずに、未来に逮捕されない。まだアキは完全に安全とは言い切れないが、もし明日はまだ過去に目覚めても、悪くない気分かもしれない。

 そうだね。このままでゆっくりと英志をその集団から離れて俺とアキと仲良くし、もう一回高校生活のやり直しだ。

「それも悪くない話じゃないか?」

 アキが留学から帰った後、俺達三人同じ大学へ行くのだろう?

 佐藤さんと高山さんはきっとアキのことが可愛がって俺とトシをムカつく。

「そう言えば、酔っ払ったアキも見たいね。結構面白そうだ」

 そのどうでもいいことを考えて携帯に返信が来たかを確認した。返信はまだない。

 きっとバスは混んでて携帯が見にくいだろう。

 この古物の携帯をいじりながら、ずっとそのバス停で待っていた。10も15分、それに20分まで経ってアキの返事はない。焦らずに待つことにしたが、そろそろ来るところ時間となってまだ返信が全然ない。

『大丈夫か? バスとか間違ってないね?』

 ……まだ返信はない。

 流石に心配となってきたけど、早とちりがしたくなくて電話をかけてみた。しかし残念、アキは出てこない。二回かけても同じ結果だ。

「オエオエ、冗談じゃないよアキ。返事しろ……」

 5分が経つと、嫌な予感をしてきた。もしアキはバスに乗らなかったら、それはつまり……

 考えたくもなく、俺は真朝町行きの次のバスに乗った。不安を感じながら、何回メッセージを打ってかけてみたのだ。しかし、返事が一つたりともなかった。

「くっそアキ! お願い出てくれ……」

 その呟きが隣のおっサンまでに聞かれてらしい。俺、密かにアキが無事でいてくれると願う。

 バスは愈々町に着いたら、俺は決まった行き先に向かっていった。アキはそこにいなかったら、まだ無事と同じことだろう。走って走って、ドンドン倉庫のあった場所に近づけば近づく程、予感が段々強くなる。

 近くにあったコンビニを通りすがった時、今は見たくもない牡牛野郎と出くわした。彼は倉庫方面から来ているみたいだ。

 まだタバコ臭い上、微妙にオロオロしているにみえた。真っ先にいたまでに俺だと気付かず、俺が視線に入ると、アイツはパニックになってしまった。

「て、テメェ! な、なんでここに?」

「時間がない、退け!」

 牡牛野郎を押しのけて道に続いたが、後ろからある声に止まる。

「涼太、どうした?」

 コンビニから清永のやつは出て来た。ポケットの中に両手をしまい、プラスチック袋が腕に通してぶら下がっていた。

「き、清さん! まだいたのか?」

「買い物してたんだ。何だその顔」

「あ、アジトに……英志は……あの英志は」

「話にならんな。アバよ」

「き、清さん! 待ってくれぇぇ」

 あの言葉に、背中毎にショックのような電流が走っらせ、震え上がる。あの二人を構う暇もなくて、見えてきたサインへ速度を上げた。着くと、見覚えのあるカバンが目に入る。

「アキ! いるのか! 返事しろ、アキ!!」

 俺は一所懸命アイツを呼び続けても、草の高い周りに探しても、どこにも見当たらなかった。倉庫に近づけて見れば、突然足が何か引っかかって転がった。立ち上がってそこに視線を移すと、気が失ってしまいそうだ。

 あそこに倒れていたのは、10年代半ばぐらいの少年との同じ大きいさの物だった。ちゃんと服着ているのに、その衣装は血まみれだ。人間の体にあるはず部分は、何度酷く叩かれていくつかの歯まで失ってしまわれた。

 それに、その″物″は息は流石にしていないのだ。

 昨日、この物は俺に向いて馬鹿げたで笑い、自分の正義とか語る少年だった。でも、今俺の目の前にあるは単なる遺体だ。

 正確に、高巻・明のだ。

「……違う……こ、こんなはずじゃ……」

 一秒か1分かを判別できず、手の激しい震えが止まず、俺はいつの間にしゃがみこんでいた。まだ目を疑いながら、遠くから迫ってくる救急車の音に立つ耳がなかったのだ。

 次の1秒か1分、どちらにせよ俺の頭の中に何かが壊れてしまい、全力全霊で湧き上がった全てを空に解き放った。

「明ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 叫びたくても声はもう出ない頃に、ハッキリでなくも、後ろから誰かに抑えられたようにことを感じる。

 薄く見えていたが、いくつかの人影が前に現れてジロジロ見つめられていた。しかし、身体そこにいても俺はとっくにどこかに消えてしまったのだ。

 それは、ある声が微かに耳に届くまでに。

「明……明!!」

 覚えている限りに、その声は高巻警部だろう。彼の声は少しずつ俺のこの今の錨となった。目を済ませば、彼は他の二人の警部の抑えられている。ゆっくりと、彼らの口から出ていた言葉は脳に届いた。

「落ち着いて下さい、高巻君!」

「落ち着くモンか?! それは俺の弟だ!」

「誰か抑えるに手伝って!」

 高巻警部は喚いて踠いていたが、三人の協力で彼はパトカーの中に閉じ込めれらた。その扉を蹴飛ばそうとして車を大きく揺らいでたその先、ボロけたサインに見たような覚えのある少女の人影も見える。直ぐに消えた後、警察たちに日昇警察署まで連れて行かれた。

 二、三時間がかかったと思う。正直、今には時間の感覚はちゃんと働いていないのだ。

 尋問というのは、心地よく着席にお茶を頂きながら質問を答える、決してそのような綺麗事ではない。

 洗いざらいにどうしてそこいたのかなどよなことを聞かれ、身柄などを確認された。

 もちろん、英志の事について一言すら口から出していない。

 俺は無関係だと判断したら、夜の9時辺りに解放された。所持品を渡されて邪魔の野良犬みたいに追い出される。

 結局、アキの死を防げなかった。まだ彼の遺体を見てショックだったが、必死に考えている。どうすればいいかと考えながら、何となく公園まで足を運んだ。

 彼を救えないのは悔しいが、次には英志が未来に逮捕されないように真犯人を突き止めなければならない。一生にかけてアキに謝っても足りないと惜しんでいたが、過去に飛ばされたのは英志と親父を――――

 チララン チララン チララン チララン

 俺の思考を遮った着信音を聞いたら、お袋がかけいてるそうだ。こんな時間で酷い心配をかけただろう。

「ごめん、おふ――――」

「一体どこにいてたの? ずっと連絡しようとしたのよ……」

 お袋の口調が妙だと思っていた。怒っているより動揺というべきだろう。そこまで心配をしてくれて当然だ。

「本当にごめん……今すぐ」

「敬……れ、冷静に聞いて……グッ」

 その時は気づいた、お袋はむせり泣いていたのだ。どれだけ心配していてもそこまで泣く事はない。例えお袋でも。

「……事項があったのだ。お父さんは、グッ、今晩のご飯の買い出しに行って車に衝突されたのよ。今入院している。緊急状態だ……今すぐに言うところに来なさい」

 事項……緊急……

「まだ間に合えるかもしれない。せめてお別れの言葉を言いに来なさい」

 足の動きじゃなく……失うのは……人生……か。

「ごめん……お袋……ごめん……俺の。俺のせいだ……」

「何を言ってるの敬、敬!」

 俺はいつの間に携帯を手放してお袋の声を聞かなくなった。何もかもが失敗に終わってしまった。

 アキを救えず、親父に命を落とよっぽど大きな事故に巻き込んでしまい、それに英志の無罪を証明できる方法も思い付かない。

 この人生の一度きりのチャンスを、全てちゃんとする機会を一瞬にして消えてしまった。

「このまま、消えればいいんだ……俺」

 俺の願いを叶えるように、突然公園が濃い霧に包めれてゆく。もし、俺はこのままで無に落ちたら、楽になるのだろう、

 この出来損ない、浮き上がりダメな俺は。

 そのように霧に飲み込まれて周りに何も見えなくなってしまう。おそらく、俺は永遠にこの悪夢から目覚める事はないだろう……

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