第二章「復讐劇・被害者:高巻・明」

 ようやく例の中川さんの顔を始めてみる。

 第一印象からにすると、確かに優しそうな人だと思った。ちょっと長い茶色の髪は少し穏やかな感じがするけど、未来の僕より鍛えそうなからだに顔にあった傷跡を見た上、何か面白い昔話しをしてくれそうな人じゃないかと。

 皆と挨拶を交わしながら、彼の言動を観察した限りに皆が言ういい人が分かってくる。けどその一方、この明るい雰囲気のある人が殺人罪の容疑を認めたそうだ’。

 外見ばかりにこだわって何も分からなくなり、本人と無関係の僕から別の見方で何かの手掛かりが得るかもしれない。

「どうした敬? 何か緊張しているみたいだけど?」

 いきなり僕に集中した彼にまた高難度の質問だ。一人称から皆の呼び方を覚えながら、自然に答えようとする。

「い、いいえ。ちょっと英志が心配だけだよ。アハハ。ごめん」

「? それだけ?」

「それ――だけ?」

 聞き返した僕に皆の怪しい視線に浴びられてまった失敗を感じた。

「コイツは昨日からこの様だ。後回しだ」

「そうようね」

「賛成」

「言い方はともかく、時間が惜しいから僕も同意」

 一応彼らは友人だろうと未来の自分に聞きたくなった程、4人の発言からのダメージで落ち込んだ僕は片隅で縮む。

「英志、ぶっちゃけ言うぞ。高巻・明って名前知ってんだろう?」

「あッ! 何で俊雄がその名前を……」

 ストレート過ぎるかもしれないけど、トシさんの言葉からそれくらい動揺する中川さん反応は「当たり」と皆の顔に書かせた。

「仲田さんから聞いたのよ」

「仲田さん? 誰?」

「高巻警部と共にこの事件を担当している者」

「そっか。会ったことがないね。話すにはいつも高巻さんだ」

 仲田さんから警部の弟の事を聞いて無理もないなと納得したのだ。

「でも明のことまで分かって凄いよね皆......ハアア」

 お手上げの中川さんが敗北の溜め息をついて、懐かしそうに微笑む。だが、その微笑みの向こうに寂しさを感じられる。

「彼は僕の幼馴染に近い存在だった。子供の頃から一緒に学校を通い、辛い時にいつも傍にいてくれた人だった......それに、誰より優しくて正義感のある優等生で輝かしい未来のあった彼を僕は…...僕は......」

 その台詞を言い切れない中川さんの身震いを見づらくてたまらないのだ。あまりに堪えれなくて皆に目を逸らしたが、彼らは友人から目を放さなかった。高山さんが中川さんの顔にあったガラスの辺りに手を置き、その甘くて温もりに溢れる声で彼の名前を呼ぶ。

「大丈夫よ。ここにいる」

「......僕は彼を殺した......僕は唯一の友、この世で僕を大事にしていた誰かの一人を醜くて容赦なくを......」

「中川君......」

「英志、お前はそうするはずが――」

「真実だ俊雄‼」

 轟いたその叫びが前と違った落ちづきの声色ではく、躍起に絶望のある口調と言うべきだ。ガラスの向こうに会った警察官も驚いて真っ直ぐな背伸びを崩した。

「僕は彼を殺したんだ! あの時僕、オレのことに構わなかったら立派な人生を送っただろう。でもオレは殺したせいで家族を苦しい思いをさせた上、アイツの真似何かやりやがっていたオレはおこがましかったんだ!」

「......フフ。良かった。愈々本気で話す気分になった見たいよね」

 高山さんの言葉の意味が分からなかったが、自分と違ったその意味を把握した皆も同じうなホッとした表情を浮かべる。

「全くだ。俺みてぇに話すのも想像はしなかったけど、これって本当のお前か?」

「前の方が可愛いとは思うけど、美月ちゃんがいいなら私から文句無し」

「お前ら......オレはこれまで言ってまだ納得しねぇか?」

 ドンと立ち上がって両手をテーブルにバタンと叩きつけた。

「納得訳がないでしょう⁈ バカ‼」

「美月......」

「いいか英志君? 私はもう泣き飽きたの。出来ることがあるかどうかがさっぱりだけど、最後まで諦めたりはしない。君が諦めても君の分まで希望を持ち続ける。君の彼女として、友人として、何よりあの優しくて強い中川・英志を取り戻したい高山・美月ととしてやってみせる」

「そしてそのコイツと同じ気持ちの俺らも言わせてもらうぞ。お前の過去に何かあったか分からないけど、あの気に食わない警部といい、今の情けないお前といい、ただこの状況がいけ好かないから何とかしてやるよ」

「......兄妹揃って勝てないか......はは…...ハハハハハハ!」

 僕と同じようにそのやり取りについていけなかった佐藤さんがただそこで彼を静かに見送る。出番もなく、挟む義理さえないその気持ちが僕にもある。

「少しでも、話してくれる? 何が手掛かりになるのか分からないけど、英志君が何も喋らない限りに本当に何もできないのよ?」

「降参だ。時間がそんなにないが、大体でいいなら」

「ここは私と松原君に任せてくれないか?」

「そうだな、俺らよりコイツらの方が適任かも。な、美月?」

「そうよね。二人共、よろしく」

 名探偵ちゃんはともかく、どうして未来の自分にそんなに頼るのが分からない。怪しまれたくないから前に出たけど、ここで何を聞いても力になれないだろう。

 高山さんが佐藤に席を譲って、トシさんがその隣のスペースに僕に開けてくれた。そして中川さんが話を始める。

 概ね、仲田さんの言ったことを最初に聞いた。しかし、今回は中川さんからの視点という違いだ。

 事件当時、明さんと会って揉めた事で中川さんは気を狂って彼をただぶん殴りを繰り返す。被害者の明さんが名前を呼んだ時、彼が暴行を辞めてそこから去っていった。途中で明さんのカバンを持っていたのが分かってそのままを捨て、近くにあった公衆電話で警察を明さんの居場所と状況を知らせたそうだ。

「ちなみに中川君、君はその時どうして被害者と現場にいたの?」

「僕はその日......あの倉庫で用事があった。明はその時突然現れて僕に話しかけたんだ」

「偶然ってことよね......」

 その後、家に帰って母が息切れの自分の見たら何となく事情を分かったらしい。

「お母さんが僕の迷惑に慣れていたが、その時顔を見る事だけで何があったか分かったと思う。女の勘より母の勘という奴かな。隣人の人達に何かの取引をしたらしいけど、たまに彼らにお金を出しているのが見ていた」

 苦しそうに聞いていた高山兄妹は重大なことに気づいてないの反面、僕と佐藤さんが同じことに引っかかった。しかし、僕が言おうとしたこと見た彼女に止められた。

 理由はすぐに分かった。

「やはり裏金が回されたか」

 向こうのドアから、険悪の雰囲気を溢れ出す邪悪の笑みのお兄さんが現れた。まるで狩人のような目付きに偉い人に見える大人という感じだ。身だしなみが凄く整えるのは隙間を見せないと表裏一体かもしれないのだ。

 皆が名前をあげなくても、ドアの枠に寄りかかっている彼は高巻警部だと分かった。

「テメェ何でここに」

「いけない。罠だったなの?」

 佐藤さんが彼の発言に何かを分かったような口調だ。

「あの通報だけでコイツを疑うのは上層部がうるさくなっていたのさ」

 ゆっくりとした足取りで僕たちを近づいてくる警部を見て、トシさんが二人の女性の前に出た。

「だからお時間をちょいっと頼んだんだ。保護者か知り合いの面会で何かいい情報が入るかもしれないだと。今見たいに」

「ぐぅ!」

「お兄さん......」

「これで貴様の容疑が固まったぞ中川。ちゃんと指紋の検査の許可がおりやすくしてくれて感謝する」

「高巻さん......お母さんは――」

「んなこと俺にとってどうでもいい。貴様が殺人者となったのは両親のせいな訳がない。貴様は元から腐っていただけだ」

「テメェいい加減それ以上言うな!」

 トシさんが何時でも警部を襲い掛かるかにみえたけど、さすがにそれはないだろう......

「いい加減するのはお前達クソガキだろう? まぁ今日はちゃんと働いてもらったからご褒美ぐらいはやっていいか。そうだね…...面会は禁じようと思ったが辞めておいてやる。そこの罪人の死刑まで存分に話すといい。だが、今日はもうお時間だ。中川、ご飯を忘れろ。尋問に付き合ってもらうぞ。クソガキがもう帰れ」

 その風に敗北感を知らせた僕たちはあっさりと面会室から追い出された。

 仲田警部も出掛けてそうで今のところに警察署も用済みだし、外で今まで分かったことに振り返ってみることになる。

「クッソー。完全にあのデカの手に踊っちまった。このままだと英志はマジに救えねぇ」

「どうかしら。先に高山君が珍しく当たったみたいけど」

 二人の兄妹が佐藤さんの言葉が分からずに、練習したかのタイミングで同時に首を傾げた。この二人、笑芸能に向いているだろう。

「高巻警部は中川君に罪を擦り付ける話だよ」

「「ええッ? マジ⁈」」

 また同じタイミングで驚いた声を聞いたら、自分が突っ込んでマジでお金が払ってくれそうだと確信した。それに慣れている佐藤さんが何の反応もせずに僕に振り向く。

「松原君も気づいたでしょう? あの矛盾を」

 首の骨が折れそうな勢いで僕の方に振り向いた二人に応答をしながら、何の事情でこの面倒な二人の友達になったかに思いを巡らせていた。

「多分なか、英志が事件の全貌を隠されていそうということですか?」

「こ、コレに慣れるしかなさそうよね」

 その愚痴を漏らした佐藤さんにこっくりと頷く兄妹を恨みそうになる。言動を真似するに諦めた僕と同じく、皆がもうこれ以上突っ込まない気分がなさそうでありがたく思ったのだ。

「まぁそれはともかく、松原君の言う通りよ。ほら、中川君の言ったことをちゃんと考えたらおかしいと思ったことはなかったかしら?」

 頭をくっついた高山兄妹がしばらく考え込んで、予測通りに妹の方は声をあげる。

「あッ! そういえば」

「オエずるいよ美月」

「お兄さんが鈍間って美月のせいじゃないよ」

 チッチッチと指を左右に動かす高山さんが今の状況でこの風にふざけていいか聞きたくなったが、ほっておくことにした。

「俺も分かるように説明しろ!」

「ハアァ、しょうがないよね。私に任せて美月ちゃん。仲田警部の話覚えているの? 検案書にあった思慕時刻の問題点の」

「あぁ、何となく」

「仲田さんの話によると、被害者が緊急状態までに虐待を受けてから犯人は何故かにそれを一時的を辞めた。その後何分がたって被害者がもう一度襲われて亡くなったらしいよね?」

「ほい」

「でも中川君が先にちょっと違うこと言ったないかしら?」

 先あったばかりの会話を必死に思い出そうとしたトシさんがスバリと閃きそうだ。

「そう言や!」

「そうよ。英志君が襲ったことを認めたが、その後我に返って警察を呼んだのは彼だ。でも警部の話によって被害者はその後の強襲に息絶えたのよ」

「そもそも罪を認めた中川君はそのような嘘をつく必要はないと思う。おそらく、彼は大きいな勘違いをしていると思う」

「そっか! だから佐藤さんがあの時僕を止めたんですか?」

「そう。英志君を下手に混乱させれば色々分からなくなりそうかもしれない。流石に高巻警部が盗み聞きをしているのは気付かなかったけど」

「ちょっといいっスか?」

 トシさんがは手を上げたまま、小学生のように真面目に質問を聞き出した。

「英志って勘違いしていると言ったけど?」

「そうよね。話もあんな風に途切れちゃったけど、中川君は多分弟の高巻さんの死亡原因が救命に間に合わなかったと思い込んでいるかもしれないよ。流石に本人と確認しないといけないけど、それは明日まで待つしかない」

「すげぇよ佐藤! そこまで分かって」

 名探偵ちゃんの顔は少し赤くなってぎこちない微笑みを浮かぶ。可愛いとは思いながら、トシさんが行けてると肘で脇を軽く突いた。

「だがな、そうなるとあのデカはやっぱ必死に犯人を探してるせいで英志に犯人をするつもりかよ」

「――無理もないかもしれないけど。家族を失う気持ちとはそれほどのことのではないかと」

 気づかずにその本音が自分の口から逃げ出した僕が、同情混ざり謝罪したくなる顔の皆に見つめられている。

「つ、つい思ったことだけです、アハハ」

「まぁ敬君はが流石にそいうことに気づくでじょ」

「似たような気持ちか。納得しないがアイツの動機が分からなくもない」

 この変なやり取りから確信したが、この人達が友人として近いというか、この体に宿っている人が違うと気づかない程鈍いというか、どちらにしてもよく僕の言ったことで深い意味をその風に取るのは感心した。

 つまり、改めて深いレベルに意味不明な言葉だを聞いたということだ。

「とにかく皆、今からどうするの?」

「そうよね......その矛盾だけに取りついてばかりして英志君の力になれないと思う。ねぇ、丁度先思いついた事だけど、まだ過去の英志君に関して分からないことが多いでしょう? だから、英志君の母に話してみない?」

 いきなりの高山さんの冷静な提案に僕たちはお互い顔を見つめ合い、問かかったのがトシさんだった。

「いいか? 小母さんに迷惑じゃねぇか」

「今に話しをしたら何かを教えてくれるかもしれない。小母さんもきっと英志君に何かをしてあげたいし、私達と協力してくれるかもしれない」

「恐らく、高巻警部は中川君と家族にあの矛盾について黙っている可能性もあるよね。本人が気づいていない訳がない」

「エイちゃんがそれを分かったら抵抗するからだろ」 

 それで次の行動が決定される。付いていっていいかまだ半分迷っていたけど、ここまで付き合ってさすがにある程度気になってくる。

 未来の僕の出席率に心配だけど、多分〃彼〃も中川さんの為ならだと思って一緒に行くことに決めた。

 住所が分かった高山の案内でバスに乗る。この時間では空いているおけがで皆が席に付けた。20分ぐらいがかかりそうで、ずっと黙ったままでは隣の佐藤さんに大変だと思って軽く会話を振った。

「先にトシも言ったけど、佐藤さんは凄いね。ずっと考えていたけど、名探偵っぽかったんだ」

「えへへ、そうかしら?」

 トシさんの時と違って、僕に対して尊敬に込めた笑顔だった。友達に見せる笑顔の類だし、未来に友人にある程度ぶん殴りたくなる。

「私、元々ミステリー系が好きよ。ほら、あの裁判アクションの奴」

「おッ! 知ってるよ。僕、結構流行っていたんださ! 特にライバルキャラが好きなんだ」

「分かるゥゥ。イケメンだしクールな推理の回り方が堪らないのよ」

 オタク発見と顔に書いてあった兄妹をいないことにしてしばらく佐藤さんとその楽しい雑談タイムに入った。そして彼女は、可愛く髪を耳にかけて僕に真面目な話を投げる。

「私、実は将来にゲームのシナリオ作家になりたいの。何本の作品が楽しみ、そのスバリって気持ちを自分の思いづいた謎で人々に与えたいのは夢なんだ。でもこうしてそのつまらない経験が活かせるとは流石に想像もしなかったのよ」

「つまらねぇとは言えねな~」

 奇襲攻撃だ、その風に思ったのは突然横から口を挟んだトシさんの掛けた言葉なのだ。

「それも佐藤なんだぞ。頭いいし、優しい女できっと喜んで読む人だっている。少なくとも俺はその一人でいるつもりさ」

「高山君......」

 反対もの同士が引き合うというのは正にこの二人だ。最初にあった時その風に揉めあうのを見て想像もしなかったが、これを見たら手上げするしかない。

 もしこの女性が気に入ったなら、力不足の過去の自分からお詫びをするよ、未来の僕。

「しかし、迷惑じゃないのかな? 私って皆にそんなに近くはないけど、付き合っていいかどうかが迷っちゃってて」

「先輩。英志君の力になりたいと思うの? それか、自分の作品の材料にもなれそうから付き合っているの?」

「流石に先方よ! 美月ちゃんの辛い思いを考えることだけで落ち込んじゃうのよ。だから私に何かできることがあったらとトッちゃんに、あッ!」

「え、恵理!」

 そのとても興味深い反応で僕と高山さんが寄せて印象交換を開始する。

「どれぐらいと思うの?」

「呼び捨てで少なくとも3か月ってところかな?」

「前置きもなくて本当に裏でって感じがプンプンするよね」

「フムフム」

 僕が本気で言っていたが、高山さんの反応にしてはとっくにお見通しという自慢げな顔だった。

「お、そこの二人辞めろそういうの!」

「だ、だからそうなんじゃなくて」

 やれやれ素直じゃないなと僕たちがもう少しからかってから目的地に着いてバスに降りてゆく。後ろにいた二人の会話を聞いてしまうのは不味いとは思ったが、アンテナを張らせてもらう。

「理由は何だあろうと私は先輩がいって心強いのよ。だからあらためてよろしく先輩」

「美月ちゃん......あり――」

「いやぁでも、お姉さんの方が読んだ方がましかな?」

「同意」

「もう美月ちゃんからかわないでよ! っていうか松原、君女性の会話に入っちゃダンディーじゃないの!」

 バスが停を後にしたら、僕たちは穏やかな一戸建てが次々と並ぶ近所に入った。

 「中川」と書かれたあった一軒に着いてインタホンを鳴らしたら、家の中から犬の吠え声が聞こえる。

  2、3分に、僕の胸辺りにギリギリ届く背の低い女の人が出てくる。綺麗な黄金の金髪が疲労に溢れる顔が見かけによらない。何日に睡眠をあまり取れていないのは目の下のくまが物語り、高山さんが視線に入ってあの人は全力を絞った笑顔を浮かぼうとした。

 中川小母さんは中に通してもらって僕たちをリビングのソファに案内してくれる。お茶に遠慮して話題に入ろうとしたが、追われているかのような素早さで駆けてくるワンコちゃんが高山さんに元気な挨拶としてベロンと。

「フフフ、久しぶりミキ」

「この子超可愛いよ~。私、秋田犬大好きよ」

 佐藤さんが手を伸ばすことだけで、ミキが全力で来いと言われてかのようにびかかった。その隣のトシさんまでに涎が少し飛んでしまった。

「突然ですみません小母さん。しかし、どうしても話したいことがあったのよ」

「いいのよ。美月ちゃんも大変でしょう?」

「そうだけど、小母さんこそはどう?」

 俯いた中川小母さんの悲しさを感知したミキが飼い主の傍にお座りだ。頭を膝元に置いてコロコロ動かしているのは慰めの意図に違いない。

「こうならないように何回祈ったのかもう分からなくなったのよ。あの子は色々あったけど、私は殺人を育っていない......英志が心を閉ざしてる。母の私が何も出来なくて親として失格だ」

「そんなことはない! 小母さん、気持ちが分かります。けど、英志君に私達は諦めていない」

「俺たちは英志の力になるためなら、五年前の彼をもっと知らなくちゃ。辛いとは思うけど、教えてくれませんか?」

「五年前?」

「正確に言うと、息子さんと高巻・明さんのご関係が知りたいです」

「高巻......」

 小母さんがミキにちょっといいと許可を得てから、上階に上がっていく。しばらくして新聞と卒業アルバムらしい物持ってテーブルに置いて置いた。

「この子の事よね?」

 新聞の記事は例の事件の物だった。これは皆にとって初めて弟の高巻さんの顔を知る。僕と同い年にみえた。

「あのデカと真逆な印象だ」

「ㇸㇸ、僕もそう思う。何かいい奴みたいね」

 彼が卒業アルバムに一ページを捧げたらしい。何人の生徒のコメントからにすると、モテモテの優等生の上、本当に頭に来る程のいい奴だった。それを読んだら、変なことに気づいて声を上げる。

「これって英志に似ていないのかな?」

 僕が持っていたアルバムを佐藤さんに譲ったら、彼女も異変に気づいたように眉を寄せた。

「本当。中川君の成績はともかく、これと一致する性格にみえる。彼は確か何かを言ったっけ?」

「アレだ。彼の真似をしておこがましいとか」

「そうそう! うーん。ひょっとして......いや、それはないよ」

 佐藤さんは頭を左右に振ってアルバムを閉じる。記事を手に取って読んでいるところに、トシさん小母さんに問かかる。

「もしかしてこの明って奴を知りませんか?」

「あの頃、息子の人生はあまり詳しくない。あの頃の英志はむしろ遠く感じていたのよ。危ないことに巻き込んでいたのは何となく分かったのに、向き合う義理はないと思い込んでて」

「どうしてそう言いますか?」

「そうね。話していいか分からないけど、英志の力になるために彼の事をもっと理解しないと」

 僕には友情その物に詳しいわけではないけど、ある程度未来の僕と皆が中川さんの素性を知らなくても友人とかよく言うのは不思議だと感じた。

 今まで彼らの観察に限って友達らしくふざけたり、からかい合ったりするものの、友達らしくなくて相手の過去、本音、欲望や夢などがまるで不要とで言えるかもしれない。

 前から気になったそのことを気に留めながら、小母さんの話しを聞こうとする。

「英志は五歳になった頃に父は私達を捨てられたのよ。私は不要物として見なされ、英志を息子として認めないと言い去った。後で分かったけど、あの男は愛人がいていたらしい」

「酷い......英志君はそんな事に......」

 僕たちはともかく、恋人の高山さんがそのようなことが知らなかったらしいのだ。

「私はそれでも英志を精一杯でいい子として育てようとした。しかし、そのせいで仕事ばかりして彼とあまり時間を一緒に過ごさなかったのよ。小学校の時に、私に黙って酷くいじめられたらしい」

「あのアイツが…...いじめですと?」

「ええ。私に負担を増やしたくないと。しかし、中学校の時にもまた同じ子にいじめ続けられていた。それは悪化になって、ある日私の息子が麻や血と泥だらけで帰ってきたt。その日から始まったと思う」

「何がですか?」

「あの子は世に心を閉ざした事の。あのいじめの問題を解決したのは英志自身だった。そして態度も更に悪くなって不良として知られ始めたのだ」

 小母さんが話せば話すほど声だけで、心が折れそうになるはが分かっていた。

「私は......私はそれを分かった時点で自分のせいにしちゃったのさ。私が作った環境の影響でそうなってしまった。彼は帰ったら何事もないように振る舞っていたけど、噂をよく耳にしていた」

「という訳でその時の中川君の周りにいていた人等にご存知しではありませんね?」

「うん。そしてあの日に帰った彼を怯えて震えながら、そのつもりじゃないと繰り返していた。私に誓っていた。その様子と言葉で最悪の事態を想像したくなかった。警察はその後に来て色々聞かれましたが、私は当然」

「息子を庇ったスね?」

「もちろん! せめてそれくらいしてあげないと思って隣人までに沈黙を買ってしまった。これで英志は心を入れ替えることが出来たらと思って...…しかし、息子をダメにしたこの愚かな母の罰が待ち受けていたのよ」

 その言葉を聞いた高山さんが席から立ち上がって小母さんの隣に座り、震え出すその両手を抑えて和やかな笑顔で安定した声を出す。

「小母さんは正しかったとは言えません。自業自得とでも言えますけけど、英志君の事をいつも思ってくれましたよね? そういうには親失格などではありません。息子の為に一人でずっと頑張ってくれまして、寂しかったですね?」

「美月......ったくお前」

 トシさんは前と同じような自慢げの笑顔になった。涙を抑えるに失敗した小母さんがしばらくそこで泣きじゃくったら、僕たちは失礼をする。

 玄関で見届いてくれる小母さんは最後に託したことがあった。

「どうか息子の心、こじ開けて頂戴.…...美月ちゃん達ならできるでしょ」

 微笑みで答えた高山さんが頷き、近くにあった喫茶店僕たちは食事をする。朝からずっと何も口もせず、走り回しばかりして体力が落ちていた。

 激しい訪問の後の僕たちは色々思い詰めていただろうけど、トシさんがどこかに落ち込んでいるようにみえる。それに気づいた佐藤さんが様子を窺った。

「アイツはいじめを受けたせいでヤバいことに巻き込まれるなんて......想像さえしなかった」 

 .....。

「お兄さん......」

「同情は要らんぞ美月。むしろエイちゃんをぶん殴るまでこの屈辱は収まらないさ」

「トッちゃん......」

 ……僕は突然苛立ちを抑えきれないところだったのだ。心底から皆に怒鳴りたくてたまらないけど、まだ中立の立場でいないといけないと感じる。

「恵理、アノ話しで何か分かったのか?」

「そうよね」

 佐藤さんは目を閉じて指で顎を擦って自分に世界行きだ。

「色んな角度から第三者の存在があると思う」

「ソレって⁈」

「中川さんの話を聞いて引っかかったのは中川君の突然態度の変化だ。自分で起こしたとは考えにくい。そして今の事件も考えたら、裏で誰かが動いているような感じがしないの?」

 それぞれの食事がテーブルに来たら、サラダを頼んだ佐藤さんがチェリートマトをフォークでいじり出した。何かの動きをしないとちゃんと考えられないタイプだと思わせながら、可愛く思ったのだ。

「またうちの叔母さんの話になるけど、私は高巻君の事件を教えた時にもう一つのことが言われたの。関係ないだと思ったから何も言わなかったけど。あの時、真朝町に不良集団の暴力行為があちこちに通報されたそうだ」

「不良集団なの?」

 三日前、すなわちまだ高校時代にいた僕がその朝にニュースで同じ話を聞いたことがあると思いだした。

 強盗、暴力行為、近所迷惑などを犯している少年達は話題になっている。警察も動き出しているが、彼らの動きが読めないせいで中々解決できない問題だ。

 親父も真朝町に行かないようにと言われた。

「それ、知っている。確かに5年前に大問題だった」

「でもソレってこれと何の関係があるって言うんだ?」

「憶測だけど、もしかして中川君がその不良集団のメンバーだとしたら?」

 その推理を告げた佐藤さんに僕たちが途方をくれる。まずは名探偵気取りで罪のない人を救おうという話だったが、僕の時代にその繋がりがあるとしたら、状況が更に深刻になるだろう。

 これと関われば関わる程僕はどうなるかと心配しながら、佐藤さんの話を聞き続けた。

「色んな辻褄が合わせるのよ。中川君が逮捕された通報、5年前の危ない周りが起こした態度の変化、それに高巻警部との繋がりも説明できるでしょう」

「アイツはあの時その不良集団をかき回してんなら確かにな」

「しかし、ただの憶測じゃない佐藤さん? 確かに英志が僕たちに分からない事が多いけど、話をそこまでとは」

「確かにそうよね。これ以上仮定で動いたら損害がでるかもしれない」

「じゃ、また明日もう一度英志君と話してみよう。色々分かったら次の動きが見えるはずさ!」

 新たな決心が高山さんの目に入る一歩、佐藤さんはまだひたすらに何かに悩んでいるように考え込み中の態勢、名付けて名探偵ちゃんモードをまだ崩さないままだ。

「それは賛成だけど、いいか皆? 英志君に矛盾のことを話さないようにしよう」

「えッ? なぜだ?」

「今の問題点は彼の記憶と事件に詳細の一致しない所だ。高巻君の名前を出したらあの反応を見たでしょう? 中川君の精神状態は今とても繊細だ。下手に矛盾の事を教えてらどうなるか分からないから、その話題を振るのは私に任せないかしら?」

「分かった任せたよ先輩!」

 即答で以外と佐藤さんの顔に出ていた。自分も驚いたが、比べてトシさんも呑気に賛成を出す。

「お前の才能に賭けるぞ。このオタ乙女よ」

「乙女は要らない! ......否定しないけど」

 僕まで賛成をせざるを得なくて、今日はここまですることにした。駅に向かって後ろに歩く僕にトシさんが話しかけた。

「何かとんでもないことになっとる。あの二人に言いたくなかったが、お前も感じるだろう?」

 言われなくてもトシさんが言いたいことが確かに感じたことがある。追われているというか、影から監視されているような気配が感じるのだ。

 まるで僕たちの動きに感づかれていたような気分だ。

 普通に僕はそういうのに気づかないだろうけど、この体が感じるだと思っていた。

 戦いに慣れて、微かな動きを読み取るスキルのような物だろう?

 どちらにせよ、確信したのは僕が落とされた危ない事態だ。展開の流れで僕の未来は状況がこれほど深刻だ知っているとは思わない。しかし、ここまで分かったら第一の疑問は最も気になるのだ。

 僕はどうして未来に飛ばされたのだろう?

 この事件を解決するなら未来の僕は僕より適任だし、皆の足を引っ張りしてる自分はどんな理由でここに立たせるだろう?

 頭が割れそうになるまで考えても、答えが見えない僕は駅で皆を見送ったら、寮に戻って休むこといにした。


                  ***


「そ、そんなに見つめないでくれるかな?」

 襲われた後に俺の具合に心配し、近くの喫茶店まで連れてこさせた高巻・明はいるとはごく不思議な気分だ。

 英志の逮捕と俺達が巻き込んだゆく奥深い事件の切っ掛け、今こうして俺の前に座っていて何事なくブラックコーヒーを飲んでいる。流石に気になってしょうがないのだ。

 もちろん、何もないようにコイツと常に同行した方が効率的な犯行対策だと思っていた。だが、今15歳の俺は普通の何も知らぬ男子高校のはずだ。

 とりあえず何かの繋がりを作った方がいい思い、帰る前に連絡先ぐらい確保しようとしていた。

「ごめん、まだちょっと動揺しているんだ。しかし、改めて言うけど高巻ってよくあの場面でどうどうと参上してくれたんだな」

「そんなことはないよ。たまたま英志君を探してて偶然で見かけただけさ」

「あの中川だっけ? 確かにあのどうでもいいことであれ程暴力を振ってきるなんて」

 その言葉が俺の口から出ると、腹にまだ残っとている微かな苦しい暑さと同じように痛んでしまう。まさか『今』の英志はあのようなことをするとは流石に想定外だ。

 留置所での彼の言葉ははたしてこういう事を意味していただろう。

「何回言って済まないけど、どうか彼のことを事情があると理解してほしい」

「事情って?」

「それは…...僕から言う権利はないけど、辛いことが次から次に遭遇したと思ってもらいたのさ」

 情報が欲しい俺にに高巻の曖昧な言葉が多少じれったいと想ったが、それ以上を追求のが控えた。

「しかし、その口調からだと彼との昔からの付き合いじゃない?」

「まぁ、幼馴染というものだ。僕達は実に小学校からお友達さ」

「凄いね。だからってあの時彼を止めさせてくれたんだって訳か」

「それは......まぁ、確かに英志君のためにもやったけど、僕は不正を見逃せない柄だよ」

 凄いこと言ったものの、高巻は恥ずかしそうに余所見をしって頬をかく。このシーンなら普通の高校生はコイツに褒め言葉を浴びるが、俺にとって重大な問題点としてみなす。

「それって、割とヤバいな事に首を突っ込んで人を敵に回されないか? 例え、誰かの恨みを買うとかってとこ」

「そうよね、兄によく言われること。僕ってそんなに強くない体質だけど、親から受け継いだ悪い癖かもしれない」

 照れ臭そうに右腕を掻く高巻はよそ見をする。兄の事への尊敬とでも言うべきかもしれない。

「兄か......」

「そうそう。でも実は兄さんが何と、警察の人なんだ! 父さんと同じ」

 コイツは何故殺害されたかを少しみえるのだ。妙な正義感で不正を正そうっとする高校生の傾向じゃないかと思った。

 昔の自分も色んなアニメやゲームに夢中で世界を変えたいって何回頭に浮かび上がる下らない妄想っと同じだろう。

 とはいえ、ボクシングを始めたのも好きなキャラを目標しったり、トレーニングの時にでも好きなアニメのBMGを聞いたりする俺は見下す権利はないかもしれない。

 むしろ、今出た話題の方が気になった。

「へぇぇ、兄が警察だって。かっこいいね」

「えへへ、よく言われる。彼の正義感が親父に匹敵すると思う。悪を積極的に打つ!って」

 その言葉を全力で突っ込みたかったが、テーブルの下に両手を強く握り締めて感情を抑えた。

「それでも高巻に同じ正義感ってヤツがないってこと?」

「僕は母さんの方に近いかな。母さんと同じように弁護士になりたいのさ。あまり力のない僕にそも道で自分になりに悪を積極的にって」

「そっか......いいこと言うね」

「えへへ。でもおかしいね。何だか松原君が結構話し安いんじゃない?」

 相手をおびき寄せる奇策だよ少年、カウンターファイターの俺の特技みたいなものだ。相手を自分のペースに捉えてこっちの掌に動くと同じように、試合でも会話でもちゃんと適応すればこの風に役に立てるのだ。

 それに少し自慢を思いながら、段々遅くなってきたと気づいて帰ることにする。

 高巻はバス停まで送るよと言ってくれて途中に与太話をしんがら、出来る限りに情報を探っていた。

 途中に妙な動きを感じて、カーブミラーで人の影を見かける。見えた限りとその行動パターンだと一つのことしか考えられない。まったく、美少年って本当についているよね。

「高巻お前、モテそうなタイプだけど?」

「え? いきなりどうしたんだ松原君?」

「そこに隠してる女の子に聞いてくれれば?」

 わざと向こうの角までに届けるくらいの声を上げて、怯えているシカの赤ちゃんのようにおずおずと出てくるJKが現れた。

 大人のある俺は今高校生のからだで言っていいかどうか迷ったが、結構愛い繊細にみえる女の子だ。

 背中まで伸びる艶々な黑髪で細めの背の小さい少女は、キュートなピンク色のカバンや桃色に染めた爪が彼女の少女趣味を示し、大きいなハニー色の目で俺達弁解をした。

「ち、違うから。今回はたまたまだよ......」

「今回?」

「ハァァ。だからいつも辞めてくれると言っているんだ小林さん」

 高巻の言葉で小林という子は角の壁に隠れようとする。正直に、15歳の体にいる20歳の男の視点で、可愛いと思ったのだ。

 普通にこのような少女っぽい子が普通にモテるだろうが、彼女は何故かにコイツの前に形無しらしい。

「でもでも、明君がこれを喫茶店で落としちゃった」

 小林は高巻が使っていたハンカチをカバンから取り出す。ポケットにないと確認した彼が軽く頭を下げてもらいにいったが、ストーカーちゃんが一歩を引いた。

「洗ってからでいいの? 地面から拾ったし」

「ハァァ、そこまで気にしなくていいさ。お願いします」

 下さいと手首を前後に振った高巻に小林がゆっくり近づいたら、優しく彼の掌にハンカチを置く。

「僕を好きになってが凄く嬉しいけど、ちゃんと答えたでしょう? お願いだから他の相手を探してくれる? そもそも美人の小林さんが僕なんかに釣り合わないでしょう」

「そんな事ないってば! 何で明君が分かってくれないの?」

 困りそうのあちこちみる小林の視線が僕に着くと、誰だと顔に出た。

「そこの彼は?」

「今日出会った友達だよ。バス停まで送っているのさ」

 俺達がいつ友達になったか覚えていないが、コイツは今その風に考えてご都合だ。

「その征服…...今日は失礼します.....」

 お礼をして立ち去る前に、その子は何気なくパシャッと携帯のカメラで俺の写真を撮った。

「オエ! 今のそれの去を要求!」

「お断り」

 サッと振り返って向こう側に去っていった彼女に追いかけようと思ったが、そろそろ帰らなかったら両親に心配をかかってしまうので諦めった。

 別にこの痩せっぽちの俺が気に入った訳がないだろう。

「また似たような事を言うけど......」

「彼女にも色々あるってかい?」

 バカにされそうな笑いをした高巻バス停までについてもらってメール交換を頼んだ。

「えッ。別にいいけど?」

「今はあまりお金がないけど、今度助けてくれたお礼として一杯を奢ってやるよ」

「一杯?」

「コヒーだよ。コラ、未成年の癖に何を考えているお前!」

 そのように突っ込んだ俺が何とかセーフをしたのだ。

「ハハハ。松原君って面白いね。是非是非」

「そうだったら、明日はどうだ? また放課後に来るさ」

「いいんじゃない? 別の喫茶店を紹介するよ」

 その約束で俺はバスの乗っていく。

 一番後ろの席に座って今日の出来事を頭の中に整理しようとした。英志の遭遇から高巻との出会い、この一連の出来事が親友を救う始めの一歩となるだろう。

 今足りないのは情報だが、どうやって手に入れるのが問題だ。知っているのは犯行現場と被害者だけで、合理的に行動を決めるのは困っていた。

 生徒で行動が制限がある上、事件の現場から遠く住むのは不便過ぎろのだ。

 あの奇妙な記憶のおかげで犯行が何日に起きるのも分かる。

 正直、ハードル高いの問題だ。親父の事件と高巻の殺害が同じに起こることを阻止しようとしたら、大事なのはタイミングだ。

 今朝に親父を外に出るのは何とかやめないと行けない。続いて、できるだけその一日ずっと高巻と行動した方が安全だ。

 犯人さえ分かれば、事情に何とか備えられる。しかし、この場合では失敗の余裕はないのだ。

 厄介なのは現在の英志の不測性というのだ。高巻の殺害を阻止するには当日の英志行動パターンも把握したいのだ。

 でもその情報は――――

「ぐッ!」

『そうよ。英志君が襲ったことを認めたが、その後我に返って警察を呼んだのは彼だ』

『あの子は世に心を閉ざした事の。あのいじめの問題を解決したのは英志自身だった。そして態度も更に悪くなって不良として知られ始めたのだ......あの日に帰った彼を怯えて震えながら、そのつもりじゃないと繰り返していた。私に誓っていた』

 これはまた......

『憶測だけど、もしかして中川君がその不良集団のメンバーだとしたら?』

「ハーハー」

「おえ、大丈夫?」

 目覚めたら、俺の前にあるお兄さんが心配しそうに俺を見つめていた。バスにいた人々も全員息切れの自分に何があったと視線で問い詰めてくる。

「ご、ごめん。ちょっと疲れてますアハハ。もう大丈夫です」

 半分ぐらい納得してくれたお兄さんは自分の席に戻りながら、俺に振る向いていた。

 それを気にせず、今の記憶に集中をしている。

 確かにこの時代にあの不良集団の連続暴力行為が思い出したが、まさか英志がその一員の可能性とは想像すらしなかった。

 しかし、彼のその態度に説明をつく。ゲームセンターのアイツも恐らくその一人なのでしょう?

 それに、重大点は佐藤さんが言ったの英志と仲田警部の話にあった矛盾だ。俺達が英志を信じた甲斐を与えてくれた奇跡的な展開とでも言える。

 これで第三者がいたと確信してまだ分からなくても、取るべき行動を少し明確になった。

 まずは、英志が高巻を襲うのはすること。

 理由はまだ不明だが、高巻につけば分かるかもしれない。この時代に彼は英志の親友だから、何があったかが同行すればみえてくるはずだ。

 そして、真犯人の存在を突き止めること。

 英志の逮捕や高巻の殺害を考えたら、可能性は二つだ。高巻を狙った人か、英志に罪を擦り付けたい人か、そのどれかが恐らくこの事件の犯人だ。

 という訳で、ある程度英志にもついていく必要があると判断した。

 彼とどう接触するかは今晩に考える必要があるだが、とりあえずこの妙な記憶にまた助けられたそうだ。

「しかし、俺の未来の体がどうやって動いているのだろう?」

 俺は『今』に存在しているから、未来にある俺の体が勝手に動いたり、喋ったりするとは思わない。しかし、皆の反応からすると、そこにいる俺を向いて話していると断言できる。

 どれだけ考えても答えが全然見えない俺は西光街についてバスを降りた。

 夕暮れにやることが多かったが、家族と夕食の時間をゆっくり過ごすことにする。

 休憩に兼ねて俺が大事に人を救いたい決意を固めてくれたこの時間を大切にしたいのだ。

「もう大丈夫みたいよね敬ちゃん! よかった」

「本当だ。達也も帰ると言った程心配を駆けてんだぞ」

「俺の為何かにタツ兄が帰るなんて」

「あら、でもお母さんがそれに喜ぶよ。達也ちゃんに好きな鍋を作って喜んでくれるよ」

「それって別にいいよお袋。むしろ多数の料理ナンバー1だ!」

「メンチカツカレーがいいよ!」

 俺と親父はお互い拳をぶつけ合ったその光景にお母さんが嬉しそうに指を左右振った。

「お母さんを侮らないのよ。だって幻のメンチカツ鍋もあるでしょう~」

「…...何だそりゃ親父?」

「達也がお腹に言った時凄く食べたくなったおかしいな食事の盛り合わせだ。思い出すだけでお父さんに震えが止まらなくなるのさ」

「コラ!」 

 そのバカげた雰囲気で俺達は家族として食事を終え、しばらくの間テレビを一緒に見ている。

 ニュースに例の不良集団のが出たせいでお袋が不安がったみたいのだ。

「敬ちゃん、本当に真朝町に近づいちゃダメなの。危険な目に遭っちゃうかもよ」

「そうだね。特にこの体では......」「

 確かに今日のことを思ったら今の自分は損ないとでも言えるかもしれない。

 それに悩んで、あることを突然に思いついた。

「なぁ親父、夜のジョギングに行こうか?」

「おっと、いいこと言ったな。撤回は拒否するぞ?」

 目を輝かせた親父はどれくらいその言葉を待っていたのが俺はよく知ってるのだ。

 またお願いしたら、着替えた俺は家の外に親父と近所の一周をすることになった。

 軽くストレッチをしてからジョギングを始めたのに、ゲームで徹夜ばかりしているこの体は五分以内に疲れてしまう。呼吸の制御がちゃんとしても運動にまだ慣れていない今の自分を出来る限りに鍛えた方が合理的だと自分に言い聞かせた。

 しかし本心はもっとわがままとでも言うべきな物だ。単純に、俺は親父と一度だけ一緒に走りたかったのだ。

 この体のペースを合わせてくれて親父はこのだらしない息子を見て、誇りだぞと言わんばかりに笑ってくれる。

 この時代の親父はいつも俺にうるさい程一緒に運動しようと言いかけていた。しかし、俺は今度だとばかりに答えている。

 不思議に、今日の高巻に似たように僕はボクシングの愛情を親父から継げたものだ。

 親父はボクシングの世界に入りたいわけではないが、ボクサーの強さとかっこよさが憧れているらしい。俺と同じように大学でやり始めてが、暴力の嫌いお袋と恋に落ちてから辞めそうだ。トレーニングは今と同じように続けたが、息子が二人揃って運動が趣味ではなかったのだ。

 という訳で、親父はいつも一人でこの風にジョギングしたり、体操やシャドーしたりしてトレーニングを繰り返していた。

 事件の後でも出来るなだけ上半身の筋トレくらいは徹底的にやっていたらしいのだ。

 だが、あの事件があった時俺は気づいた。親父ともう一緒に走ることが出来なくなったとのことだ。大学に行って一緒にいる時間も少なくなり、トレーニングに付き合えないと感じていた。

 走るのが一番好きな運動の父の代わりに自分がやらないとと、どこかに受けるべき罰だと思い込んでトレーニングをし始める。その内、自己懲罰から趣味となって到頭成果を収める楽しさに悟った。

 英志と出会い、一緒についボクシング部を一緒に入って見て何時の間に二人がエースとでも呼ばれ始める。親父はそれにとても誇りを思ってくれたが、彼かれ遠ざける感じがしていた。

 もしあの時にせめて、一回だけでも一緒についていったらと何回自分に言い聞かせきた。

 でも今この奇跡的な機会が与えられた以上、言い訳などはもうない。

「もう限界かか?」

 息切れどころか、ゼーゼーと乱れた息をする俺に親父が聞いてきた。

「だ、だぁぁ、ダイジョブ! まだまだ」

「無理しなくていいぞ。ちょっと休憩でもしようきか」

「い、いや。親父の足を引っ張りたく、ひっはり――」

 喋れなくなりそう俺を親父が抑えて草に座れせてくれる。

 いや、正確に止められた自分の足が崩れて腰をドンと落としてしまったのだ。この事態はボクサーとしての恥だ。

「お父さんより先に自分に心配すれば?」

 隣に座って親父は背を草に倒れ、星空を見上げた。

「ここの眺め、最高だぁぁ」

 久々に帰ってないので覚えていなかったが、確かにここ星がハッキリみえる。その神秘的な輝きを眺めながら、深呼吸で息を整えよとする。

「最近、何かあったか? 敬が変わったと言うより、まるで別人の感じがする」

「それ――」

「親なら分かるぞ」

 俺を遮る親父はまだ空を見上げたままで穏やかな笑顔を浮かんでいた。この世の上、何の心配もない表情にみえる。

「〃俺〃って使ったり、どこかに切ない感じがして。そして今晩お父さんのジョギングを付き合ってくれて。何だか生きているような感じがするぞ」

「エヘヘ......生きているさ。この『今』に。精一杯に」

「そっか。青春してるならそれでいい」

 言われてみれば、今の自分は確かに『今』の頃よりそんな感じだ。前に生きているというより、存在していただけだった。でも事件があってアイツラと出会ってから俺は変わり始めた。なりたい自分が見えて、大事にしたい物もハッキリ分かったきた。

 親父は俺の言葉の意味を完全に理解しなくても、ある程度感じていてくれているのだ。

 親のカンというより、感応力の豊富さと言うべきだろう。

「しかし、ゲームばっかの息子は流石にそう格好つけてんのは辞めて欲しいよね。俺とか言ったり、妙に大人そうな振る舞いをしたりして」

「何だと⁈ このッ!」

 腕が俺の軽い一発を食らったら、スイッチの入った親父のはサクッと立ち上がって構えた。

「ほう~。やる気かい? いいぞ。お父さんが教えてやるぞ」

「チッ、教えるも何も! 侮っちゃK.Oされるぞ?」

 拳を上げた俺と親父は半分ふざけたスパーリングが行ってしまう。

 相手の詳細データによる、俺よりの何倍の強さ、体力の持ち主。しかし、カウンターの俺は割と有利な立場だ。

 少しガードを下ろして親父におびき寄せ、かかってくる右のストレートに立ち回って思いを込めた軽いボーディを放った。

 一歩下がった親父を驚かせ、警戒を固めさせたらしい。腕をぐっとくっついて左右にUの文字を書く態勢、ピーカーブーを認識してゆっくり距離を縮む。

 しかし、人を超えそうな迅速で親父が俺のガードに入って持ち上げ、熊式鯖折りで勝利を収めようとすしていた。

「オエ! 反則だ! レフ!」

「手助られんぞ! そぉぉれッ!」

 親父は背中を地面に倒し、俺の頭を拳で激しくぐりぐりと襲ってくる。

「諦めろ!」

「降参だ‼」

 皮膚が削られて頭蓋骨がさらけ出されるかと思った程燃え上るような痛みを耐えられなかったせいで勝利が逃れてしまった。

 この体は本当に不便だと思いながら、自分の未来の体が欲しくなってしまう。

 離してくれれば、親父は威張りやがっていたっ姿を見て秘密兵器を使うしか亡くなった。

「お袋に言いつけてやる」

「そ、それだけが‼」

 そのような下らない風景の終わりに、親子揃って夜に轟いたばかばかしい笑い声が近所に響き渡る。

 帰ろうと決まったら、俺は親父の歩き姿を見て密に涙を全力で抑えようとしていた。

 叶えられない夢が叶えたのはこのスッキリとした気分だ。感激に溢れて頭がおかしくなる程の狂喜みたいな感じだ。

「......ありがとう」

「? 何か言った?」

「......またトレーニングに付き合うぞっと!」

 喜んだ親父の隣に歩いてお家に向かった俺の意志が更に強くなる。

 希望を見始め、このチャンスを見逃せないのだ。

 必ず親父と英志を救うのだ――――


                  。。。


『今日はまた英志に話すんだ。署の前で会おう』

 目覚めた時にトシさんからのメッセージが携帯の画面にパット出ていた。

 返信は後回しにしてしばらくベッドの上に転んだままで天井を見つめている。未来に飛ばされてから2日目だ。

 目を覚ましたら、自分の部屋にいてお袋が作ってくれる朝ご飯の匂いにキッチンまで惹かれる、そのような朝が待っているとまだまだ期待していた。

 しかし、この無茶としか言えない状況に起きたのは怠く感じている。

 今日もまた中川さんに色々聞いて、新しい情報を分かってどこかに行くというパターンになるだろう。未来に来てから忘れた感情、無意味な日々や曖昧なコネクションがまた僕に滲み込んできた。

「彼ら、だたの自己満足でやっているのかな?」

 誰かの大切な人は悪に染まると信じたくないから現実から目を逸らす。

 僕は別に中川さんが犯人だと認めた訳ではないけど、抱いている疑問がむしろ皆が彼を救う本心だ。

 最初はあれ程凄い仲のいい友人達にみえたものの、何も知らない相手を危なそうなことに巻き込むまでして無謀だと思うようになった。もちろん、僕も含めて。

 何の経緯で未来の僕は彼らと友人となったとは知らないけど、結局僕の時にも同じことを繰り返しているだけだろう。未来の僕は『諦めた』という最悪の場合になったかもしれない。

 他の当てもなく、僕は警察署までに足を引きずっていった。

 前に昨日と同じメンツが待っていて、佐藤さんは面会の手続きを済ましてと知らせてくれる。

「敬君大丈夫なの? 何か元気なさそうよ」

「そんな顔でエイちゃんに会っては困るぞケイちゃん。ほら元気出せよ! エイちゃんの無罪を証明できそうなとこ見えてきたんだ」

「ごめん、昨日はちゃんと寝ていなかったさ。入ろうか?」

 建物に入った僕の後ろについてくる皆と一緒に面会室に案内され、あまり睡眠を取っていない顔の中川さんは既に待っていた。昨日の尋問が酷かっただろう。

 軽い挨拶を交わしたら、先手を取った佐藤さんは中川さんに早速問かかる。

「中川君、まだ色々動揺していると思うけど、三つの質問を正直に答えてもらいたい」

「ここにいる以上、嘘をつく必要はないだろう?」

「ありがとう。ではまずは単刀直入で聞くけど、五年前に町を乱暴した不良集団のことを知っているかしら?」

 高巻警部の弟の名前を聞いたと同じような反応の中川さんはまた僕たちの〃捜査〃の結果に驚いたみたいのだ。それは答えとなったとしても、佐藤さんはそれを気にせずにその集団との関わりを問い詰めた。

「……あぁ。僕は五年前あの集団のメンバーだったのだ。真朝町の治安を乱していた少年達の一人だったんだ」

 表情のない高山さんは感情を抑えているにみえたけど、恋人からそれを聞いて驚かない訳がないだろう。その反面に、トシさんは拳をしっかりと握り締めて不機嫌によそ見をする。それに気づいて俯いた中川さんは、自分への恥か友人をがっかりさせたか、どちらにしても落ち込んだ顔になる。

「成る程。では次に聞きたいことだけど、どうやってその集団の一員となったの? できれば詳しく教えて欲しい」

「言っておくけど、その集団が真犯人などのような妄想は諦めた方がいいんだ」

「中川君の話を聞きたいだけだ。お願い」

「……分かった……それはある人との出会いから始まったんだ。彼の名前は清永・正弘(きよなが・まさひろ)だ。あの頃の自分は、お父さんに拒否された程の情けないヤツだったんだ。学校に毎日いじめられてお母さんに心配ばかりをかけていたんだ。自分の存在は本当に不要だと思って自殺まで考えていたのだ」

「英志君……」

 その言葉にポーカーフェースが砕かれた高山さんは口を塞いで震え出した。しかし、妹に手を取られたトシさんいつもの威勢のいい顔や荒げる言動と違い、大人しくて寂しそうに中川君を見つめていただけだ。何かを言いたそうな感じがするけど、何かに縛られているように立ち尽くしている。

 さすがに自殺という言葉を聞いて僕もそこの彼に同情していたのだ。人生そのものは生きぐりしくて耐えられないという気持ちは全く分からないけど、中川さんが感じた孤独さは歩い程度理解している。同じことじゃないかもしれないけど、気持ちは痛い程似ているのだ。

 僕たちと大反対の佐藤さんが素直に中川君を聞き続けているとじは正直に驚いた。隠れオタクの彼女は強いという印象を与えてくれたのだ。

「日付を決めて、全ての準備をしたんださ。手紙まで自分の部屋に置いといて駅に向かっていたその時、僕は清永さんと偶然に肩をぶつけてしまった。挑発だと勘違いした彼にぶん殴られて弱虫まで呼ばわれてしまった。その時、血まみれの僕は殺してくれと……」

「……英志……お前……」

「しかし、その時清永さんは僕にある事を教えてくれた。その一言僕は救われた同時に呪われたとでも言うべきかもしれない」

『自分の人生を終わらせない程弱えなら、死ぬ資格はねぇ。欲しいと思う物はあるなら自分の手でしっかり掴め! それは自由だ』

「その時の彼の言葉に〃強さ〃という物が感じたのだ。あの時の僕は苦しいことばっかりしか知らず、自分が情けないと思い込んでいた。その僕にあの人は死ぬ資格はないと言ってくれるのは認めると同じようなことにしてしまったのだ……その時、清永さんを憧れ始めたのだ」 

 中川さんの浮かんでいた笑顔は妙に、誇りと悔やみが重ね合っているようにみえる。少し上を向いてあの時の事を顧みていただろうと無言のままにいていた。そして、深く呼吸をしてから話を続ける。

「その後、彼を探し回したんだ。あの時何をしにいっていたかをどうしても知らせたかったんだ。偶然に他の一員と一緒に見つかって声を掛けた。その日の事を話したら、彼は何を言ったと思う?」

『なら何でまだ生きてんのかよ? お前は死にたくなんかねぇ。お前は死によって犠牲者として認められたいのだ。この社会にはいつも誰かに認めることを誰だって求めているんだ。でも俺様そう縛られない自由を手にした。お前は今、本当に何をしたいのだ?』

 自分の価値を知りたいように強くなりたいと答えたそうだ。中川さんの口調や顔からにして、今の話は彼にとって人生の節目に違いない。彼が犯した罪、生きてきた‘罪悪感や劣等感その全てはそこからだろう。少なくとも、僕はそう思ったんだ。

「その後、彼は僕に誘ったんだ。自分のサークルへだと。彼は社会の鎖に縛られたくない少年達を集めて自分の生き方を共有してくれたんだ。その僕たち全員は似たよな傷物同士で家族を見つかったという感じだったんだ。共に強くなり、共に前を向いて生きていくこと。その内に不良集団とかに呼ばわれたけど、僕達にとってそれは社会に拒否されると一緒なんだ。慣れていたことだから、むしろそれは僕らを煽っていたんだ……それでいいいか?」

 漂ったこの重い雰囲気に佐藤さんは平然として最後まで聞いて、高山さんの様子を窺う。涙目で続けてくれと言わんばかり頷いた彼女を見て、佐藤さんはまた話を続けた。

「教えてくれたありがとう……中川君にそんな過去があったとは……その……」

「無理して何かを言う必要はないよ佐藤さん」

「は、はい。ちなみに、例の集団は突然活動を辞めたと聞いたが」

「ある日清永さんは町から離れると言ったんだ。その後僕達全員それぞれに道を歩んでいった。確か、明の件前日だったんだ」

「成る程……もうそろそろ時間だけど、後一つのことだけ教えてもらいたい」

「はい」

「中川君……高巻さん死因は何なんだ?」

 問われたことの意味が分からない中川さんの答えは、昨日僕達が至った推測の正誤を証明してくれた。その答えは、僕達の次の動きやこ事件の真実に一歩を近づいてくれたのだ。

「僕jが襲った後、病院に間に合わなかったに決まってるだろう」

 今まで彼が教えてくれた過去に潜んでいた闇に比べて、その最後の一言で皆が与えらえれた希望は目に輝き出す。全てはどうやって繋がるかはまだみえなけど、少しずつ真相は明らかになっていた。

 残りの時間は高山さんと中川さんに譲って、外で待つことになる。

 お出掛け中の仲田さんに通したいことがある佐藤さんはまた後で警察署に戻ると提案した。

 その間に高山兄妹と僕は手掛かりになる清永・正弘について町中に聞き込むと決めて、昼休憩を兼ねて公立公園で食事を済ましていく。


                ***


『次は真朝町・日昇街中通りです。真朝町公立高等学校、日昇商店街、真朝町私立公園に向かう降お客様はお降りください。ご乗車、有難う御座います」

 アナウンスが目を覚ましてくれたおかげで慌てながら、何となく停車場に降りられたのだ。

 久々で高校のクラスはどれぐらいつまらない物かを味わってしまった。筋肉痛も激しい上、何時の間に眠りに落ちたらしい。

 正直、思春期の体の体力消耗に感心するのだ。ボクサーになって以来にトレーニングを続けたら、どれだけ食べても余り太らないし、睡眠も6・7時間で平気だ。でも思い出してみれば、高校時代に疲れが取れないという感じはずっと永遠に続くような感じだったのだ。

 この体がどれだけ不便かを更に思知らせてくれる。

 授業中にまた〃思い出した〃ことがあって彼に聞いておかないといけない。彼は例の少年不良集団と英志の関係について何かを知っているはずだ。それに真朝町にいる限りに『彼』のことも調べないといけない。

 集団の頭、清永・正弘。彼はこの件と繋がりがあるか確認しないといけないこともある。

 俺の記憶の中の英志が言っていたことによってただ者ではないと割り出し、突然町を去ったことも気になる。

 バス停で高巻に会って、商店街に案内してもらった。

「日昇商店街? いいよね。喜んで紹介する!」

「あッ、いやそこくらいはやっぱり行ったことはあるよ。バイバイ祭りに毎年行くさ」

「おお! 僕も毎年行くんだ! もしかしてすれ違ったことはあるのかな?」

 コイツは本当に頭にくる程いいヤツと、そんな小さいなことで目を輝かせる姿を見て確信した。しかし、友達をからかい好きの英志と違って本当に単純に優しとでも言えるかもしれない。

 今日の誘いだって俺の奢りのつもりだったが、高巻は強いて奢ってもらうことになった。

「真朝町出身の襟度だよ」

 そのようなことを言い出したこのバカが、俺だって真朝町生まれだと忘れたかを疑わせてくる。

 去年にもらった物に興味をもった高巻と話し合ったその時、また似たような気配を感じた。視線をあちこちに移してあの子を探していたが、どこにも見合ったらない。

 しかし幸い、パシャっという音が耳に入った次第にスイカの置かれたテーブルの下にいると判明した。点主のお婆さんまで驚かせた小林は、怒鳴られた子犬みたいにそこから這い出た時、俺に見上げてまたパシャッと。

「何枚取ったら満足かよこのスト女子め!」

 プチ切れとなった俺はその携帯を取り上げて地面に叩きつっけるかと迷っていた。俺の目にあったその願望に気づいた彼女は慌てて俺の足にしがみつく。

「ちょ、マジに辞めて! し、死ぬよ! マジで携帯が亡くなったら死ぬのよぉぉ!」

「だったら説明しろ! 何で昨日から俺何かの写メをそんなに取ってんだよ? まさか俺は対処とでもなったのか?」

「ハァァ⁈ バッカな事言ってんじゃないよ! てかさっきの変な呼び方何だこの隠れ美少年好きの野郎!」

「何だと、このスト女子! 言っとくけど、ストーカーの腐女子を略してスト女子というんだ!」

「嫌だ何なんだあのダサい呼び方辞めて、本当に死んでしまうよ! もう携帯を返せ‼」

「説明の上、謝ってから返してやるよ。そもそも何で俺の――――オエ……こ、これは?」

 勢いで携帯の画面を見かけて開かれていたフォルダーの写真の内容を確認したら、寒気が背筋に走り出す。

「お前……」

「小林さん?」

 置き去った高巻の声に気を引かれた瞬間に小林は携帯を奪い返し、商店街から走り出そうとした。色々い聞きたい俺は幸い、その腕ギリギリ掴む。

「放せ!」

「いいや、色々説明してもらうよ。高巻、お前もだ!」

「えっ? 僕は?」

 もがいていった小林を逃せないと同時に、俺は高巻に睨み付けていた。携帯で見たことは本当だったらコイツも隠していたことは事件の手掛かりとなるだろう。でもそれより、高巻のアレに隠している事に本人の言葉に疑問を抱かせた。

「もう放せこのッ!」

「先に説明してもらおうか。あの写真は何なん――」

「オレの女に何をしやがってんだ⁈」

 商店街に轟いた声の主、どこかでみかえたような気がするヤツが俺達に迫ってくる。牡牛が角でかかったくるみたいな足取りで蹂躙されるそうだ。坊主頭に少しぽっちゃりとした体質に、鋭い茶色の目は殺気を放つ。

 オレの女といのは小林の事だろう。しかし、彼女はその場に凍えついて身震いがし出した。

 あの牡牛の男は俺の前に立ち、小林を気にせずに俺の襟を掴む。タバコ臭いだと分かるぐらい距離にに近づき、前と似たような流れで無意識的に腹を強く意識した。

「誰だオマエ⁈ なぜコイツの手を摑みやがってんだオラァ!」

 本来の自分ならコイツに立ち向かって平ちゃらだが、今のこの戦えない体ではキツいかもしれない。しかし、今はそれよりこの子を逃がす訳には行かない。十分に時間を稼げば警察が来るはずなので、踏ん張ることにした。

「この子に説明してもらいたいことがあるんだ。恋人なら変なつもりはないけど、この反応だと恋人ではなさそうだ。違うのか、小林?」

 彼女は俺も牡牛男も向かずに俯いている。俺のことも流石に怖くなったに違いないが、残念ながら、この子の手を離しては行けないのだ。

「ほぉ? いい度胸してんなオマエ。しかし、コイツにとっくに前から眼を付けたぞ。痛い目にあいたくなきゃとっとと離してどっかに失せろ!」

「それは出来ない!」

「やんのかオラ!」

「ぐぅ……」

 とんでもないことになり兼ねないこの場面に人が集まり始めていた。喧嘩っ早そうコイツならいつだって一発を放ってくるか分からないので、しょうがなくて小林を後ろに下がらせた。

 幸い、高巻は彼女を受け取ってくれる。気にしなくなって俺は牡牛の男と手を襟元から払って少し距離を開ける。

「喧嘩したくないよ! もう誰かが警察を呼んだんだろう。厄介なことになる前にここまでにしてくれ」

「警察だと? ハァ! オレにどうだっていいんだソレ! 彼女を寄越せりゃ大人しく帰んだよ」

「やっぱり無理か……」

 一歩一歩迫って来る牡牛男の襲撃に備えて構えを取ろうとしたその時、後ろから高巻の声が響いた。

「もうやめて下さい二人共!」

 突然に高巻は俺と牡牛男の間を挟んで両手それぞれを俺達に突き出す。

「お、お前!」

「何だコイツ?」

「暴力はやめてもらうよ! 松原君、君にも言ってるんだ!」

「な、俺にって⁈」

「レディを無様に投げ込んで何のつもりなの? 転んで怪我をしたらどうするんだ⁈」

 俺に耳に届いたコイツの言葉が本当かどうかは一瞬に疑っていた。この状況で下らない正義感を張っている場合じゃないはずだが、高巻が躊躇うもなくそのように俺に前に立っているのだ。

「そしてあなた、小林さんと何の関係か分からないけど、彼女それ程怯えているならほっておいてやって下さい!」

「おえテメぇ、バカか分かんねけど、そこをどけ」

「動きません!」

「んだよ? テメェも喧嘩売ってんのか⁈」

 吠えんだ牡牛の野郎がいつもでも高巻に飛びかかろうにみえて、俺はアイツに下がれと叫ぶ。

「僕は暴力に頼りません。ここも動きません」

 堂々と、高巻は牡牛の野郎に立ち向かって決心のある目で彼を見つめていた。怒れたかと思い、アイツを退かそうとしたが、彼を俺の手を払ってそこに立ち尽くすしていた。

 正直、コイツはどうかしているかと確信したのだ。

「んじゃ。どうする? そこに立ってオレにぶん殴られるって訳か?」

「いいや、これを使うのだ」

 高巻は自分に頭を指して自慢たらしい笑顔を浮かぶ。牡牛の野郎は爆笑して握り締めた拳で一発を一瞬に放った――――――が、高巻の顔の寸前に止まる。

「んじゃ見せてもらおうか……このクッソガキィィィ」

 腕を脇に戻し、今回腰の入れた本気の一発を放った牡牛の野郎は本気でアイツを襲うとした。

「高巻ぃぃぃ!」

 間に合えなくても、高巻に駆け付いたその時に牡牛の野郎の後ろからある声が聞こえてくる。

「そこまでだ、涼太」

 向こうから低くて落ち着いて声はあのその名前を呼んだ。現れるのは、未来の俺の同じ背の男だ。肩の後ろまで伸びる爽やかそうな黒い髪に、キツネみたいの灰色の目のあるその男はどう見てもタダものではなさそうだ。

 見える限りに体形は未来の俺より少し鍛えてそうだし、目立たない服装は偉大な雰囲気と一致しない。

 涼太と呼ばれた牡牛の野郎は大人しくなって舌打ちを鳴らした。

「救われたぞ。今回にな……オス、清さん」

 いきなりガキみたいに目を輝かせた牡牛やろうの言葉を聞いた俺は、早とちりしないょうに思考を控えたが、ひょっとしてあの男は……

「あの子の言う通りこれでやられたよ」

 高巻の真似をした彼はがっかりした溜め息をつく。

「警察がじきにここで現れる。あの少年と揉めあっている間に呼んだんだろ」

「なッ?」

 俺と同じレベルで驚いた牡牛の野郎は高巻に振り返り、殺すぞと言わんばかりに睨み付けた。

 多分、アイツは俺と同じように時間稼ぎと読まなかった。ただただ高巻はそこを立って堂々っとやられるかと思い込んでいたが、あの隙間で警察まで呼んだのは凄い判断力を示す。ただの自己犠牲ではなかったと自分も驚いた。

「それに手を出さない方がいい相手だ。名前聞いただろう? 高巻だと」

「高巻、高巻……ああ、あのデカのことか? アイツの親戚ってこと?」

 その時、俺はうっかりしてもし今そこで立っている男が例のヤツなら、高巻を危ないことに巻き込んでしまったと不安を感じる。

「あぁ、時々英志と見かける子だよ」

 英志の名前を聞い高巻はビクッとしたが、そのままあの男に警戒していた。しかし、立ち去ろうとした二人を見つめて、どこかに言いかけずにはいられなかった彼は呼び止める。

「英志君は……英志君には何をしたか分からないけど、彼に悪いことをさせない! 本当に英志君が大事なら、彼をそんなに歪ませるわかが――――」

「いいか小曽、俺様はあくまでも英志に自由を教えただけだ。本人は何をしようと自分の勝手だろう」

 高巻の言葉のおかげで分かった。背中を見せているあの人は間違いなく清永・正弘だ。

 不良少年集団の頭と、下らない生き方で英志の心を歪んだヤツだった。それに、事件の真相につながる人物かもしれない。

 彼の姿は記憶に刻んで後で調べることにした。

「高巻、大丈夫?」

 清永に言われた後その場に立ち尽くしていた高巻に声を掛けえ、我に返ったアイツはいつものバカげた笑顔にもどる。

「あぁ。ありがとう」

「むちゃなことしたのはさておき、彼女行っちゃったみたいね」

「そ、そうだよね」

 先の混乱で小林は逃げたらしいのだ。悔しが、清永に会える切っ掛けを作ってくれたに違いない。

「そうだな……高巻……お前……説明してもらうぞ」

「え? どんな――――」

 言い切れる前に、俺は高巻のフードの袖をまくって包帯と麻だらけの腕をさらけ出した。

 驚いた本人はどうやってそのことを知ったかをまだ分からなくて、離そうとした瞬間に警察が愈々現れる。

 普通には、出来事はこれまでかもしれないが、このとんでもない状況に誰が来た半分に想像した。鷹見たいの鋭い目に茶色の整えた髪、髭はまだ生えてない高巻・冬馬警部が人だかりを抜いて現れた。

 後ろにいた弟の高巻は傷を隠して俯く。だが、兄の方は直ぐに彼を見つかった。

「明、どうしたんだ? 不良集団の奴らは?」

「逃げた……」

「何⁈ どこへ? 何があったのか?」

 半分冷静を失ったように自分の肩をしっかり掴む兄に、弟の方は身震いをし出す。しかし、兄はそれを無視して彼をどんどん揺るがしていた。

 堪え切れず俺は前に一歩を出して彼を止めようとする。

「真朝大の方に行った……それを続けたら……痛いぞ、弟は」

「……誰か知らないけど、余計なお世話だ……明、後家で色々聞かせてもらうぞ。先輩!」

 そのまま高巻警部は女の人と一緒に商店街の向こう消えた。

 あの警部のその言葉に嫌悪を激しく感じながら、高巻に近くにあったカフェに連れていく。

 彼からの方も色々説明してもらわないといけないのだ。

 まずあの写真にあった、兄の高巻・冬馬から受けている虐待のことだ―――――

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