バベル — どこまでも高く

@LiSA_germ

序章:本日の収穫物はなしです。

 今日を乗り切れば配給日です。いざという時は昨日きてしまったので、鼠の干物はストックがもうないのです。二日ぶりに室外機の並ぶ路地で隠した罠を一つ一つ確認していく。せめて1匹。

 ―ぐぅぅ。― 室外機から漂う匂いで頭によぎるのは配給で貰うパンなのです。もはや唾はとっくに枯れているのだが、お腹はそうでもないらしい。屈んでは立ってを繰り返し路地を進んでいくと少しだけ辺りは暗くなる。重ねた手袋では細かい作業が手間取り、汗が手袋を伝う。

 —ふぅー、収穫は0ですか。 鉄の匂いで眉間にしわが寄る。この辺りの換気扇は所々が錆びて塗装が剥げている。そのためか発色の良いオレンジに汚れた水が隙間に溜まっている。

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