第3話 この想いを君に
終業式が終わり僕は緊張しながらも君との約束の場所に向かった。
すると、君は僕よりも早く来ていた。
君の無邪気な笑顔が今日程僕の胸を苦しめた日は今までなかった。
太陽の陽をバックに輝く君は電柱柱に身を預けていた。
そして僕の存在に気づくと両手を後ろに組んでゆっくりとした足取りで近づいて来た。
その時、僕の身体が鉛のように重くなり動かなくなる。
もうこうなった以上逃げることも誤魔化すことすら出来ない。
まるで君に見えない大きな手で身体を掴まれているような。
違う。
君は僕の心臓を掴んでいるんだ。
だからこんなにも息をすることすら苦しいんだ。
――あぁ、僕……頑張れ……
僕は自分に言い聞かせる。
だけど、君の優し気な瞳が今度は僕の瞳を見つめる。
まるで、私だけを見ろと言わんばかりに。
君の瞳に映る僕は僅かに震えて緊張している。
――人生の一大イベント【告白】
――やっぱり簡単じゃないや
――でもこれが最初で最後の告白になれば……
「どうしたの? いつもの君らしくないよ? 君はもっと普段落ち着いている人だったよ」
君は僕に無邪気な笑顔でそう言って目の前まで来る。
多分だけど、君は気付いている。
僕が今から何をしようとしているのかを。
だけど君は優しいからそれに気づいていない振りをしてくれる。
臆病な僕のために。
「まさか君から呼び出されるとは思わなったな。だから無垢な私に教えて。何で私をここに呼んだのか?」
あぁ、やっぱり君にはかなわないよ……。
その言葉と表情から僕は悟った。
君は僕の為に無垢を演じているけど、本当は全てわかってて。
そして君の中でその答えがもう決まっている。
そう思うと見えない大きい手が僕から手を離したように身体が軽くなった。
もう君は考えることすら必要としてないんだ。
――だったら飾らない気持ちで、僕らしくカッコ悪く伝えよう
――この想いを
「四月の始業式の日、恵梨香さんと同じクラスになって無邪気な笑顔を見せてくれた貴女に一目惚れしました。それから僕は恵梨香さんは高嶺の花だと思い何度も諦めようと思いました。だけど無理でした。恵梨香さんが素敵だから」
「うん。それで?」
「恵梨香さん。僕は恵梨香さんの事が好きです! 僕と付き合って下さい!」
桜の花びらが舞い散る中、僕は告白した。
君は僕が想いを伝えると気づいていながら気付いていない振りをした。
そして僕の緊張をほぐしてくれた。
もし君が僕からの告白を迷惑だと思っていたのなら、
きっとここまでしてくれなかったのだろう。
ありがとう恵梨香さん。
でもその顔をするって事は君はやっぱり嘘つきだ。
終わり
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【後書き】
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
どうでしたか?
告白の行方は3話のストーリーの中にありますが皆様が今思っている結果がそうなのではないかと思います。
今回は敢えてこのような形で終わらせました。
【告知】
原作【もう僕の隣には君がいない、だけど今は違う君がいる】の葵saidのストーリーを、明日から本作品の変わりに新作として同じ時間に更新していく予定ですので是非よろしくお願いします。同じく短編です。これは読者様からのご要望があり今回執筆する事にした作品となります。
【最後に】
連載中の
・とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います
・古き英雄の新たな物語
完結済みの
・もう僕の隣には君がいない、だけど今は違う君がいる
・無垢を演じる嘘つきな君が好きな僕に一度だけチャンスをください
共々今後とも末永くよろしくお願いいたします。 みつかげ
無垢を演じる嘘つきな君が好きな僕に一度だけチャンスをください 光影 @Mitukage
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