第22話 与作、てくてく歩く
「お手続きとご説明は以上となります。こちらが契約書と部屋の鍵です。ご不明な点がございましたら現地に常駐しています管理者にお問い合わせ下さい」
いつものように早朝から調理の仕事をした後に、街の役所に向かい門兵のエグラムさんが言っていた寮についての話を聞きにきていたが、寮に入りたいって希望を伝えるとすぐに簡単な審査を受けることになった。
審査と言っても身分証(冒険者証)を提出して数分待つだけで審査完了、審査が通った。
その後は簡単な契約書にサインして寮の詳細と注意事項を説明された。
寮の正式名称は美化促進仮設住居、通称カルディス寮っていうらしい。
親切かつ丁寧な受付のお姉さんが終わり、寮の部屋の鍵と契約書をもらい役所を出た。
本当に部屋がタダで借りれるのか不安だったが、拍子抜けするぐらい、あっさりOKだった。
めっちゃくちゃ嬉しい!とはならない。
いや、確かに嬉しいよ。嬉しいんだけど朝の事を思い出しちゃうと喜びにケチが付く。
エグラムさんに夕食を奢ってもらった後に時々利用していた路地裏の寝床(寝床といってもただの地面なんだけど)で一夜明かす事にした俺はまだ結構早い時間だったと思うけど、色々あり過ぎて疲れてたせいかすぐに朝まで一度も目を覚す事なく爆睡した。
で、朝起きたらエグラムさんに借りたお金が全部なくなっていた。
落としたのかと思って探しまくったけど結局見つからず。落として拾われたか、寝ている間に盗られたか。どちらにしろ借りたお金を失ってしまった。
一応警察みたいな役割の憲兵が街にはいるけど、結構冷たい。いやお前が悪いやんって突っぱねられるのが目に浮かぶ。
それに憲兵と門兵であるエグラムさんが繋がってる可能性は高い。借りた金が盗られたってのは流石に知られたくない。
親切で貸してくれたエグラムさんに対しての申し訳なさと、その金を当てにして武器にしようと考えていたのにそれが出来なくなった事への悲壮感と、何より自分の馬鹿さ加減、アホさ加減への失望感。
色々なマイナスの感情に苛まれて、辛い。
打たれすぎて弱っている俺のメンタルが今すぐ寝ろと俺に囁く。
寝よう。寝て忘れよう。
飯くえないけどそれより俺のメンタルが眠りに救いを求めて俺を突き動かす。
取り敢えず俺の新たな住まいである寮の自分の部屋に行こう。
てくてく歩いて教えてもらった寮がある街の北口に向かう。
てくてくてくてくてくてく......。
あれ?なんかめっちゃ遠くね?
異世界はままならない~こつこつレベルアップ~ ろうと @pos_99
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