いつも冷たい後輩が俺の事を好きらしいのでちょっと意地悪したくなったわ。
珈琲
2人とも
「……ぱい?先輩?聞いてます?」
「お、おう。すまん。なんの話だっけか?」
「全く、先輩は……
いいですか?先輩。あなたは一応、部長なので部の事を考えて下さい。」
「でもな、可愛い後輩よ。部の運用の実権は君が握っているじゃまいか。」
この部は俺と後輩の
まぁ俺は可愛い後輩と二人でっていうのも悪くは思わないが。
「はぁ……先輩、そう言ってからかうのはやめて下さい。あと、それはあなたが不甲斐ないからですよ。」
「ぐふぅ!!……」
俺の心に深い傷を負った。
ここまでされたら俺も反撃に出るぞ。
フフフ、俺のアカデミー俳優並の演技を見せてやる。
反撃の狼煙を上げろっ!!
俺っ!!
「……………なぁ………栞。」
俺はこれまであんまり見せなかった、
すんごい真面目(そう)な顔をした。
今なら、福士〇汰にもウィル・ス〇スにも負けない。多分。
……いや、負ける。100:0で惨敗だ。
「はい、なんでしょう」
真剣な雰囲気を感じとったのだろう。
栞も真面目に聞いていた。
「お前がもう飽きたならこの部活……
やめていいぞ。」
「っ…………」
栞は少し驚いた様子だった。
そして、すぐには返事をせず真剣に考えていた。
……………やっべ、やりすぎたンゴ。
流石にタチが悪かった。
ここは素直に謝ろう。
うわぁ対抗心が変な方向へ……
後悔はあとだ。そんなことより謝罪が先だ。
「あの、しおr「分かりました」……えっ?」
予想外の言葉に間抜けな声が出てしまった。
てか、えっ?何がわかったの?
「正直、先輩には愛想を尽くしていましたし、
もう退部したいと思っていたところです。
今日それを伝えようと思ってたのですが……
話しが早くて助かります。」
彼女から伝えられた
もう、辞める?退部?
嘘だ、あいつは俺のこと……
いや、違う。簡単なことだった。
全部、勘違いだったんだ。
俺はまるで胴体に大きな風穴が空いたような切なさと、心臓を潰されたように痛む心。
それらに苛まれた。
これが失恋か。
なかなか辛いものだな。
もう二度と味わいたくない。
「ではさようなら。先輩。」
彼女が部室から去っていく。
これで最後の別れだ。
バタンと扉が閉まる音がする。
そして、部活に静けさが支配した。
「なんだよ、全部、俺の勘違い……かよ……」
俺はポツリと独り言を口に出した。
「っ!!……………」
俺はつい、気持ち悪いぐらい静かな部室から、
彼女との思い出の詰まったこの部屋から逃げ出すように部活を出た。
だが、
扉を開けた先に彼女がいた。
「ちゃっちゃら〜ドッキリ大成功ですね。
先輩。」
「………は?」
ドッキリ大成功と大きく書かれた看板を片手に彼女がそう言った。
ドッキリ?は?じゃあ今まで全部演技?
最初から?うせやろ。
名演技すぎひん?
俺はつい安心してしまった。
よかった、彼女はまだ一緒にいてくれる。
だが、同時に怒りも込み上げて来た。
なんであんな事を……
俺は安堵と怒りといった感情がごちゃ混ぜになった。
「ちょ、先輩っ!?」
俺はつい彼女を抱きしめてしまった。
「……先輩。」
「なんだ?」
彼女の真面目な声に耳を傾けた。
「大好きです。先輩。」
栞も俺を抱き返した。
「俺もだよ、バカヤロー」
もう一度力強く栞を抱きしめた。
もう二度と離さない。
何があっても。
「でもな、栞。さっきのは酷くないか?」
「すみません……先輩……
ちょっと意地悪したくなっちゃいました」
彼女は笑った。
その笑顔はまるで悪戯を成功させた、
子供のような、眩しくて、守りたいと思う、
そんな笑顔だった。
いつかこの意地悪の仕返しをしてやる。
いつも冷たい後輩が俺の事を好きらしいのでちょっと意地悪したくなったわ。 珈琲 @coohii
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます