第2話 過去の俺

目の前にいる少年霊。と名乗るその人物はやれやれといった様子で手を差し伸べてきた。


「ほら、いつまでそうしてカッコ悪く尻餅ついてんの?」


さっさと手を掴めと言わんばかりに手を伸ばしてくる。

これ、掴めるのか?幽霊って触れるの?触れたらどうなるの?死ぬの?

蕁麻疹とか出たりしないのか?など色々考えたが、ゆっくりと、慎重に手を伸ばす。


「よし!ん、手大きいな俺!」


「うああああああああああ!!あったかいいいいい!!!!!!!!」


温もりを感じた。幽霊ってあったかいんだ。


「いやいや、そりゃ生きてるんだから温かいでしょ。何言ってんの」


またもや呆れた表情を浮かべる俺と名乗る少年。生きている?つまり幽霊ではないという・・・事か?


抜けた腰も回復し、なんとか手を借りて起き上がった。

身長は160cmぐらいの少年。それを見下ろすように隅々まで見る。

どうみても目の前にいるのは中学生ぐらいの俺だった。


「・・・。ジロジロみんなよ気持ち悪いな」


この生意気な感じも俺っぽかった。


「・・・いや、ちょっとさ、あのなんというか。」

この状況を理解するのに何からすべきか頭を落ち着けるため、深呼吸をする。

深く深く。危うくむせそうになる。少し冷静になった俺は少年に質問を投げかけた。


「・・・あのさ、俺って弟とかいたったけ?」


「いやいやいないでしょ。あ、でも生き別れの兄弟が10年後とかにぽっと出るって事もあるか。でも違うよ!俺は君です!時折 司だよ!」


「・・・。えっと今何歳?」


「14歳」


14歳までに経験したことをひたすら思い返してみる。


「初恋の相手は?」


「塾の先生でしょ?おっぱい大きい」


「じゃあ、俺が小学校の頃先生に一番怒られた事件は?」


「給食の牛乳瓶将棋倒しにして全部叩き割った」


「じゃあ、親父に初めてビンタされた理由は?」


「塾のテストサボって、公園いって犬に噛まれて右手が血まみれになった時」


ああ。これ多分俺だわ。その後もいくつか質問をしたが、全て的確に返ってきた。

信じられないことが今目の前で起きている。


「いやーもう質問大丈夫でしょ。そろそろ信じてくれた?」


「初めての彼女の名前は?」


言った後にしまったと思った。


「え?俺いつできんの彼女?ねえいつ!?」


初めての彼女は大学生になってからだった。

あと数年間に渡ってチェリーでいなければならない事実を伝えるのは酷だと思い、話をさえぎるように話しを続ける。


「いや、それは追々って事で、、、。あのさ、なんつーかまぁ100歩譲って、いや実際には10,000歩ぐらいは譲ってるんだけど。」


「お前が本当に俺だったとしたら、なんつーかその。なんでここにいるの?」


「やっとその話ができるんだね。」


すると俺(中学生)は意気揚々とした表情を浮かべて一言放つ。


「未来の俺に奥さんが考えてる事調べてって言われた!」


「は?」


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過去と未来を守る現在 みやおん @miyabiya_under

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