第2話 君の正体


黒煙の中から何か黒い物が形作られてくる。

煙が薄くなったところで、散開していた護衛隊たちが突っかかるが、足止めが良いところでそれらしい打点は全く与えられていない。


「あれが..」


「そう、私達の敵。」



敵の形は人型だけど、顔にあたるところは球体が浮いていて、胴と手足が極端に細長い。その手足を振り回したり魔術を使っているような様は、この世界の産物とは思えない形態だった。


「言っておくけど、僕は守護魔法専門の魔術師で、敵を倒したりとかはできないからな!」


未知の敵との会敵から恐怖が湧き上がってくる。そのせいか、神様に自分の境遇を改めて説明する。


「わかってる、じゅうぶんだよ」


神様の顔は相変わらず険しい。そこまでのものなのだろうか


しばらくして、その訳の分からない敵と戦っていた最後の魔剣士が視界の外に薙ぎ倒された。

その瞬間こっちに向かって走りだす。


「来る」


取り敢えず守護魔法を2層展開する。2枚目は保険だ。


敵の細長い腕が横から守護魔法を2層ともめり込んできた。


「うっ...!」


これまで経験のしたことのない衝撃が地面から身体へと伝わる。


「それなら!」


腕がめり込んだところから魔力を急速に吸収し、腕を壊死させる高位魔法(ハングアウト)を使う。


「コイツ!?」


危険を察知し、守護魔法を反転させ相手を吹っ飛ばす。


「魔力がない」


この世界ではありとあらゆるものに魔力が備わっている。初めて常識を外れたどこかの世界に迷い込んだような、そんな感触を覚えた。


僕は一体...何と戦ってるんだ?



「あと僕はどれぐらい守ればいいんだ?」


普段なら敵を倒すまでハングアウトで無限に魔力をやりくりできるが、この敵はそうもいかないため

残りの魔力消費も考えなければならない。


「あと1分半!」


神様がが応える。


それなら守護魔法を反転させ、敵を吹っ飛ばしてる間にこの1分半は過ぎるだろう。

そうして思惑通りに戦かったが、残り20秒、妙なことが起こった。


いつものように守護魔法に相手の腕がめり込む。そして守護魔法を反転させようとすると、


「守護魔法が侵蝕されてる!」


術式が敵の腕から解かれていく。


「コイツ..学習してる..!」


その侵蝕は瞬く間に自分の右腕まで到達する。

こうなったら敵の腕を切断するしかないが、そうなると敵をここに留まらせることが出来なくなる。


でも身体がもつかどうか。


腕に目を落とすと指先から手首へとどんどん蝕まれていく。


痛い。


戦闘において最強の守備要員だった僕は今まで痛みという感触を感じたことはなかった。


怖い。


恐怖という感情も今日が初めてだった。

こんな奴が街で暴れでもしたら、人々が無残に薙ぎ倒されていく光景が思い浮かぶ。


僕がここで倒さなければならない!


「くっそぉ!」


有りったけの魔力を集中させ、膨大な魔力を解き放つ。

さらに守護魔法を反転させ、地面に敵を上から押しつぶす。


「キイイイイイン」


自分がやられることを察したのか断末魔をあげる。


「うわっ」


その瞬間、地響きと共に白い光が当たりを包み込む


「自爆か?」


なんとか神様の庭を守るため、守備範囲を名いっぱい広げる。

徐々に光が消え、視界がもどってきた。


静けさを取り戻した緑と青の大地に残ったのは僕の息切れの呼吸音と敵の死骸だけであり、僕の腕には侵蝕された跡が今起こった出来事の生々しさを物語っていた。
















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ゴッドガーデンキーパー〜世界最強の守護魔術師〜 @4646japan

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