三月二十五日 喫茶店と仕立屋と

 彼女の買い物がやっと終わり、お昼を食べに彼女が行きたかった喫茶店に行くことにした。Instagramで載っていて気になったとのことだ。


 千秋と一緒に前から気になっていた喫茶店にやってきた、店内は洒落た雰囲気だ。店内も騒がしくなくてとても良い、此れぞ喫茶店という落ち着きも店内に漂っていて心地よかった。


「千秋、食べたいもの決まった?」

「えぇっと、なっちゃんは決まったの?」

「決まったんだけれども、此れも気になるのよね。」

と、メニュー表の中にあるメニューを彼女は一つ指差して言った。

「じゃぁ、僕はそれにするよ。」

「本当、ありがとう。店員さん呼ぶね。」

そう言うと彼女は、すみませーんと店員を呼んで僕の分まで注文をしてくれた。


 料理が運ばれてくると彼女の目はとてもキラキラしているようで、来て良かったと思わせられるような表情だった。僕たちはお互いの料理を交換しながら昼食を堪能した。

料理を食べ終わって食後のコーヒーを飲みながら、

「千秋、此れ飲み終わったら仕立屋行こうか。」

「そうだね、あんまり帰るの遅くなるの嫌だし。」

僕が言い終える時に、彼女のカップは空っぽになっていて

「じゃぁ、行こっか。」

と声を掛けてきた。


 仕立屋は先程居た喫茶店から少し離れた場所にあった。仕立屋に彼女と入ると感じのいい店主が

「お客様いらっしゃいませ、本日はどのようなものを御所望でしょうか。」

と、彼女の方を見て言った、そして彼女が

「この子に合うスーツを一着お願いできるかしら。」

すると店主が解りましたと言って僕の身長等を測りはじめた。


 計測が終わると店主は僕に、

「下はどうなさいますか」

と聞かれたので

「ズボンでお願いします。」

と答えると店主は頷きながら

「畏まりました」

と言って奥に入って行った。

僕が、緊張が少し溶けて肩の力を抜いていると、店主が奥から出てきて

「二週間後に完成しますので、連絡をしてから取りに来てください。」

と僕と彼女に言って、お会計となり彼女が支払いを終えると僕らは店を出た。

店を出て僕らは帰路についた。

帰る時僕と彼女は一言も話さなかった。

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変わってしまった世界でも愛したい あにょま @Anyoma

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