第5話 イヤイヤ星人
よし…あの戦いに俺は勝った…!
だか俺の心臓がやばい。
俺は胸を抑えながら藤山さんを見る。
すると、藤山さんは俺をトロン…とした目で俺を見ている。怖かったのだろう。俺も怖かった。
「…もう大丈夫だ」
「ありがとう…」
と言って、座りながら俺の胸にコトン と、頭を埋めてくる。
あれれれれれそうするともっと俺の心臓がやばくなるよよよよ。
「…少しだけ、こうさせて」
と、泣き声で俺の胸の中でそういった。
…そう言われると抵抗ができなくなる。
俺弁当まだ食べてないんだけど。
その日の放課後…俺は藤山さんにほぼ強制的に一緒に帰ることになった。
「で、くっつくのやめてくれる?」
「…」
藤山さんはあれ以降、何故か口を聞いてくれない。
その代わり腕に抱きついてくる。
そんな事されたらまた6人が来てあれこれ言ってきそう。
だが、いくら言っても、全然離れてくれない。
多分、藤山さんの脳内で俺は『守ってくれる人』なのだろう。
まあ…その気持ちは分かるが、ちょっと他人の目が…。
ギロンギロンしてるよ、絶対嫉妬の色はいってるよ。明日殺されないか心配だな。
「あの…ほんとに、俺殺されそうだから」
「…いや」
さっきから『いや』しか言ってないよね。イヤイヤ星人かな。
あと、他人の目だけではなくて、腕に藤山さんの胸の感覚が脳に入ってきて、俺の脳内がやばい事になってるから。
俺にこの2つの試練を乗り越えろと…?無理だろ、無理無理。無理ゲーだよ。ムリムリ星人になっちゃうからおれ。
…駅だ、駅なら人がいっぱい居るはずだから、解放させてくれるはずだ。
駅に着いたそれはいい。
何故解放させてくれない?
…これが奴隷の気分なのだろうか。
俺は何も悪いことはしていないぃぃい!
電車だ、電車に入れば…きっと…きっと解放させてくれるはずだ。
俺はただ祈るだけ。
…諦めよう。うん。
結局電車に入っても解放してくれなかった。
完全に変な目で見られてるよ。『うわっ…痛いカップルだな』とか思ってるよな。
違うからね…。
「…なあ、離してくれるか」
「やだ」
このヤダヤダ星人は、他人の目という物をシャッターでカットしているのだろうか。
全然気にする様子がない。
あの6人の事は分かるが、電車の中だぞ……
もしかして、まだ痴漢の事がトラウマなのだろうか。
それだったら納得だが…納得?いやいや、違う。例え痴漢がトラウマだとしても、これ程では無いだろう。
…わからない、わからない。出会って2日の人の腕に抱きつくか?
…ハッ!美人局か!?
だとしたら、あの6人も演技…?
「ちょ、まじで離れてくれ」
「あ…」
俺は無理やり藤山さんを剥がした。
これは危険だ。
「いくらなんでも、出会って2日の人にそれはダメだろ」
「…うん…ごめんなさい」
分かってくれたのならそれで良いのだが…。
電車を降りて、俺と藤山さんは、さらに歩く。
ちょっと元気がないのは、何故なのだろうか。
「なぁ、家ってこっちなのか?」
俺は疑問を口にする。
「…うん」
なんか口数が少ないな。
「へぇ…」
…気まずい空気が、ここら辺に流れた。
「なあ、お前って妹とか居んのか?」
この空気を明るくしようと、適当に話題を出す。
乗ってくればいいのだが。
「…いる、お姉ちゃんが」
「ほへー、どんな姉なんだ?」
俺は途切らせないように、無理にでも話題を繋がらせる。
「ちょっと…意地悪」
い、意地悪…俺の妹と一緒だ。
「あっ…」
藤山さんが、何故か絶望したかのような表情を顔に出した。
なんだ?と思い、藤山さんの見ている方向を見る。
「あっ!沙羅!」
見ると、なんかテンションの高いような人が藤山さんに手を振っている。
…誰?
「お、お姉ちゃん…」
ああ…なるほど、お姉さんか。
だが、なぜ絶望したかのような顔を出しているんだ?
「沙羅~♡その人はだ~れ?」
…やたらテンションが高いな。
顔を見ると、藤山さんとよく似てて、同じくめちゃくちゃ可愛い。
スタイルも抜群、バストもボンッ。足もスラリとしている。
だが、性格が違う…と、本能的に読み取った。
「彼氏~?」
「ち、ちがう!」
と、藤山さんが焦って反対をする。
なぜ焦っているのかはわからないが…。
「ほんと~?」
と、藤山さんの姉は俺に向かって聞いてくる。
「はい」
「ふ~ん」
と、何故かニヤニヤしたような顔で俺達2人を見ている。
「も、もう…なんで外に出てんの?」
「え?いや…沙羅が遅いから」
ん?そんな時間経ってたか?
「なんかその男の人とやってたの~?」
と、また変なテンションで聞いてくる。
…なんか、色々と面倒な人なんだな…と、本能的に思った。
絶望したかのような顔をした藤山さんの気持ちがわかった気がする。
カースト最底辺の俺がカースト最上位の女を助けたら惚れられました @kuooke
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