第4話 ヘイトを稼いでしまった
授業は次々とおわり、昼休みに入った。
俺はいつも通り弁当を広げて、食べようとした時。
また、藤山さんは俺の近くにやってきて
「い、一緒に食べよ?」
と、言ってきた。
カースト最上位が最底辺に『一緒に食べよう』なんか言ったから周りのヘイトを稼いでしまった。
昨日はみんながいない所で言ったからいいんだけど、今はめちゃくちゃいる。
ヘイト稼ぐどころか怒りも買ってしまったらしく、めちゃくちゃ睨まれている。
もう睨むのやめろ。
「…いいよ」
断ったら『なんで藤山さんのお誘いを断ったんだ』とか睨まれそうなのであんまり行きたくはないが肯定する。
「ん。じゃあ行こ」
そう言って藤山さんは教室を出ようとする。
俺も弁当を持ち、藤山さんの背中を追いかける。
教室を出るまで視線が痛かった。
と思ったのだが、廊下でも視線は痛い。睨むのやめて。やめろ。
今日も多目的室に入る。
やっぱ広いな…と思いつつ、弁当を広げる。
「なんで今日も誘ったの?」
俺は疑問をそのまま口にする。
「…ダメ?」
…やめろその上目遣い。
「嫌ではないけど」
「じゃあいい。理由なんていらない」
いや、いる方がいいよ?
俺はいつも通り自分で作った弁当を広げ、食物を口にする。
「今日も自分で作ったやつ?」
「ん?うん」
ほへー…と、相変わらず無関心な声でじーっとこちらを見つめる。
…睨らんでる。と、前までは思っていたのだが、何となく違う気がしてきた。だからといってその視線はなんなのか…と聞かれるとわからない。
――その時、タッタッタッ と、足音がした。
誰だ?
「…?」
藤山さんも、首を傾げて多目的室と廊下の間の窓を見る。
すると、そこから出てきたのは、6人ぐらいの男女だ。やべぇボコされる。やっぱり藤山さんは美女局だったのか?
そう思って藤山さんを見る。
だが、『なんで?』というような顔をしている。
「藤山さぁん…なんでうちらの誘い断って、そいつと食べてんの?」
うわ、こわ。こういう顔を俺に向けられたら白目剥いて倒れる自信あるよ。
そう思った途端、こっちを向いてきた。
「ぐぇっ」
白目剥いて倒れる程ではなかったが、変な声を出してしまった。
「べ、別に…あなた達と食べるって言う決まりは無いですし」
と、藤山さんは言った。
勇気あるな…俺だったら『ごごごご、ごめんなさい!』って言ってるのに。
「はぁ?…こいつと食べるより、うちらと食べた方が面白いよ?」
そ、そうだよ…藤山さん。もうあっちいってよ…こんなことになるなら俺は1人でたべたい。
「勝手に決めつけるのはやめてください。こっちの方が私は楽しいですし」
そ、そうか…?楽しいのか?
「…チッ」
おい誰か舌打ちしたろ。
…。
誰か喋れよ。自分で作った弁当が不味くなるだろ。
藤山さんも不味いだろう?
俺はそう思って藤山さんを見る。
――!?
「…うぐ…うぅ」
な、泣きそうになってるうぅうう???
なんでぇ?
俺は混乱しながら6人の男女を見る。
…なんでそんな平気そうな顔をしてんだ?
6人の男女は、普段と変わらないような、無表情で藤山さんを見ている。
何故か俺は急に胸から込み上げてくる物が感じ取れた。
『なんで泣いてる人を見て棒立ちしてんだ?』
『普通は「悪かったよ」とか言うもんじゃないのか?』
「…そんな泣くんだったらさ、うちらと食べようよ」
『なんでこいつらはこんなにも藤山さんにこだわってんだ?』
それは…カースト最上位だからか?美女だからか?
こいつらには人の心がないのか?
ワラッテルネソノココロ
てかなんだよ、『そんな泣くんだったらさ』とか。
もおおぉおおお!怒ったぞ!
「黙れ」
俺は意を決して殺される…と思いながら言った
…い、いってやったぞ!
「は?」
「藤山は物じゃねぇんだぞ」
やばいな…俺の心臓の鼓動が早すぎる。しぬ。
「別に、他のところで食べたって良いじゃねぇか…お前らお子ちゃまか」
と、またもや殺される…と思いながら言った
はい!俺がお子ちゃまですね!すいません!
もおおお…なんでこんなことになってんだよ!
「は…は?お前馬鹿か?アホなのか?」
と、6人のうち1人が言った。
そうだよ俺は馬鹿でアホだよ。
でもな?藤山さんが泣いてんだぞ?
「ああ、アホでバカだよ。でもそんな奴なのにこれだけは言えるぞ?
女泣かせるやつはアホでバカよりよっぽどクソなんだよ」
わ、わあああ!殺される。
「…チッ…行くぞ」
リーダーらしき人がドアから去っていく。
それを見た他の5人は後を追って去っていく。
…俺は自分の胸に手を当てる。
――ドドドドドド
俺の心臓部分で地震が起きてる。
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