世界をひとりで散歩する

城戸みかさ

はじめに

旅行が好きで、隙あらばどこかに行けないかと航空券や宿を検索するのが日課のようになっている。

誰かと一緒に旅行したことは数えるほどしかなく、基本的には一人旅だ。

精力的に観光地を巡ったり、世界遺産を制覇したいという欲はあまりなく、単純にその場にいった、その街の地図の中に身を置いたという感覚を持ちたいのだと思う。

だから「何してきたの?」と言われると少し困る。街を歩いてきただけのときも多いからだ。ただ、散歩するように、旅をしている。




行き先を決めるきっかけは、いつも違っている。

小さい頃からずっと行ってみたかった、という場所についに、という場合もあるし、なんとなくテレビで特集されているのを見て、ということもあるし、なんとなく予算に合わせて検索してみたら出てきた行き先だった、ということもある。


何となく行き先を決めたら、まずガイドブックを買う。

ざっと目を通して行ってみたい街を決める。

街に目星をつけたら、ガイドブックを読み込むのと並行して宿泊予約サイトを検索する。泊まってみたいいい感じの宿、というのは重要な要素なのだ。


その街を歩く自分を想像して、わくわくする感覚が得られたら、もう気分は機上の人である。




小さい頃、家族旅行は夏休みと春休みの年2回と決まっていた。


夏休みは、母方の実家のある島根に行くと決まっていたのだが、毎回そのルートが違う。

あるときは大台ヶ原に寄り、あるときは青海島でのキャンプがセットになり、あるときは四国を経由してお遍路巡りをした。父が仕事の都合で同行できない年は、母と兄弟3人だけで、1日がかりで青春18きっぶをつかってローカル線を乗り継いで祖父母の家へ向かった。途中の宿泊は、基本的にキャンプかユースホステルだった。

地図とガイドブックとにらめっこしながら、今年はどういうルートで、どんなテーマの旅をするか、両親が話し合っている姿を覚えている。


自分がこんな風に育った理由がよく分かるというものだ。




初めて一人旅をしたのは19のときだった。

その頃からの記憶を辿り、記録したいと思う。

ただいかんせん、もう20年近く前である。もはや忘れていたり、記憶が違っていることもあるかと思うがご容赦願いたい。


2020年5月。コロナ禍で、次に自由に旅行できるのはいつになるか分からないが、時間だけはたっぷりある。この機会に、自分がこれまでしてきた旅を振り返りたいのだ。

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