コロッケ
森川夏子
さくさく、ほくほくのコロッケ食べたい。
朝、休みの日は散歩をする。
帰り道、いつもコロッケ屋に寄り道する。
マツさんと言うひととコテツという少年がいる。
マツさんは、コテツの母で一人で育ててるらしい。
コテツくんは、いつもぼくのことをにいやんと言う。ぼくは、このコテツくんの癖を知らなくて驚いたが、年上にはにいやん、ねえやんと言うらしい。
それが可愛いので、たまに駄菓子を分けてあげる。
すると、彼はにっこりとして。走り去ってしまう。
「いつも、悪いねぇ……」
「いいえ、可愛いですね」
「とんでもないわ、悪戯っ子なのです」
「へえ、元気ですね」
「手がかかるほど……と言うヤツですわ」
子供を慈しむ人の心は、優しいものである。
そこから、トントン橋を乗り越えて、いちにーさん。不運なことに嶋崎というひとに会う。
立ち話になるのはなんだからと、家に誘われる。
それをなんとか丁重に断る。
角でゲンボウというガキ大将に出会う。
「やい、女々しいやつ」
「ぼくは女々しくないよ」
優しくあしらい、逃げるつもりでいる。
いつものことだった。
「逃げるのかよ、ぶりっ子」
この日は、厄介方が多いな。
目の前に立ちはだかる筋肉の塊。
「通しておくれ、君とは争わない」
「へん、泣き虫なんだろ」
「泣いてないよ」
泣きそうになる。
「な、泣いてなんかないもん……」
「お前のそういうところが……あ、やべ」
そういうと、走って逃げる。
「こらぁー!!」
そこにヤスくんという気の強い友達が助けに来る。
「なにか、君も言い返せばいいものを……」
「いつもごめんね」
「なんで謝るんや、謝らんでええよ」
いつもより、帰り道は遠く感じた。
いろいろありすぎた。
片手にコロッケの入った袋、もう片手に本をもっている。(側から見れば滑稽な姿かもしれない)
「ただいま」と、愛想よく玄関をくぐり。
そのまま、家の庭に直行する。
いつもの特等席に座るために、一旦。
本を枝と枝の間に置く。
足をひっかけて庭木に登る。
「もー、
祖母は、苦笑いしながらも見守る。
「ここ、特等席なんです」
私は木の間に座って、コロッケを食べる。
向かいの窓からいつもなにかを書いている、
俯いた聖女さまのお顔が見える。
彼女に話しかけたのは、美術室だった。
「絵を描くの?」
初めて声をかけた。
「あなたも描くの?」
なんと言っていいか、わからないから。
なんとなく水彩画とだけ答えると笑った。
「そうなの?なら、お友達ね」
ぼくは絵をそんなに描かない。
いつも、インクを吐き出しながら文字を書く。
そちらの方が性分に合うらしい。
「ご趣味で?」
彼女が訪ねるから……。
「う、うん。まあね」
会話下手で、長くは続かない。
彼女がぼくの絵を描くと言ってから
放課後によく合うようになって、デートして、
それから、なんだっけな?
少し眠たげにあくびをする。
(彼女と目が合うはずないか……)
食べ終えた紙屑を一旦、ポッケに突っ込み。
読みかけの本を読む。
絵と文字の構成されて本で、漫画というらしい。
ぼくの家には漫画なんてものはない。
祖父は口煩く、漫画なんて読むなとぼくに言う。
『お前には、俺のなれなかった夢を叶えてもらう』
祖父は書庫を改装して、執筆兼読書部屋に改造してくれた。といっても部屋に机を置いただけだった。
しかも、その机は横長の棚で実際は机じゃない。
猫型ロボットの相棒とロイド眼鏡の主人公がなにやら滑稽で、心から面白いと思えた。
コロッケを食べることも、漫画を読むことも、祖父には秘密にせならばならない。
読み終えると、続きがきになるもので……。
明日にこの続きを借りようと決意する。
窓のところで彼女と目があった。
そんな気がしただけだったけど、彼女がささっと、
また、なにかを書いてスケッチブックに吹き出し。
文字を読んでみた。
『いまから、こっちに来ない?』
驚いた。見えていたのかしら?
私は木から滑り降り、ささっと上着を羽織り直す。
「あら、はるちゃん。どこへ?」
「お出掛けです、ばあさま」
「ちゃんと門限には帰って、お勉強よ」
「心得てありますから……」
時刻はたぶん、16時くらい……。
1時間だけの逢瀬を楽しむのも悪くない。
陽がのぼり、夏日陽に近づく。
初夏になったんだと思った。
夢のなかのあなたと逢瀬を重ねるよりも、
現実のあなたと楽しくお話ししたい。
そんなワガママを烏が
コロッケ 森川夏子 @Morikawa_natuko
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