七、火のまつり
「
湯を分けて、彩は
「カノンのママは、心配しているだろう」
「ここまでの旅費、そのママが出してくれたのよ。直之さんなら大丈夫だろうって」
決して大丈夫な状況ではない。
「私、来ないほうがよかったのかしら」
直之は首を横に振った。
「ピュグマリオンが
彩は、さらに身を寄せて来た。直之は肩に彩の素肌を感じた。
「女像が、彼を誘惑したからよ」
彩は、自分の唇を直之の唇に重ねた。
湯が波打ち、二人の
「ねえ、外が騒がしくない?」
直之の胸から顔をあげて、彩が言った。
エンジン音が聞こえる。
二人は窓の水滴を拭い、外の様子を
ホテルの
「今夜辺りかもしれない」
直之は、
「火の祭りだ」
直之は
二人が非常口を開けて外に出た頃には、
「雪が降ってきたらホテルに戻ろう」
二人は、雪上車の
「何故、火の祭にそんなに
「僕らの
彩に似た彫像を
「灯りが見えるわ」
彩が
雪原に灯された幾つかの
「間に合ったみたいね」
二人は太い杉の木の陰に隠れた。
篝火が次々と消えてゆく。その間に人々は輪をつくり、
やがて
突然、炎があがった。
人々の姿が照らし出された。皆、鮮やかな
人々は、左右の肩を交互に前後させながら
「あの歌、私にも歌えるような気がする」
彩の
炎が
雪が降り始めた。
人々が揺らぎながら宙に浮いた。
女は皆、彩の貌になった。
男は皆、直之の貌になった。
雪の一粒一粒が火の色を映し、同じ色を映した地の底に沈んで行った。
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