五、山麓ホテル
「
「まつりび」のレプリカを渡した後、直之は彩と一度も会っていない。会う理由を思いつかないまま、一週間が過ぎている。
彫刻の題名を言い当てた理由を
「秘密のお祭りよ。
彩については一言も無く、直之は
「まだ
山麓ホテルは
地図上では
直之が着いた頃には、日は暮れかけていた。
冬休み明けのせいか、ホテルを訪れる客は少ないようだった。
タイヤにチェーンを巻いたクーペが一台だけ、駐車場に停まっていた。
ロビーのソファーに、一組の男女が座っていた。
「
直之は二階東側の和室に案内された。窓のカーテンが開いている。
窓硝子の
窓の外に
「温泉に入って来るだけでもいいじゃない」
直之は、カノンのママの言葉を憶い出した。
「このホテルに泊まっているのは我々だけのようですね」
男が、湯に浸かったまま近づいてきた。
「さっき、フロントで火祭のことを
「あの祭りについて、何かご存じなんですか?」
「ええ、観たことがあるんです。この近くでね」
男は、視点を細かく動かして直之の顔を見ていた。この人は画家か彫刻家かもしれない。直之はそう思った。
「千年以上前から続いている
火祭は、世界中
「
共に
「その土地で造られた仏像や
「幻の火祭の人々は、どんな顔ですか?」
男は、幾つかの
「幻の火祭が開かれるのは、真夜中です」
今夜辺りかもしれない、と言い残して男は
直之は、自分の彫刻に
自分は様々な
「彫刻家さん」
直之は、顔を上げた。
「驚くことはないわ。私の裸は見慣れているでしょ?」
風が湯気を
彩の姿に、
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