第30話 奇怪な危惧に驚くおみねとほほ笑む初老たち
「では、始めるぞ。痛くないから、体の力をお抜き」
気丈なおみねも、心臓が飛び出しそうな恥ずかしさを感じていた。
了庵は、改めておみねの両膝に手を当て、ガバッと股を開かせた。そこは、幼さが残る顔とはちがい、もう立派な道具の様相を形成していた。
障子の裏側で待機させてい女中に頼んでおいた湯の入った桶を了庵は受け取ると、その湯で丹念に手を洗った。
了庵は、「どれどれ」と言いながら、おみねの道具を開き、何やらゴソゴソと手を動かした。
「忠兵衛さん、良かったのぉ。わしがみる限り、おみねは生娘じゃ」
「そう…そうか、良かった」
「忠兵衛さんや、あんたの眼で確かめんか。わしはあんたの性分を熟知してるつもりじゃ。自分の眼で見ないと安心できんじゃろうて」
「忠兵衛さんも見るんけ、おらぁ、恥ずかしいとよ」
「あぁぁ、わしは、その…、あの…、 先生が言うなら信じる」
了庵は、もじもする忠兵衛をぐっと引き寄せると肩を押さえ、おみねの道具が特等席で見える位置に鎮座させた。
今まで幾多のおなごの道具を見たことか。なのに、まるで初めて見た時のようなときめきを忠兵衛は、感じていた。
了庵は、嘴のような器具を取り出し、その嘴を徐々に開き、より忠兵衛におみねの道具の中身がよく見えるように、一定の所で止めた。その状態で器具を忠兵衛に持たせ、体制を維持させると了庵は、用意していた筒状の行灯をおみねの股間に入れ、道具を照らしてみせた。
「どうじゃ、これでよく見えるじゃろ」
忠兵衛は外見は見たことがあるが、その奥の奥を、こんなにじっくり見たことがなかった。了庵はおみねの道具に指を入れ、道具の奥を指さした。そこには、出臍のような形態の肉の塊が、ヒクヒクと動いているのが見えた。
「忠兵衛さん、見えるかね。烏賊の口のようなものに、湯葉のような濁りがみえるじゃろう。その湯葉が白く、大きく簡単に開かなければ生娘と思って、まず、間違いない。本当の生娘の証は、その奥に膜のようにあるようじゃが、わしも実際には見たことがない。蘭学書にはそう書いてある」
「あぁ、あぁ、信じる、信じるとも」
忠兵衛は、満足気な笑みを浮かべていた。
おみねは、そっと、目をあけた。そこには自分の股間にを首を突っ込み、仲良く頭をくっつけ合って、楽しそうにはしゃぐ、初老の男たちがいた。
おらぁは見世物小屋か!と、思ったが、その無邪気さに愛おしさを覚えていた。忠兵衛は、草むらで珍しい昆虫を見つけ少年のように、目をきらきらさせていた。了庵は、そんな忠兵衛を、おみねの股間から離れさせ、優しくおみねの膝を閉じ、着物を整えてやった。
それから、十日程経った。越後忠兵衛と了庵がおみねのもとに再びやってきた。
「十日もほっといて何してた」
「済まん、済まん。でも、踊り、礼儀作法、小唄など、退屈はしなかっただろう」
「本当に、こんなのが役にたつのかねぇ」
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