第27話 夢か幻か?玉手箱の中身は如何なるものか?

 「あんたの言っていることは、分かった。いや、分かったことにしてやる。それで、おらぁのことばかり話して…ところで、あんたは何もんだね」 

 「おおそうか、まだ、言っておらんかったか。済まん、済まん。私は、越後忠兵衛と言う。海山物問屋を営んでおる。と言っても、いまは、船を使って各地の骨董品や産物を江戸へ。江戸のものを地方へと持ち運び、財を成している者よ」  

 「越後忠兵衛さんか…。お金持ちだな。よし、決めた。あんたの道楽に付き合ってやる」 

 「そうか、そうか。思いっきりの良さも気に入ったぞ」 

 「それで、おらぁ、何をすればいいんだ」

 「了承はこれで得た。それでいいな、おみね」 

 「それでええよ」  

 「佐吉どんも宜しいな」  

 「旦那さんのお気の済むように。おみねは旦那さんにお任せします」

 「おらの質問に答えないのか?」

 「ああ、後で詳しく説明するから待っておいておくれ。先に大人の話をしなければなりませぬからな」

 「ふん、ガキ扱いしやがって。まぁガキだから仕方ねぇか」 


 越後忠兵衛と佐吉の間には、おみねが知らない所で話がついていた。条件は以下の通りだった。

 一、おみねを五十両で身請けする。その上で、佐吉に預ける。

 二、おみねの管理・決定権は、すべて忠兵衛にある。

 三、連れ出しも、廓の掟の範疇で自由。

 四、おみねの客は、忠兵衛の許可を得て決める。

 五、おみね、専用の部屋を設ける。衣食住は、忠兵衛が手配する。

 六、おみねが、いじめに合わないよう佐吉が責任を持つ。

 七、おみねの保護と家賃を月極で忠兵衛が佐吉に支払う。

 八、おみねが儲けた収益は、おみねと佐吉で分配する。

 九、さらに身請けされているので、新たな身請けはなし。   

 但し、公には、身請けされていないことにし、その秘密を厳守する。


 佐吉にとっては、この上ない条件だった。

 これらは、四半時と短い時間の中で、越後忠兵衛の一方的な案であり、それに佐吉は同意していた。条件もさながら、豪商の越後忠兵衛と知り合えた事ことは、佐吉にとって、大きな後ろ盾を得た気になっていた。 


 「私から、おみねへの条件だ」 

 「道具に成る以外、まだあるのかね」

 「ある。いや、おみねと話して、思いついた」

 「なんだね」

 「お前にひと目惚れした。もちろん、外見じゃなく、内面の強さにな」

 「うるさい」 


 まぁ、外見のことは自覚しているが、わざわざ、正面切って言うな。と、おみねは照れながら怒ってみせた。


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