第2話 異空間からの訪問者

 「肉体を持てば、実感は得られるが、老いや病い、不慮の事態など、

 刻と言うものに拘束される。我ら魂の世界では、刻の制約は受けない。

 時空を行き来することは、然程の労力ではない。

 肉体と霊体の融合体を直接的、間接的に関与し、操作することができる。

 難題はあるが。それゆえに固有の暴走を防ぐための強い掟はある。

 適正に扱えば、それは苦にはならぬ。肉体があるか否か。

 生きるとは、どこを起点にするかで変わる故にな」


 「法師、先程から違和感を覚えますが、私目が生きた時代の言葉と異なるのですが、何不自由なく、理解できるのは、如何なることか?」


 「時空を行き来していると申したな。

 我は、そなたの生きた時代より遥か未来の時代を棲息帯にしておる。

 それゆえ、そなたが我らと歩む時に惑わぬよう、未来の言葉を交えておる。

 許容範囲を配慮しながら、そなたの言語中枢を調整しておる。

 言語は実体のある者が使う記号のようなもの。

 我らは魂で通じ合う、言わば、感覚で通じ合うゆえ、

 我らにとって、言語は箪笥の肥やし同様なのじゃ」


 龍之進は、初めて聞く事柄も、感覚として理解できているのを感じていた。


 「私が、念を緩やかに送り続けておる。それが、実を結び始めた証だ」


 法師の魂気は、法師の経験を育成余波として放たれていた。

 龍之進は、その育成余波を全身に浴び、思考パターンが法師の思惑通りに導かれている、と感じ始めていた。


 「法師、あなたは常人ではない力をお持ちになるのはわかります。

 しかし、その力で私を洗脳されているのではないですか」


 「そうじゃな、そう思われても仕方ないわな。

 よって、常に選択肢をそなたに与えておる。選ぶのはそなたの自由。

 多少の力の影響は受けるであろうが、その点には十分配慮しておる。

 あとは、そなたが私を信じられるかだ。信じられなければ、私はこの場を去る。

 どうじゃ」


 龍之進は、疑問を呈したこと自体、恥ずかしい思いがした。

 法師の余波は、信じ合う頼もしさ、温かみを惜しみなく放ってくれていることを

感じていたからだ。


 「なぜ、私なのですか?」


 「そうじゃな、それは私にも説明しがたい。

 私とて、もっと大きな力に導かれておる。その力は私たちを裏切らない。

 別件でこの時代に来た。

 その時、指示波が届き、それに導かれ、辿り着いたのがそなたじゃ。

 指示波には必ず意味がある。

 私はそれを信じて行動した、としか説明できぬわ」


 龍之進には、分からないことが満載のはずだった。

 しかし、疑問に感じることは直様、理解できた気がした。

 何もかも知っているかのように。これが法師の言う育成余波と言うものか。

 学ばずして学んでいる。法師の知識の一部を共有しているのか。

 分からないことも悩むことのない安心感が龍之進を覆っていた。

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