第6話 午前三時の小さな道具

 私ははじまりの冒険に挑戦することにした。目指すはコンビニ。こんなに近いのに行けなくなっていた。クリアできたらすごく便利。だけど外の世界は危険がいっぱい。四角いライトを浴びながら、情報を集める。たいした武器や防具は必要ないのね。よし行くか。ああでも



「ちょっと寒いかな」



 呟いた。防具を追加装備、スウェットの上に上着を着る。武器は財布だけ入った100均トート。よし、鍵をしっかりとかけて。やっぱりちょっと寒いなあ。久しぶりの外、こないだ天気のいい日に窓を開けたから風には時々は当たっている。でも夜中の空、夜の風。広くて星が綺麗。上を見上げて歩きだす。靴をとんとん。誰もいない、うん、遠くのアパートの一部屋、電気ついてるけどそれくらいで。あとは街灯一本。コンビニの明かりも歩いているうちに見えてきた。鍵をくるくると回す。大丈夫だ。行ける気がする。時々スキップしたりして。あ、そういえば歌、あんまり声だしちゃいけないよね。


 あっという間についた。らっしゃせーって男の人がいる。決めてたものだけ買って、あざましたーって声を聞きながら出る。小銭も落とさなかったし、つまずかなかった。家についてまた鍵をかける。



「よしはじまりの冒険クリアだ」



 嬉しくてつい声に出た。四角いのは怒って攻撃してくるものでもなければ魔法でも小さい妖精でもなんでもない。道具だ。便利な道具だ。私は四角いのを握りしめてアラームをつけて眠りについた。

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午前三時の小さな冒険 新吉 @bottiti

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