Track.1-14「まずは――人払い」
時を
民間魔術企業クローマークの報告を受け、異術士・
つい先ほど自分の直下を北北東へと走り抜けていったJR中央・総武線千葉方面行の黄色いラインが特徴の電車。その先頭車両が、ちょうど土手上に構える大きな病院を過ぎ去ったかと思えば激しい衝突音と衝撃波が大気と川面とを揺さぶり、
荘厳なステンドグラスの大窓が大破したかのように空間が罅割れ大穴が空き、世界の境界を保っていた
その中に監視中の対象と話し合う見知らぬ魔術士が飲み込まれていったことを確認し、漸くわれに返った奏汰は、通信魔術を起動させ自身の上長であるルカ・エリコヴィチへと繋ぐ。
自身の眼前に、常人には見えない
「
そうか、と短く溜め息を吐いたルカは、額に手を遣ったままもう一名についての確認を言葉にする。
「もう一名の魔術士はクローマーク所属の四方月航と思われます」
「分かった――魔術介入を許可する、人払いを徹底しろ。早急に学会員を送る。到着を待って門の座標固定、異界接続、探査と救命、処理だ」
「了解しました」
接続を解き、奏汰は
手の甲の部分に意匠された幾何学模様に光が点り、
「まずは――人払い」
開いた
それを
「起点指定――範囲指定――“
奏汰の操る
また、その空間からは絶えず特殊な波長を持つ電磁波が投射され、何だ何だと現れる野次馬はそれに打たれると魔術の作用により興味を削がれ帰っていく。
ただ一人、星百合女学園の制服を着る魔術士、
(……タイミング的に異界入りしてるかもしれない。一応、
周囲の野次馬に倣い、自身も興味を削がれた風に振舞いながら、心は取り出したスマートフォンを操作し、メッセージアプリを起動した。
一方、同時刻。
クローマーク中央支部に務める
新しく立ち上がったウィンドウには、航が彼の固有座標域に持ち出している兵装の稼働状況が記録されており、その中の太刀型甲種兵装・刺羽、脇差型甲種兵装・蜂鳥、そして丙種兵装・
「ヨモさんが異界入りしました」
「ああ、
いつもと変わらない恵比寿顔で返すクローマーク中央支部長、
「ヨモさんは二刀使いではありませんから、おそらく蜂鳥は同行者に渡しているかと」
「そうか。同行者とはつまり――」
「はい――接触した異術士、森瀬芽衣だと思われます」
頭をぽりぽりと掻き、少しだけ思案した森造は表情に笑みを戻して望七海を見る。
「分かった。
「分かりました」
一礼し、
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