Track.1-13「待たせたな」
天井に這い上がって張り付いた
その様子を、決して集中を途切れさせずに脳内に明確な
芽衣の繰り出す【
こちら
人間を
人間のように考え、人間のように動こうとする。
苦心して作り上げ繰り出した骨槍を躱された
その憤慨を、【
馬鹿のひとつ覚えのように同じ攻撃だけを、同じ対象だけに繰り出して、そしてそれすらもいなし躱され。
そのことで更に膨れ上がった憎悪の飽和点を赤い羽虫が食い潰していく。
堂々巡りだ。
(“廻廊”とは、よく言ったもんだな――)
心の中で独り言ちて、全てを整え終えた航は立ち上がる。
焼き切れそうな脳の痛みを噛み殺しながら、全身に巡る未だ安定しない太い霊脈を霧散させてしまわないよう慎重に向き直る。
芽衣は変わらず、全身に出来た擦過傷や切り傷から赤い羽虫を舞い上がらせたまま、縦横無尽に、時には立体的な機動で以て骨の槍から致命傷を避け続けている。
躱しきれない一撃も、蜂鳥の刀身をぶつけて軽傷で済ませていたり、無理やり身を
しかし、瞑想を開始してからすでに2分30秒は経過している。
あれだけの緊張下であれだけの消耗をしているのだ、急に糸がぷつりと切れてもおかしくない。
「あっ――」
そして着地点をわずかばかりに見誤った芽衣は、
その時を待っていたと言わんばかりに、未だ天井を這う
【
当然、そんなスピードで繰り出される、
異術士とは言え、一介の女子高生は衝撃波も
しかし射出された骨の槍は、その全てが本来の軌道から逸れて地面や壁に激突する。
驚愕に目を見開く
「待たせたな」
足を滑らせ尻餅をついた芽衣の背後に【
航と芽衣がそこにいる限り、彼ら二人に対して
そして航は、足元で呆然とする芽衣の頭にぽんと手を置いて、見上げたその瞳にくしゃっと笑いかける。
「お前――強いんだな。悪い、見くびってた」
芽衣はただ、飲み込めないその言葉を鼓膜の中で咀嚼し続けた。
そして天井の異形を睨み上げた航は、「終わりだ」と言い放ち、全身に流れる霊脈を両の手に収束させて、この時のためだけに練り上げた新術式を解き放つ。
「“
淡く輝く白い
白く輝く
ずっと聞こえていた怨嗟も呪詛も、もう今では聞こえない。
術式の自動解除を見届けて、航は勝利を確信して大きな溜息を吐いた。
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