午前三時の小さな冒険

久宝 忠

第1話午前三時の小さな冒険

「ククク、ついに、我々は辿りついたのだよ、タロウ」

「なあ、リョウ、やっぱりやめておこうぜ。これは危険すぎる…」

「今さら何を言うんだ。やろうと言ったのはタロウだぞ?」

「いや、まあ、そうなんだが…まさか、こんなにとは…」


タロウは、眼下に広がる光景に生唾を飲み込んだ。

深淵…そう、まさに深淵としか呼べない、圧倒的な暗黒が、足元すぐそばにある。

そこから聞こえてくる波が打ちつける音。


20メートル以上の断崖絶壁の上に、二人は座っている。


時刻は、ちょうど午前三時。

午前零時から三時までの未明。午前三時から六時までの黎明。

その二つが交わり、切り替わる、最も不安定な明。



「それではタロウ、そろそろ始めるとしよう!」

「本当に…やるのか…」

「くどいぞ、タロウ」

この期に及んでも逡巡するタロウに対して、リョウは鋭い言葉を叩きつけた。

それによって、タロウもついに諦めたらしい。

「わかった…準備を始めよう」


黙々と、その準備に取り掛かるタロウ。

それを見て、偉そうに頷くリョウ。

「なんと背徳的な光景か…」

リョウが呟いたその言葉は、タロウには聞こえていない。



3分後、全ての準備が整った。


「よし、タロウ、行こう! 僕らの冒険の始まりだ!」

「リョウ、本当に、これ親父さんが…?」

「ああ。大人にとっても、かなりな冒険らしいぞ」

ニヤリと笑ったリョウの表情は、とても悪そうであった。

タロウは一つため息をついて、頷いて言った。

「やろう!」




ジュルジュルジュル

ジュルジュルジュル



「美味いな!」

「リョウ、カップ麺が美味しいのは当然だよ…午前三時じゃなくても、崖の上じゃなくても…」

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