出し物10 漫才 ふんどし親子
「こんちはー、ふんどし親子でーす」
「父ちゃん。母ちゃん、帰って来ないね」
「うーん……」
「書き置きがあったよね?」
「うーん……」
「何て、書いてあったの?」
「探さないでくださいって」
「美容院に行ったんでしょ?」
「うん。このコロナ禍で5ヶ月、髪を切ってないって言ってたからね」
「原型が分からなくなってたもんね」
「そうだな」
「父ちゃんも床屋に行ってないよね」
「ハゲだからね」
「父ちゃんも原型が分からないよね」
「コロナ禍前からだけどね」
「父ちゃんと母ちゃんはどうして結婚したの?」
「金が無かったからね」
「父ちゃんが?」
「そうだね」
「ヒモって事?」
「良く言えばね」
「悪く言えば?」
「ヒルだね」
「だからヒルナンデス、見てるんだ」
「仕事が無くてヒマだからね」
「テレビで良く、タレントの自宅の映像を見せる番組があるよね?」
「あるね」
「あれは、うちはヤバイよね?」
「そうかね?」
「庭に大麻が生えてるじゃない」
「野生のね」
「あんなの映せないじゃない」
「抜いても抜いても生えてくるからねえ……」
「アパートなのにねえ」
「大家がズボラだからねえ」
「火事になったらどうするの?」
「みんな、ラリっちゃうよね」
「消防士さんも?」
「そうなっちゃうね」
「父ちゃんの頭にも大麻が生えてくればいいね」
「抜いても抜いても生えてくるからね」
「焼けたらどうすんの?」
「死んじまうわ!」
「ラリる前に?」
「死んじまうわ!」
「母ちゃんも芸人だったんでしょ?」
「そうだね」
「なにやってたの?」
「漫才だね」
「売れてたの?」
「父ちゃんよりは、ね」
「コンビ名は?」
「ズロース」
「芸名は?」
「
「
「そうかね?」
「どうして辞めたの?」
「父ちゃんと結婚したからね」
「何で、結婚したら辞めなきゃならないの?」
「二人のギャラじゃ、生活できないからね」
「それで母ちゃんはスーパーで働く事になったの?」
「そうだね」
「父ちゃんの方が売れてないんだから、父ちゃんが働けばいいのに」
「父ちゃんはスーパーの面接に落ちたからね」
「仕事はスーパーだけじゃないでしょ!」
「工事現場の誘導係も落ちたよ」
「自慢気に言うな!」
「あ! 母ちゃん、帰って来たぞ」
「ゲ! 何で探さないんだ、て起こってる!」
「家出しよ!」
「何でだよ!」
架空寄席(カクヨセ) ロックウェル・イワイ @waragei
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