第13話

 俺の名前は〈百瀬浩輔〉。大学受験に向けて、学校と塾に入り浸っているただの高校生だ。



 小中高と続けていたバレーも、夏休み前の大会であっけなく初戦敗退し、悔しいながらもやりきった達成感の中、勉強に打ち込んでいるところだ。



 勉強に集中したい...のに、最近気がかりなことがある。



 幼馴染の小森花の事だ。



 最近東京から転校してきた、佐倉という男の家にどうやら入り浸っているらしい。ちなみにこの情報は、藤崎和葉が聞いてもいないのに教えてくれたものだ。


 ...何故わざわざ俺に言ってきたのか?と言うことはひとまず置いておく。



 幼馴染が男の家に入り浸っているというのは、なんとも心配なものである。



 ...もちろん、深い意味はない。




 ただ、騙されているのではないか?とか危ないことをしているのでは?などと、俺が勝手に心配しているだけである。



 昔からの幼馴染...今は、なんだかこっぱずかしいので名前で呼ぶことも無くなったが、小森や藤崎はなんとなく兄妹みたいな...そんな感じだと思っている。そんな奴らが嫌な目に合うかもしれないって言うのは、誰だって心配だろう?





 いつものように学校へ行くと、靴箱のところで藤崎がいたので声をかけた。俺や藤崎を含めた、大学進学組は夏休みにも補修にでているのだ。



「え?花がイケメンの佐倉くんちに入り浸っているから、襲われないか気になるって?」


「大げさに解釈するな」


 藤崎は楽しそうにカラカラと笑う。女子という生き物はどうしてなんでもかんでも笑えるのか...謎だ。




「わかってます〜。何か危ないことでもしてるのか心配なんだっけ?まぁそれは、大丈夫みたいよ」


「...そうか」


「というか、私に聞かずに本人に直接きけばいいじゃない」


「あ、あいつ、夏休み入ってから学校来ないだろ。タイミングが無かったんだよ」


「まーねぇ...」



 藤崎は、何か言いたそうだったが、何か思いついたように、スマホを出した。ぽちぽちと何かを打っている。話の途中に、スマホをいじるとは失礼なやつだ。



「今、連絡しといたよ」


「は?」


「浩輔が、花が佐倉くんちに入り浸っているのが心配だって言ってるよーってね」


 藤崎はニヤリと笑って、メッセージ画面を見せてきた。なんだその変なスタンプ、俺か!?



「だから...!言い方!」


「まぁまぁ、お?すぐ返信きた。《何もないから大丈夫》だって、よかったね!」


「俺は別に...」




 そうだ。俺は別に関係ない。あいつが何をしようが、気にしない。俺が何か言うのは違うんだ。



 考え方をしながら歩いていると、ばん!!という音と共に、急に背中へと衝撃がきた。


「いたっ」



 大した痛みではなかったが、背中を叩いた本人は足早に先に進み、振り返って俺を見つめた。



「なんだよ..?」


「うーん?花ならこう言うかも“ロックじゃない!”ってね」




 わけの分かっていない俺を残し、さっさと教室へ入って行った。ロックとは...?意味がわからなすぎて、頭にハテナが浮かんだ。やっぱり女子は訳がわからない。

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