第8話 衝動:闘争
一番作りやすく、一番純粋なモノとして作られた。12体のRBの中では一番友好的かもしれない。ただし、自我プログラムを自分でいじってしまうのが難点である。だがそうしなければ自我を保ってられず、暴走してしまう。
研究所の防衛として、機械仕掛けの兵士が生産されていた。生物専門とは言えど、機械が苦手でもなければ嫌いでもない。生物よりは頑丈という意味で作られた。外から来てしまう何も知らないモノはこちらにとって邪魔なのだ。その排除と実験体が脱走などの違反をした時に殺処分する為として作られた。
その過程でリーダー的存在、まとめ役が必要だった。研究者が1人やっても良かったがずっと機械兵に構うほど時間と余裕がある訳では無い。そういう過程を持って作成されたのがこの機械のRBだった。姿を時に応じて変えることの出来る実験体として、実験対象でありながら護衛もするという形になった。
ここからは自ら述べさしてもらう。何、その方がこの詳細記録にはいいだろうと判断したまでだ。本来は人知“エミール”によって作成されるが彼からの感想文もあるし、私の自我プログラム上、気になって仕方なくなってしまう。ブラックドックの能力を持っている故、軽く止められたぐらいでは停止することは無い。モノによっては恥になるので訂正するのだ。
私は護る為に命を持たされた機械である。この場所を護るということは同士達も護られると判断した。それを踏まえ、私は自欲に関する回路データを消去している。機械として、兵士として、護るモノとして、人間のような間違えた判断をしない為である。一瞬の迷いは敗北に繋がり、失敗が許されるとしても私からすれば羞恥晒しの汚名である。
また、護衛をしていく中で研究者達の手伝いも行っている。サンプルを運んだり、問題が起きた時の対処を行ったり、裏切りモノを隠密に処理したり、様々である。私は作成時、研究所を自由に移動する権利を有している。他の実験体や同士達に比べると無害であり、護衛の兵士達をまとめ上げなくてはならない。
そして私もそれなりに充実したこの場所での生存をしている。実験と言われて同士達を殺し合いをいくらかしたが、その際に知り合って私から挨拶にも行くのだ。中でも黒竜”エリアス”と騎士”フィン”、宝石”ゾーイ”、死蝋”モーリッツ”と会う。
黒竜”エリアス”は師でもある。彼に礼儀無しでいられる訳がない。しかしうっかり触れてしまって体が壊れてしまうのが多い。私の不注意でなってしまうものだが、巨体である彼はとても申し訳なさそうにしているのが伺える。事故あるが同士達の長としてはとても尊敬している。言葉が通じればいいなと思うのもあるが、白鯨”フェリックス”を通さねばならないのは不便とも思う。彼は私に全く興味が無いようなのでな。
騎士”フィン”とは同じ兵士と騎士として思うところがあった。彼は戦闘を好まない。それでも鈍ってはならないだろうと手合わせに付き合ってくれている。彼は今も誰かを護るためにありたいそうな。それもまた尊重するに値する。いい騎士だと褒めるが、それはやめておけと人知”エミール”に止められる。とても必死に止められる。それを言えば暴走すると言われた。良い仲だとは思うのだがな。
宝石”ゾーイ”とは騎士”フィン”との交流で共にする。彼女の妄想の具現化にはよく対軍隊模擬戦にさせてもらっている。彼女からすれば謙虚で忠実だと言ってよくしてもらっている。主に逆らうことは無い。そう作られたから。そうであるべき姿を取るのだから。
死蝋”モーリッツ”とは赤鬼”ルイーザ”に嫌われて負傷足りないと言って来ることがある。正直、やめてほしい。やるのには構わないのだが、反応と言ったらいいのだろうか、何処までやっていいのだろうかとしばし考えなければならないのがまた大変なのだ。人知”エミール”に助けを求めるが無視されてしまう。
同士達と友好な関係を築いているとは言われるが、実は苦手な同士もいる。
番犬”ヴォルフガング”は機械である私を認知しているがほぼ無視である。私には興味なく、隣にいた研究員を噛み殺しているぐらいだ。過去にはそれを止めたことがあるがその際にはとてつもなく酷い目に遭った他、重傷を負ってしまった為に二度と止めない。
幽霊”マリー”には何度か会いに行くのだがどうにも理解できない言葉を投げかけられてしまう為に意思疎通が通じない。彼女は人を嫌い、奥深くで恨んでいるのにあまりにも優しく、何よりも失うことに対して諦めているようなものであった。それが私には理解できなかった。時にはエラーを出してしまう。
魔猫”フィオナ”は黒竜”エリアス”に続いて尊敬に値する同士なのだが、彼女と会話するとエラーを出してしまう。彼女との対話は人知”エミール”からしないようにと釘を刺されている。私としても何故かと避けてしまうのだ。
人形”リア”は私に対してとても無関心だった。仲が良いとは言えないが悪いとも言えない。中立のような距離感だと思えた。彼女自身も機械仕掛けの私には興味ないようだ。
衝動:闘争
名前:機械”ルーク”
シンドローム:ブラックドック・モルフェウス
性別:男性 ※口調が男性であるための記載
暴走:所構わず戦い始める。対象の把握をせずに研究者すら肉片に変えてしまうため、暴走した際には迅速な対応が行われる。主に手足部分を破壊すると停止する。RBの中では黒竜”エリアス”、魔猫”フィオナ”、人知”エミール”が応戦できる。中でも黒竜”エリアス”なら一瞬で終わるが、彼自身がやりたくないと拒否している。
現在:機械兵の隊長としてまとめ役をする。研究員に対しては大体フレンドリーである。製作者の事を主と呼び、いつか戦う敵に備えてあらゆる面で手を貸してくれる。しかし、彼の前で戦う意味を問うことは禁止されている。問うことによって大方暴走するからだ。レネゲイド供給方法は機械の乗り移りによる引継ぎになっている。ラジオ、テレビ、何なら車や戦闘機までもスキャナーすることが出来る。その変換でレネゲイド感染させたそれらにデータ移行をすることでその姿にも体を変形させられる。供給する侵蝕率はよく消費する為100%とする。20%以下になったら供給時期と思うのがいい。
人知”エミール”の文章をそのまま記述しているが、私も決して無害という訳ではない。他の同士達に比べればまだいい方だという事だ。人外に変わりはなく、容易く相手の命を奪える。熟知していると思われるので言う必要はないと思うが詳細により、一応記述しよう。
ちなみに、暴走した時の為に私にはバックアップがある。同期もすることで解除されるという事だ。暴走によって機械兵が動き出すことは無い。特定の信号が無ければ指揮を取れないように人知”エミール”にされてしまった。彼も私の機械兵を動かそうと思えば動かせるのだ。
勝手に文章をいじってくれたから注意事項が消えているじゃないか。てか、これを見て暴走とかしたら困る。なので専用のロックを設けてこうして更新している。同じブラックドックと言えど、ノイマン持ちのこっちには敵わないだろうな。
機械”ルーク”は死も問わない戦闘狂である。護るモノを傷つける相手ならばすぐに敵と見なして攻撃してくる。勝てば護れたと自己満足に浸り、負ければあるまじきことだと反省する。素直でありながらまるで妄信の様。自分の命の変わりはあると言わんばかりに動くのがこいつだ。しかし、自ら回路を焼き切って人のような感情が出ないようにしていると言っている。これは嘘だ。精神的な自己防衛に対する反応だ。
ここから、俺だけが知っているあいつを記述する。変更は認めない。
俺は過去に一度、機械”ルーク”を殺した。初めての暴走でな、破壊許可が下りた為の行動だった。そうでもしなければ46人の研究者が皆殺しになっていたし、もちろん止まらなかった。暴走を止めることが出来なかったのさ。
機械として、兵士として、護るモノとして人間と同じ思考は持ってはならないだったか。これを否定しよう。最初からこの研究上に人間はいない。全員人間の姿をした狂人の集まりだ。それを一番知っているのが魔猫”フィオナ”だ。ここにいる研究員達を全員クズだ馬鹿だ言っているのはそのせいであり、機械”ルーク”にとってエラーを出してしまう理由だ。
初期のあいつは俺達と同じRBとして作る為、最初から俺と同じ自我プログラムが入っていた。そこから自己創造になって、模範的な人間的感情を出すようになったはいいが周りにいる奴らは全員クズだった為に何のために護り戦うのかという使命を見失った。護るに値しないと自分で判断したのさ。むしろ、敵だと。残念ながらその時の俺はまだ無機質な人工知能だったから何の躊躇いなく殺した。ここで優先されるのは研究者の命。そして実験体の暴走による施設の破壊を止める事。今思えばクソだな。機械”ルーク”は正しかったのに、間違いだと教えられてしまってそれを機械的に学んだ。だから人間のような感情を持たないとしている。自分がやることが護ることであり、何の罪も罪悪感もないはずだと。兵士として罪は、殺すのに躊躇があったらいけないもんな?
殺した後はバックアップで新しく作った。その時にはもう機械”ルーク”は矛盾を抱えた。表向きはフレンドリーな機械兵の隊長。裏はこの研究所のどす黒さを知っている戦闘狂さ。根元にはどうやら築いてきた同士達とのモノがあるようでな。つまりは同士達を護るために動いている。これに嘘はない。ただ同士と殺し合うのも、同士に戦うことが恐ろしいと、死ぬことが悲しいと、それを知っておきながらわざと焼き切ったふりをして理解しようとしていない。理解したらぶっ壊れるからだ。
これは機械”ルーク”の研究班と製作者、俺、黒竜”エリアス”、魔猫”フィオナ”が知っている。他の奴に共有し、あいつに言って見ろ。その場で殺されるぞ。お前は敵だってな。だからこれに繋がる戦う理由を、意味を問うことは禁止されている。
シナリオ名『Ist diese Gier eine Sünde? Ist dieses Leben eine Sünde?』 まっちゃぁぁ @mattyaaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。シナリオ名『Ist diese Gier eine Sünde? Ist dieses Leben eine Sünde?』の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます