第12話 巫女の正体

  突然現れた巫女に俺は目を奪われた。

切れ長な目、艶のある長くて美しい黒髪、まさに絵に描いたような巫女が現れたのである。男でなくたって目を奪われるであろう、それほどの美しさだ。

 

(お、おおぉ、めっちゃ綺麗…。)


 俺が感動していると、ふと冷たい視線を感じた。

視線の感じる方を見ると、イザヨイが目を細めジーッと見てきているではないか…。


(神通力、止めてください…切実に…。)


「はぁ…、まあ良い。

ところでお主、の巫女と見受けられるが何者じゃ?」


 イザヨイが巫女に問い掛けたが、当の本人は全く聞いておらず、手を握ったり、開いたり、他にもまるで自分の身体を確認するかのような動きを繰り返していた。


「おい、お主聞いておるのか?」

 

 イザヨイがもう一度問い掛けると、動かしていた手をピタリ止めて、今度は俺のことを急に見つめ出した。

見つられた俺はというと、頬を赤らめ心臓の鼓動が早くなっているのを感じた…。


 だが、次の瞬間に事態は一変する…。


 俺のことを見つめていた巫女は、次にその切れ長な目でイザヨイのことを睨みだし、なんと飛びかかった。

さらに、胸倉を掴みながらこう言った。


 「貴様!睦月をよくも危険に晒したな?」


(え、ええ? どういうこと? って、え?)


 俺は事態が飲み込めず戸惑っていたのだが…、

イザヨイは胸倉を掴み返し、冷静にこう言い返した。


 「なるほど、そういうことか…。

 お主、よほど肝っ玉が据わっているようじゃのう?

 土地神である妾に対して、この狼藉…。睦月のことをつけ回しているだけのただの

ごときが、少しがあるからと図に乗るなよ?」


「何が土地神だ!

 あのような邪なものを野放しにしておいて…、

 がいなければ、睦月はどうなっていたか…。」


「お前が助けていなくとも、妾が助けておったわ!」


「何を!」

「何じゃと!」


 二人は互いを睨み続けたまま一歩も引かず、しばらく罵り合いを続け、

その間、俺は仲裁に入ることも出来ず、ただ空気のように居座っていた。






「はぁはぁ…。」

「ぜぇぜぇ…。」

「もう…終わりましたか?」

二人が息を切らし始めたところでようやく声を掛ける。


「とにかく、二人とも落ち着いて。

イザヨイはあの"邪魅"をどうすれば退治できるのか?

あと、何故あの"邪魅"を抑えることが出来なかったのかを説明すること!

そして、この巫女さんは何者なのか?」


 俺がそう言い終えると、互いに掴み合っていた胸倉の手を離して座り込んだ。


「じゃー、いきなり現れた巫女さんから説明お願い出来ますか?」


 俺がそう言うと、最初に巫女さんの方に話しを振ったのが気に入らなかったのか、イザヨイはそっぽを向いた。


(はぁ…)


 一方巫女さんは座り直し、また俺の方を見つめながら話始めた。




「私の名前は "葉月" 遠い昔に死んだ退の巫女だ。」



退の巫女…?)



「なるほどのう…、これであの力の合点がいく…」


 

 イザヨイは納得した様子で頷いた…。





 





 








 

 

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カミツキビト シャリ @wasiba

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