堅い文体と難解な内容の”狂夢”の話ですが、解説があるので安心です。私は本文を読んで自分で解釈した後解説を読んで納得し、さらにもう1回読みました。自我とは…。時間とは…。文章の途切れ方が独特で、映像で時間軸が交差する表現が文章で表されているかのようでした。こんな書き方もあるんだ…と目から鱗。短編ながらも詰まった作品です!!
いわゆるラノベ的な読みやすさとは真逆です。あたかも国語の教科書に載っている文豪の小説のような。一読して内容は理解できます。しかし理解できません。明らかに矛盾していますがそうとしか表現できないのです。僕は読み終わった後、映画の『ジェイコブス・ラダー』や『裸のランチ』を思い出しました。作者様は本作品について解説をしてくれました。解説を読む前に、何度も読み直して謎や疑問について自分なりの答えを用意することをおすすめします。
……のように語尾が切れていたりして、斬新な表現です。言語と自我の小説です。タイトル、文体のセンス。作者様の近況ノートに解説もあるので、それと合わせて読むと、より理解できます。深いです!
あえて断絶を含めた密度の高い文章がつづる、程よい「つながらなさ」。古文書を通し、長い時間を経た出来事をリンクさせようという主人公の試みは、達せられたような、達せられないような。最後に彼に乗り移った狂気でさえ、文章は断絶され不確かなまま終わります。息の詰まる、それでも目の離せない、強く太い文章力を楽しめます。