#1話 『I’m from 裏ダンジョンーI’m from secret dungeonー』
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「ねぇ、もう帰ろうよ!バレたらやばいって!?」
「大丈夫だよ、クーフェ。魔力抑えておけば、絶対にばれないって。」
「そりゃそうかもしれない...けどさぁ…。」
この日のために研究した擬態の術は、絶対に見破られない自信があった。それだけ、精巧に人間の形を真似できた。
「この国の王子って、魔族の姿の俺の顔面に結構似てるたしいぜ?ちょっと角を隠すだけで、そっくりさんだぜ。」
「はいはい。あんまりイケメンじゃないって点では私も同意よ。」
「ひでーな。それは、あんまりだぜ…。」
俺は、彼女にも聞こえるように『ッチェ』と舌打ちをする。ーー確かに、そんなにイケメンじゃないかも知れないけれど。
「でも…これが地上なんだな。…いっぱい人がいるし、活気に満ち溢れてる。それに、美味そうな匂いが色んな建物から漂ってくるぜ!な!?クーフェ。」
「分かった、分かったわよ!全く、ダンジョンを抜け出して、地上に遊びに来た..なんて、ダンジョンの
ケツバットは凄く痛そうだ。幼い頃に悪戯をして、こっ酷く叱られたときの苦い思い出は二度とごめんだ。もうあんな思いは
ただ、なんで俺たちがそんなリスクを負ってまで、今ここにいるのか...。
「これが、
「そうね。私達の祖父母が住んでいた世界。…そう思うと、ちょっと感慨深いわね。」
俺たちがここにいる理由。それは、今は亡き祖父母が生まれた地上を、一度見てみたかったからだ。
人間は、その地方ごとに肌の色や瞳の色が異なるが、
ただし、余りにも色々な見た目の種が一緒に生活しているために、もはや、
ちなみに、俺は
まぁ、ふたりとも人間の血が流れているから、少し魔力操作をするだけで、99.9%は人間に近づくことができるのだが…。角も魔術で消せば問題ないし…。
「それにしても…。本当に人が多くて活気があるよなぁ…。昨日は、なにかのお祭りだったみたいだし…。」
俺たちの故郷である裏ダンジョンは、ゆっくりとした時間が流れているけど、少し退屈な感じが否めなかった。
「どこを見渡しても“人、ヒト、ひと”って感じだな!!って...あれ、クーフェどこにいった?」
初めての地上に内心はしゃいでいたせいか、クーフェを置いて、
「おっと、クーフェを探さないとなって…うおっ!!」
ーードンッ!!
人混みの中をすごい勢いで走ってきた男と肩がぶつかる…と同時に、男は転んでしまった。俺は種族的な問題で、ビクともしていないが、爆走男はコケて尻もちを着いたせいか、痛そうにうめき声を上げている。
「い゛だーーーい゛・・・し、しんでじまう゛ーー。」
「おいおい、大丈夫かよ…。でも、死ぬって大げさな…。」
「我輩…痛いのは苦手なのである…。で!あ!る!が、しかし、今は逃げるのに必死なのである…。」
コートに身を隠した男はお尻を擦りながらも、俺の方を向き謝罪の言葉を向けてくる。
「お主…急にぶつかって悪かったのであーる…。謝るのであーる。許してほしいので、あぁ...あ゛あ゛あ゛!!!」
「おいおい…次はどうしたんだよ。どっか、別の場所を痛めたのか…?」
なんで俺はこいつの心配をしているんだ、という気持ちに駆られながらも、なぜか憎めない男の話を聞いてしまう。
「お主…なんて我輩に似とるんじゃ…瓜二つじゃないないか…なのであーる!!」
「そんなわけ…俺に似てるのは、この国の余りイケメンじゃない王子ぐらいって、げげっ!?」
フードを取ったその男の顔は、確かに俺に似ている…。爆走男の素顔は、角を隠した俺の顔に、余りにも似ていて少し自分でも惹くぐらいだ…。
「おいおい…。この国の王子様がなんでこんな所に…。さすがに、俺が地上の事を知らなくても、王子様がこんな…みすぼらしい格好で、夜逃げするみたいな
「地上…、というのがなんの事か分かりかねるであーるが、紛れもなく我輩はこの国の第1王子のダン・ル・ドヴァール。これでも、王子なのであーる。」
「いや…そんな格好で言われてもなぁ…。」
同じ顔をした男が、仮にも帝国王子だと知ったときには、会ってみたいと少しテンションが上がったけれど、理想と現実は随分と
「なにか…訳ありか…?」
ダンは、その余り美しくない瞳に、ウルウルと涙を浮かべながら、お涙頂戴とばかりに語りだす。
「聞いてくれるのか友よ!!我輩はその心使いが嬉しいのである…。我輩は…今、誰にも頼れず…逃げているのであーる…。ウウウ…ヴワーン。」
「コラッ!泣くな泣くな、目立つだろ!仮にも、追われている身なんだから…」
《それに…、自分と同じ顔が、泣きべそをかいているのは、精神安定上、非常に良くない。思った以上に…キツイ…。》
「泣くのは、後でも出来るだろ。まずは、どこか身を隠すぞ。」
「わ、わかったのであーる。感謝するのであーる。…そ、そういえばお主の名は…。」
「あ、俺の名か?...ハイデだ!」
「ハイデ殿!いい名前なのであーる。…それでは…誰にも見つからない様に…ひっそりと裏道に移動するのであーる。」
そう言って、俺たちは出店が立ち並ぶ小道をスルスルと通り抜け、たどり着いた裏路地は、異様なほどに静まり返っていた。俺たちは、再び会話を続ける。
「で、一国の王子がフードに身を包んでいた理由を聞こうか。何に巻き込まれているんだ?」
「うーむ、どこから話したものか…実は…。」
ダン王子の話を要約すると。
この
国民には知らされていないが、既に現帝王や女王は崩御しており、その重大な国家機密を隠蔽する裏で、次の玉座をかけた
帝国王族の分家である
1つ目の事情は、力の
2つ目の事情。それは、隣国の敵国の存在である。帝国はその土地柄、4つの他国に囲まれていた。連邦国、亜人国、義勇国、神拝国である。連邦国とは現在同盟状態にあるが、何時裏切るかの保証はできない。亜人国と義勇国とは、小競り合いは覗いて、十年ほどは大きな戦いは記憶無いが、常ににらみ合いの状態は続いている。神拝国に関しては、宗教上の小競り合いが絶えない。それ故に、表立って、内乱を起こすわけにはいかなかった。隣国へ自国の
しかし、小国王達は自分たちこそが
1.
2.
3.
4. ゲームの勝者は次の帝王となり、全ての者は新たな帝王にひれ伏すこと
ダン王子は、内通者である嫁候補達の机の中を漁り、この内容が書かれた文書を見つけたという…。自分の結婚する相手までも、策略の渦中にいる人間っていうのは、王子が救われないと同情する。
そして、文書の最後には…こう
嘘のような反逆が現実のものとなったのは、暦歴卯の月の十二日目の夜。全ての
これがダン王子から起きた7日前の帝王暗殺事件のことの真相である。
「ったく。王族ってのは、いつの時代も権力権力…そんなに食ってうまいもんじゃあるめーし...」
「ははは、ダン殿は面白い御仁であるな…。確かに権力は美味しくないであるが、王になれば、ご馳走もたんまりであーるよ?」
「それは…ちょっと惹かれるけど…それで自分の親戚を殺すなんて、信じられねーな…。俺の故郷じゃミンナ仲間が基本だぜ?」
「それは…凄く羨ましいであーるな…。王族とは自分の権力のために、時として親族の命を奪うこともあるのである…。そんな世界より余程楽しそうである…。」
「ダン王子は、なんとなくだけど…穏やかに過ごしたいって顔をしてるもんな!」
「そ...そうなのであるよ…。正直、権力とか玉座とかには興味はなくて…この国の民と共に、静かに過ごしたいだけなのであるよ。」
ダン王子の顔には、隠しきれない苦い表情が浮き彫りになった。まだ、短い間しか会話をしていないが、ダンは恐らく平穏を愛する平和主義者なんだろうと想像できる。
そうこう考えながら、
《ナヨナヨしてる自分を見るのは、ちょっと気持ち悪いな…。もうちょっと…こう。》
「なあ、ダン王子…いや、ダン!!俺と同じ顔をしているんなら、もっと堂々としていろよ!...確かに大変だとは思うけどさ…。」
「はは…ハイデ殿は優しいのであーる…。そして、強い人なのだろうな。我輩も…ハイデ殿の様に胸を張って生きれたら…こんな事にはならなかったのかも…。」
気の毒な話だが、黒い陰謀が渦巻く王宮の暮らしは、平和主義者のダンには合わなかったようだ。
生まれた時代が悪かったのか、生まれた環境が悪かったのか。
少なくとも、彼が裏ダンジョンに生まれたなら…こんなに精神をすり減らして生きずに済んただろう。あの場所には、静かな時間が流れているから。
《ん…?待てよ…。そうだよな…その手が合った…。》
「なぁ…ダン。そんなに平穏に過ごしたいなら…良い場所があるぜ?」
首を傾げて『分からない』と言った表情をするダンに、俺はニヤリとほくそ笑んだのだった。
続く。
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#2話『Will you go to 裏ダンジョン ?ーWill you go to secret dungeon?ー』
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まだ始めたばかりなので…よろしくお願い致します。
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