I’m from 裏ダンジョン

@uradanjon

#0話 『序章:全ての始まり ーPrologue : The beginningー』

ーー「裏ウラ》ダンジョン」


今、生きている人類の何割が覚えているだろうか…。100年前に帝国の辺境で発見されたそのダンジョンの名前を。


当時、あまりの難易度の高さに攻略対象から外された…今や、忘れられた迷宮めいきゅうと言っても過言ではない。


百を過ぎて幾年か前、攻略に向かった最強と称される6人の冒険者ぼうけんしゃ達は、帝国の国民の期待とは裏腹に、二度と地上に戻ってくることは無かった。


それ以来、挑戦する者はおらず、難攻不落のダンジョンとして恐れられた。それほどまでに、最強の6人の「死」は、帝国に衝撃を走らせた。


「あの英雄達が“生きて帰ってこない”ダンジョンなんて、潜るべきではない」そう、言い伝えられたのだ。


しかし…、これは「語り継がれた」であり、「ではない」。この話には、語られなかった裏話があるのだ。


なぜなら...その6人は死んだわけではなかった。彼らは、望んで帝国には戻らなかったのだ。例え、自分たちが死んだことにされても…。いや、それこそが真の目的だったと言える。


なぜ、彼らがダンジョンから帰還しなかったのか。それには4つの理由がある。


1つ目は、「裏ダンジョンにいるのは“魔物モンスター”ではなく、“魔族デーモン”だったから」

2つ目は、「魔族デーモン人間ヒューマンとの敵対の意思は無く、かつ侵略者である自分たちに寛容だったから」

3つ目は、「魔族デーモンは高度な“知能”を兼ね備えた哺乳類であり、それは人間ヒューマンなんら変わらない“存在”だったから」

4つ目は、「全面戦争を回避するため」


考えたことはあるだろうか。動物や魔物モンスターの死には“絶滅”という言葉が適応されるが、人間の死には“絶滅”の概念がない。


なぜか。それは、命の価値を『』と『しゅ』に分かつ事が出来るからだ。


人間の命は「個」として認知されているが、動物や魔物の命は「種」として認識される。つまり、一匹が死のうとも「種」の全てが全滅しなければ良いという考えだ。


しかし、人間の命はどうだろう。一人が死んでも、殺されても、絶滅しないから良いという判断は、常識的にあり得ないだろう。


その価値観こそ、命の価値を『』と『しゅ』に分かつ事に他ならない。


だからこそ、人間は、動物アニマル魔物モンスターを「喰う」のだ。全てを根絶やしにすることは避けつつも、一匹の「命」には目もくれない。そんなことを気にしていたら、我々は食べることができないからだ。


つまり、我々ニンゲンは...紛れもなく命の重さに差を付ける行為を生まれながらに行っているのである。この地上に平等に生まれ落ちた「命」は等価値ではないのだ。


知能が低い生き物を“個”として認めない。動物アニマル魔物モンスターは“種”としての価値は認められても、“個”としての価値は認められない。そう決めたのだ。他でもない…人間が。


傲慢にも、世界の支配者として君臨する、人間ヒューマンという存在の価値を最上級だと、この地の全ての生物に知らしめるために、決めたのだ。


そんな「人」が、自分たちと同じ知能を持ち、自分たちと同じ魔術を使い、言葉を話す存在を目にしたらどうするだろう。自らの存在と同等の“知能”を誇る種の登場に、人間ヒューマンはどのように立ち回るだろうか…。


答えは...


ーー「戦争」だ。


強欲な貴族や王族達が、「最上級の命の価値」を人間ヒューマン以外に与えるはずもない。その存在を認めることさえ苦痛なはずだ。


肌や見た目が大きく異なる魔族デーモンの知能を軽んじて、魔物モンスターの延長線上で考えるのが関の山だろう。


「命の価値」を根本に立ち返って考えることができるほど、人間という生き物は上手くできていない。自分が頂点トップであることに固執する。同列一位など許さないのだ。


どこかの学者が隣にいたら、「一方的な決めつけだッ!」と叱責されるかもしれない。しかし、これは明白は事実なのだ。


ーーなぜなら、前例がある。亜人ヒューマンビーストの存在だ。彼らは、人間と等しき知能を持ち、運動能力に長けた種である。


オルメド帝国の外には、亜人と呼べる魔物と人間の混種がいる。その出生は定かではないが、遥か昔の人間ヒューマン達が、娯楽でどこを共にした魔物モンスター達がはらみ、生まれてきた者たちだと言われている。


彼らは、半端者だと、虐げられ、帝国の外に彼らだけの国を築いている。たまに、帝国内で“奴隷”として扱われているのを見るが、彼らの「命の重さ」は動物や魔物のそれと変わらない。


亜人ヒューマンビーストのことを考えると、人間と同じ知能があっても、同じ言葉を使っても、他の種をとうとまない人間の「傲慢さ」を考えると、魔族デーモンとの衝突は火を見るより明らかだった。


ただし、人間ヒューマン魔族デーモンが衝突した場合、大きな痛手をこうむるのは“人間ヒューマン側”だろう。なぜなら、圧倒的に“個の力”では魔族デーモンが勝っているからだ。


数で勝負をした場合、“人間ヒューマン側”が勝つだろう。ただし、それは、平たく開けた草原の地での戦いの場合だ。


圧倒的個の力を持つ魔族デーモンを押し切るには、このダンジョンという限られた空間スペースでは不可能に近い。


ダンジョンに小隊となって攻めてきても、魔族デーモンに各個撃破されるのが目に見えている。


なぜなら、S級の冒険者ぼうけんしゃ、帝国内でも最強とうたわれた者がいるパーティーでさえ、わずか一体の魔族デーモンを押し切ることができなかったからだ。


こと、戦闘において人間ヒューマン》は魔族デーモンの膝下にも及ばないということだ。なればこそ、人間は魔族デーモンを自分たちを滅ぼす可能性がある害として見なすであろう。


魔族デーモンという、戦闘に長けた種を何が何でも潰そうと、国の上位が躍起になるのは目に見えている。亜人ヒューマンビーストのときの様に…いや、それほど事態は甘くないかも知れない。「排他」ではなく「排除」。徹底的な駆逐に踏み切る恐れもある。


それで傷つくのは、王族や貴族ではない。冒険者や騎士、そして、戦争に駆り出される「平民」なのだ。決定した人間は、痛みも鑑みず、ただ命令するだけ。代償を払うのは、いつも動く側なのである。


だからこそ、S級の冒険者達は「帰還しない」選択をした。

最強と謳われた彼らが戻らなければ、新しく挑戦する者もいないと考えたからだ。


ーーそして、その選択が正解だったことを...100年の間、誰も近寄らなかったことが証明している。


そして、時は大きく流れ、S級の冒険者達が残した血を受け継ぐ、一人の青年がダンジョンから人間世界に旅立とうとしていた。


これは、世にも珍しい魔族と人間の“混血ゲシュ”の青年と、7人のお姫様のお話である。


もし、青年に「どこから来たのか」と質問したら、彼はこう答えるだろう。


「I’m from 裏ダンジョン」 ーーようこそ。地上世界へ。



<< 次回に続く… >>


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#1話 『I’m from 裏ダンジョンーI’m from secret dungeonー』

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