天蓋ベッドとソフィーの冒険
@tnaka6156
第1話
第一章
二百年前の物語です。
ソフィーはお父さんの手紙が何ヶ月もとどかないので心配でした。
ソフィーのお父さんは大きな船の船長で、お国のため世界中の島々を探検していました。お父さんは珍しい島々のことがらを絵をかいた手紙をひんぱんに送りました。
その、手紙がずっととどかないのです。
「パパはなぜ、手紙を送ってこないの?どうなさったの?」
ソフィーはウサギのぬいぐるみに話かけました
ウサギのぬいぐるみはソフィーの手で生きているように話かけました。
「大丈夫だよ、船が故障して島にとどまっているのさ」
ソフィーは大きなためいきをつきました。
その時、ソフィーのお母さんが薬をもって入ってきました。
「ママ、パパからのお手紙きていない?
」
お母さんは首を横にふりました。
「いいえ、届いてないわ。」
ソフィーは大きなためいきをつきました。
「大丈夫よソフィー、きっと手紙が出せない遠いところでお仕事の探検をしてらっしゃるのよ。」
ソフィーはお母さんから渡された薬を鼻をつまんでのみました。
「ソフィー今日はがんばって窓のところまで歩いてみない?」
「足にちからが入らないもの、ころんでけがするかもしれない。」
「ころばないようにママがささえてあげるから。」
ソフィーは首を横にふりました。
「無理よ歩けないわ。」
ソフィーのお母さんは大きなため息をついて部屋からでてゆきました。
扉が閉まるのを確認するとソフィーは握っていた手の中から先ほどの薬を取出しブリキの缶の中に入れました。
ブリキの缶の中は薬がいっぱいでした。
「薬なんて大っ嫌い。」
そうです、ソフィーは薬を飲んだふりをしていたのです。
ソフィーはまくらの下から大きなステッキをだして車いすをステッキのえをつかってベッドのちかくに引き寄せました。
ソフィーは庭師のおじいさんからもらったステッキで服をとったり、物をよせたりするときにつかいました。
もし、どろぼうが来た時に撃退するためにいつも枕の下にかくしていました。
ソフィーはきように天蓋ベッドのひきだしから服をとったりカーテンを閉めたり開けたりするときのためにステッキをつかいました。ソフィーは車いすにのって窓辺までゆき外の庭を眺めました。
外では庭師のおじいさんがばらの花をせんていしていました。
ソフィーはステッキのえをつかって窓を軽くたたきました。
ソフィーにきがついたおじいさんは笑顔で手を振りました。
ソフィーも大きく手をふって、笑顔でこたえました。
庭師のおじいさんはソフィーがベッドに戻るのを見るとまた、花の剪定の仕事に戻りました。
すると、急に辺りは薄暗くなりました。
「おや?急に曇ってきたな。」
おじいさんは空を見上げると空は一面青空です。
太陽はこうこうと輝いていました。
「おかしいな?雲なんて少しもないけどな。」
おじいさんは首をかしげながら再び花の剪定を始めました。
空からそれを見ている者がいました。
仕事をしているおじいさんの周りに大きな鳥の影が羽ばたいていました。
しかし、おじいさんは気が付きませんでした。
夕方になると風がつよくなってきました。
風はヒューヒューと音を鳴らしながら木の枝をゆらしました。
ソフィーはお父さんからの手紙をいくつもベッドにひろげてながめていました。
ソフィーのお父さんが歩けないソフィーのためにわかりやすくするために水彩で絵をかいたのです。
手紙の絵には見たこともない植物や動物、くだもの、巨大な石でできた顔の石像、奇妙な服を着た人たちがその顔の石像を取り囲んでいるようすを水彩でていねいにえがいていました。
その時玄関の戸をたたく音にソフィーは気が付きました。
「ママーママー!誰か来たわよ。」
玄関をたたく音もだんだんと大きくなっていきました。
「ママー!マーサおばさん!誰もいないの?」
メイドのマーサおばさんも呼んでみましたが誰も答えません。
「買い物でも行ったのかな、誰もいないの?」ソフィーは車いすを引き寄せ玄関に向かいました。
扉をたたく音がますます大きくなりました。
「今出ます、少し待って。」
ソフィーは玄関まで来るとドアを開けました。
すると風がソフィーの髪をなびかせるぐらい外から吹いてきました。
扉は勢いよく開き、その前には大きな男の人が立っていました。
ソフィーは男の人の顔を見ましたが日が暮れていてよく見えません。
「何か御用ですか?」
男はソフィーをじっと見つめて言いました。
「ソフィーは君かい。」
「はい、私です。」
「そうか、じゃあこれは君の物だ。」
男は小さな箱をソフィーに渡しました。
「これは誰からの物ですか?」
男は無言のまま、きびすを返して帰っていきました。
「返事もしないなんて失礼な方!」
ソフィーはベッドの上でその箱を眺めました。
すると箱の結び紐の間に手紙がはさんでありました。
「誰からだろう?」
ソフィーが手紙を開けてみるとその中には、こう書かれていました。
『勇気あるもの、願いが叶う。』
ソフィーは口に出して読んでみました。
「勇気あるもの、願いが叶う?誰からの手紙なんだろう?」
ソフィーは箱を開けてみました。
その箱の中には手のひらに乗るくらいの水晶の石が入っていました。
ソフィーは手にとって光に透かして見ると青白い不思議な色の水晶でした。
「きれい、水晶かしら?誰が何のために送ってきてくれたのかな?」
暗いところにかざすと少し光っているようにも見えます。
「パパ?でも手紙の字が違うからパパのお知り合い?」
ソフィーはだんだん眠くなって水晶をベッドの傍らにおいて寝てしまいました。
窓の外は雨や風がつよくなってきました。
その時、窓の外で大きな雷がおちました。
それと同時に石はひとりでにベッドの下に落ちてしまいました。
下に落ちた石は少しずつ輝いてゆきました。
そして、どこからともなく石の下から水があふれでてきました。
水は段々と部屋中にあふれだし、天蓋ベッドを持ち上げました。
ベッドはゆっくりと浮いて天井に近づいてきました。
その様子を部屋の隅で見ている者がいます。
よく見るとアザラシのこどもです。
心配そうに見ていたアザラシの子はキーキーないて、ソフィーを起こそうとしますがソフィーはちっとも起きません。
ベッドは段々に天井に近づきました。
ソフィーのベッドは天蓋ベッドなのでベッドの上の方が天井につくと、あとは水かさがましてくるだけです。
水かさがソフィーの枕元まで近寄ってきました。
アザラシの子は前にもましてキーキーと大きな声をあげますがソフィーは起きません。
水がソフィーのほほに触れようとしたときにアザラシの子は地響きがするくらいの大声で鳴きました。
すると、部屋の天井やかべが割れて水中にしずんでしまいました。
後に残ったのはソフィーと天蓋ベッドだけです。
天蓋ベッドは大荒れの海原の中をゆらゆらと浮かんでいます。
ソフィーは気持ちよさそうに寝ていましたが、雨が頬にたたきつけられるとさすがに目をさましました。
「なに?どうしたのこれは、夢なの?」
ソフィーは両手で自分の頬を何回も叩きました。
カミナリの大きな音がこだましました。
「キャー!」
ソフィーは起き上がって、とりあえず雨が降りこんでいる側のカーテンを閉めて雨をしのぎました。
ソフィーは自分が立ち上がっているのにきがつきませんでした。
そのくらい、一生懸命でした。
しかし、風が強くてカーテンははたはたと風になびきました。
ソフィーはさけびごえをあげて、布団の中にもぐりこんでふるえていました。
第二章
ソフィーは天蓋ベッドのカーテンが鼻にかかって、くすぐったくて目が覚めました。
きのうのことは、やっぱり夢だったと思い、まくらに顔をうずめました。
いつもと同じ朝だと思いました。
しかし、顔を横切る影が何かおかしいと思い始めました。ソフィーはゆっくりと目をあけました。
そこには人間の姿をしたピンクのウサギがベッドの周りをとりかこんで、ソフィーを珍しそうにのぞきこんだり、中には棚を勝手にあけて、ビーズのネックレスを盗む者もいました。
ソフィーは今までで一番おおきな声でさけびました。
その声は山から山へとどくぐらいのさけびごえでした。
驚いたピンクウサギ人間はいちもくさんに逃げました。
ソフィーはかぶったふとんを少しずつずらして外を見ました。
ピンクウサギ人間達はヤシの木のうしろや、草むらのかげにかくれて、じっとソフィーをみつめていました。ソフィーは勇気をだして起き上がり、まくらの下からステッキをとりだしました。
ピンクウサギ人間たちはステッキを見てうおうさおうしました。
「さあ、かかってくるならかかっておいで!これでばしばしたたくよ。
天蓋ベッドのはしをステッキでたたきました
ピンクウサギ人間たちは怖がって森の奥へと逃げてしまいました。
ソフィーは自分が歩いていることに気がついてヘナヘナと砂浜にへたりこんでしまいました。
ソフィーのまわりには雲一つない真っ青な空と白い砂浜と波の音がひろがっていました。
ペタン、ペタン、ペタンとソフィーの後ろから変な音が近づいてきました。
ソフィーがステッキをもってふり返ると、そこには白い毛でおおわれたアザラシの子供がソフィーを見上げていました。
「あらっ、かわいい子!どうしたの。お母さんとはぐれた?」
「ピンクウサギ人間をおどかしちゃだめだよ!僕の名前はココ。よろしく。」
「えっ!しゃべれるの?ピンクウサギ人間ってあの変な人たち?」
「あのピンクウサギ人間からすると、変な生き物はソフィーだよ。こわがりなんだからおどかしたらだめだよ!」
「だって、私のものを盗んでゆくんだもの。」
「かれらは悪気はないんだよ、森の中にあるフルーツとおなじに、そこにあるから持って行こうとしているのさ」
「だって、わたしのものよ!」
「じゃあ、ソフィーのものだってどうやって証明できる?」
ソフィーが考えている間に反対側からピンクの手がのびてきました。
そしてソフィーのうさぎのぬいぐるみをとろうとするちっちゃいピンクウサギがいました。
ソフィーはだっと走ってステッキの柄でその子の首をつかみました。
驚いたピンクウサギ人間の子供はドタバタとあばれましたが、ソフィーはしっかりと子供の耳をつかんではなしませんでした。
ソフィーは子供のピンクウサギ人間をロープにしばって大きな声でさけびました。
「盗んだものを返しなさい!返さないとこの子をはなさないよ!」
子供のピンクウサギ人間はジタバタしています。
しばらくすると森の中からピンクウサギ人間たちはソフィーから盗んだものといっしょにフルーツをいっぱい入れたかごをかついできました。
ソフィーは用心深く盗まれたものを確認して子供を返してあげました。」
「人のものを盗んじゃだめよ!盗んだひとはドロボーといって悪いおとなになるの。」
ピンクウサギ人間たちはオドオドしてソフィーを見ました。ピンクウサギ人間たちは何やら仲間どうしでこそこそと話し合いソフィーに話しかけました。
「何を言ってるのかわからない」
「ソフィーの顔を描いた旗を見たんだって
「私の顔の旗?」
ソフィーは考えました。
「ソフィーの顔を描いた旗をかかげた大きな船がこの島に来たんだって。」
「そうだ、パパの船だ!画家の人が来て私の顔を描いていったわ」
「画家の人?」
「そうよ、パパは歩けない私のために世界中を見せてあげたいっていってた」
「それでソフィーの顔を旗にして航海しているのか」
「ココそれでその人たちはどうしたの?」
ココはピンクウサギ人間に話しかけました
「その人たちは森の中に入って、一番大きな木の下に穴をほって何かをうめたんだって」
ソフィーは考えました。
「ねえ!私をそこまで連れて行って、これ全部あげるから」
ソフィーは返してもらったビーズのネックレスやきれいなスカーフをさしだしました」
ピンクウサギ人間はみなで相談して、ソフィーを連れて行くことにしました。
森の中は今まで見たことのない動物や植物がいっぱいでした。
ソフィーとココは天蓋ベッドをかつがれておおぜいのピンクウサギ人間と森の中を行進しました。
「まだ着かないの?」
ピンクウサギ人間は遠くを指さしました。
そこにはひときわ大きな樹が森の中から突き出ていました。
こどものピンクウサギがバナナみたいなフルーツをソフィーにあげました。
「ありがとう!」
ソフィーはそのフルーツを食べました。
「おいしい!こんなフルーツ食べたの初めて。」
こどものピンクウサギはとびはねて喜びました。
やっと大きな樹の下に着いたソフィーは穴を掘り返してもらいました。穴は深いらしく何匹ものピンクウサギ人間がかかって掘ってゆきました。
その時、一匹のピンクウサギ人間がかたい木の箱を掘り当てました。
その箱を開けて中を見ました。
おがくずの中から防水用の油紙に包まれたものが出てきました。
ソフィーは包み紙を解いて中のものを見ました。
それは金属でできた板でした。
ソフィーはその金属の板をじっとのぞきこんでいましたが、とつぜん泣き出しました。
あまりの大泣きでココやピンクウサギ人間たちは驚きました。
「ソフィー!どうしたんだい、なぜ泣いているの。」
「だって、この板パパが書いた板なんだもの、だってパパが・・・」
ココが金属の板をのぞきこむと、こう書いてありました。
「この島を私たちの国は、私の最愛の娘の名をとって、ソフィー島と名付ける。」と書いてありました。
「きめた!私がパパを探し出して助けてあげる。」
「探すって、どう海を渡るのさ。船なんてないだろう。」
「だって私は天蓋ベッドでこの島に着いたのよ。あれでどこだって行けるわ。」
「えー!あれで、ベッドだよ。」
「大丈夫!あの嵐を乗り切ったベッドだもの、しかもいつでも快適に寝ることが出来るわ。」
海にプカプカと天蓋ベッドは気持ちよさそうに浮いてます。
ソフィーは自分のビーズの首飾りをピンクウサギの子供たちに分けてあげました。
ソフィーはずっと寝たきりだったのでたくさんのビーズの首飾りを自分で作ったのです。
ピンクウサギのこどもたちは喜んでとびはねました。
「じゃあ、出発するね。ところでパパの船はどちら側に行ったの?」
ココはピンクウサギ人間にたずねると、ピンクウサギ人間たちはいっせいに東側を指さしました。
そして、ピンクウサギ人間は何やらソフィーに話しかけました・
「なんて言ってるの。」
「あちらの方向には恐ろしい島があるから気を付けてって言っている。」
ソフィーは身震いしました。
「恐ろしいってどんな?」
「昔からのいいつたえだからみな、知らないらしいよ。」
その時、ピンクウサギ人間たちの中からピンクウサギの子供たちがざるにいっぱいの緑のオレンジを持ってきました。
おとなのピンクウサギ人間の一匹がそれを半分に切りソフィーの顔の上に持ち上げ何かを言いました。
「口を大きく開けてごらんと言っているよ。」
「どうして?オレンジでしょう?」
「いいからいいから。」
ソフィーは訳も分からず口を大きく開けました。
片手でギュッと押さえた緑のオレンジから絞り出された汁はソフィーの口の中に入っていきました。
ゴクンと飲み込んだソフィーは顔中をしわくちゃにするくらいしかめました。
「すっぱい!」
ココとウサギ人間たちはケラケラと笑いました。
「ははははは!こんな面白い顔初めて見たよ。」
「こんなすっぱいオレンジ初めて!なんなのこれ!」
「これはね、長い海の航海で野菜が食べれないため恐ろしい病気になるのを防ぐためのフルーツなんだって。」
ソフィーはまだ顔をしわくちゃにしていました。
「毎日一個は食べるんだよって言っている。」
ソフィーはすっぱすぎて声が出ません、ただうなずくだけでした。
天蓋ベッドの上には食料のフルーツや木の実や水代わりのココナッツがいっぱい積んでありました。
ソフィーはゆらゆら揺れている天蓋ベッドの上で浜辺のピンクウサギ人間たちに大きく手を振って別れを告げました。
しかし天蓋ベッドはちっとも前に進みません。
「ソフィーちっとも前に進まないよ。どうするの?」
ソフィーは考え込んでしまいました。
その時風が吹きカーテンがソフィーの顔をなでました。
「これよ!カーテンで風を受けると進むわ。」
ソフィーは天蓋ベッドについているひもをカーテンのすそに結び付けました。
すると、カーテンに風がいっぱい入り船の帆のように大きくふくらみました。
ソフィーは体重を精一杯かけて踏ん張りました。
天蓋ベッドは勢いよく進みました。ソフィーは片手を振って別れを告げました。
島の浜辺では何百匹ものピンクウサギ人間が飛び跳ねて大喜びで別れを告げました。
第三章
夜になると風は止みソフィーの天蓋ベッドもピタリと動かなくなりました。
空は満点の星空でまるで砂糖をまぶしたようです。
「風がなくなったから進まなくなったね。」
ソフィーは足を水につけながら言いました。
「たまには休むさ。休むからこんな美しい星空をじっと見ることが出来たんだから。」
「そうだね。ココはいいことを言うね。でも、ちょっぴり暗くてさみしいね。私たち以外誰もいないしね。」
「そんなことないさ、どんなところだって生き物はいっぱいいるさ。」
ココはそういうと海の底にもぐりました。
ソフィーは独りぼっちになり心さびしくなりました。
「ココ!ココ!どこに行ったの?戻ってきて!」
あたりは波の音しか聞こえません。
「ココ!」
ソフィーは泣き出しそうになりました。
すると、海の底がだんだん明るくなり出しました。
ソフィーは驚くと同時に好奇心で海の水をすくってみました。
ソフィーの手のひらの中に光るプランクトンがいくつも動いていました。
「光っているのはプランクトンね。海の中にも蛍みたいなのがいるのね。」
その時ココが浮かんできました。
「ココ!どうしたの?私一人で取り残されたとおもった。」
「ソフィーが寂しがっているから頼みに行ったのさ。見てごらん!」
ソフィーは光る海の方に目をやった時、勢いよく何匹ものイルカがジャンプしました。
ソフィーは驚きました。
「イルカだよ。ソフィーが寂しがっているから勇気づけてくれているのさ。」
イルカはジャンプしてきりもみしたり、宙返りしたりしました。
「うわー、すごい!宙返りもできるのね。」
ソフィーは盛んに手をたたき、ソフィーの顔には笑顔が戻りました。
第四章
「ソフィー!ソフィー!島に着いたよ。島に着いたってば!」
ソフィーはココの声で目が覚めました。
ソフィーたちは岩場ばかりの海岸に着きました。
空はどす黒い雲が渦を巻いて流れています。
「着いたの?昨日は風がなかったのにどうして着くことができたの?」
「イルカたちがロープを引いて連れてきてくれたのさ。」
ソフィーはココをカーテンで包んで背中に背負い岩場を登りました。
「ソフィーお願いだから転ばないでよ。」
ココは怖がって目を閉じました。
「あともう少しよ。」
ソフィーが岩場を登りきると、そこには枯れ木の森がずっと続いていました。
その上には黒い雲がどんよりと漂っていました。
「どうしよう、どこをどう行ったらいいのかわからないわ。」
「とりあえず森の中に入ってみようよ。お父さんの探検隊もきっと水を探しに入っていったと思うよ。」
「そうね、船で大切なものは水と食料よね。私もしんせんな水を飲みたい!ココナッツのジュースは飲み飽きた。」
「じゃあ、ソフィー前進あるのみ!森に向かって進めー!」
「あなたはいいわね。私の背中で命令するだけだから。」
「そんなことないよ、僕も人間みたいに長い脚があったら風のように走ってみたい!きっと気持ちよいだろうね。」
「それはそうと森の中に猛獣はいないよね」
「猛獣!・・・ウーン ブルブルブル。枯れ木で槍を作って持っていこうか。」
「どうせ作るのは私でしょう、背中で命令する人はいいわね。」
「そんなことないよ、僕だって手があれば手伝っているよ。」
ココはパタパタと前足をたたきました。
枯れ木の森の中は冷たいよどんだ空気が流れていました。
ソフィーは注意深く森の中を進んでいます。
「ココ、水が流れる音は聞こえない?川があるとせせらぎの音が聞こえると思うけど。」
ココは耳を澄ませました。
「何も聞こえないよ。不気味だね、森だというのに鳥や虫の音も何も聞こえない。」
「そうだね、何も聞こえないね。でも、何かに見られているような気がする。」
「ウワー!変なこと言わないでよ。」
「ゴメンゴメン!私の勘違い気にしないで。」
その時ソフィーの後ろの枯れ木に影が走りました。
ソフィーはそれに気が付きませんでした。
森の中はだんだんと薄暗くなってきました。
「ソフィー、暗くなってきたから今日はこのくらいにして帰ろうよ。」
「そうね、おなかもすいたしね。今日は帰ろう。」
ソフィーは来た道を引き返しました。
ソフィーは少し早足になって歩きました。
「ソフィーなんとなく来た道と違う気がするんだけど。」
「言われなくても私もそう思って焦っているの。」
「エー!道に迷ったの?」
「仕方ないじゃない、枯れ木ばかりで景色が同じなんだから。」
ソフィーは心細くなって泣きそうになりました。
「待って!ソフィー!静かに!」
「何、どうしたの?」
「水の音が聞こえる。」
ソフィーとココは耳を澄ませました。
「聞こえる、水が流れる音。」
ソフィーは、音が聞こえるほうへ走り出しました。
枯れ木の森の中を抜けると少し明るくなって湖が見えました。
「ココ!湖よ、ほらきれいな湖。」
ソフィーは湖にココを下して、手ですくって水を飲んでみました。
「おいしい!水がこんなにおいしいなんて初めて思った。」
「やっぱり水の中はいいね。」
ココは喜んではしゃいでジャンプしました。
「うん!湖のあちら側に誰かいる。」
ソフィーはココが言った方を見ると数人の子供たちが水を汲んでいるのが見えました。
「人間よ!人間の子供たちだわ。」
ソフィーはココを抱えて走って子供たちのいるところへ向かいました。
子供たちはソフィーが走ってくるのを見て逃げ出しました。
「待って!私はソフィー怪しいものじゃないわ!待って、聞きたいことがあるの!」
子供たちは走るのをゆるめましたがソフィーを警戒して距離を取っていつでも走れるように後ろ向きです。
「湖で何をしていたの?」
ソフィーが三歩近づくと子供たちも三歩離れます。
子供の一人がかごの中から竹の水筒を取り出して水を流して見せました。
「そう、竹の水筒に水を入れていたのね。お母さんに言いつけられたの?」
子供たちは後ろ向きのまま首を振ります。
「ソフィー、何かおかしくない?」
「何が?」
「顔を見せないじゃない。」
「みんな恥ずかしがり屋なのよ。」
「そうかなあ、しゃべらないし。」
「その水筒いいわね。」
すると、一人の子供が水筒をひとつ地面において歩き出しました。
「え!くれるの!ありがとう。」
ソフィーは水筒を拾ってごくごくと水を飲みました。
「ありがとう、お礼にビーズのネックレスをあげる。」
ソフィーは首からネックレスを取って子供たちに渡そうとしました。
しかし、子供たちは走り出してしまいました。
「待って、怖がらないで!」
ソフィーは追いかけました。
子供の一人が転んでしまいました。
ソフィーは転んだ子供を抱き上げました。
「怪我しなかった?大丈夫?」
ソフィーが子供の顔を覗き込んだとき驚きました。
ソフィーは息をのんで声が出ません。
その子供の顔は目も鼻も口も耳も何もありません。
子供は、ソフィーの手を払って走って逃げていきました。
「ココ!見た?顔何もなかったよ、目も口も鼻も耳も何もなかった。」
「うん!そうだね。ソフィーが驚くからみんな後ろ向きだったんだ。でも、悪い奴らじゃないよね。ソフィーに水筒くれたしね。」
「そうだね、悪い人たちじゃないみたい。」
「それよりか、暗くなってこれから海の方には帰れないよ。ソフィーどうする?」
ソフィーは周りを見渡しました。
もうすっかり周りは暗くなっていました。
ソフィーは考えました。
「これから海に向かって行ってもまた迷うかもね。だったら、あの子たちの村で泊めてもらおうよ。」
「そうだね、竹の水筒をくれて逃げるくらいだから悪い人たちじゃないものね。」
ソフィーとココは子供たちが逃げた方の道を歩き始めました。
あたりはすっかり真っ暗です。
ソフィーとココは月の光を頼りに歩いていましたが自信がないので立ち止まりました。
「どうしようか、また迷ったよ、どっちに行ったらいいのか分からない。」
「このまま進んだら海からどんどん離れてしまうかもね。」
「そんな、心細いこと言わないでよ!」
「ごめんごめん!こういう時はその場に立ち止って朝を待った方がいいと思う。」
「そうだね、明るくなれば気持ちも晴れるからね。」
ソフィーは道沿いにある岩に腰掛けました。
「暗いね。」
「暗いね、月の光がなかったら本当に真っ暗だね。」
「月があってよかったね。あの月を見ている人がこの世界にいっぱいいると思うと少しは気が休まるね。ママも見ているのかな、心配しているのかな?」
ソフィーとココが座っている岩の後ろの木々のシルエットに影が走ったのをソフィーとココは知りませんでした。
ソフィーは疲れてウトウトとしはじめました。
「ソフィー!ソフィー!起きて!」
ソフィーは目を覚ましましたがまだ周りは真っ暗です。
「まだ暗いじゃない!」
「何か音がするんだよ、何か近づいてくる。」
ソフィーは耳を澄ませると物音が近づいてきます。
ソフィーは岩の陰に隠れました。
息をひそめてソフィーとココはこちらに近づく音の方をじっと見ました。
暗闇から出てきたのは先ほどとは別の子供の集団です。
背中には籠をしょった子供の集団です。
ソフィーたちのいる岩場を通り過ぎるのを待ってココはソフィーに言いました。
「ソフィーあの子たちの後をついていけばあの子たちの村にいけるよ。」
「そうね、暗いし耳も目もついていないからついて行ってもわからないよね。」
ソフィーたちは子供たちのずっと後ろをついて歩きました。」
子供たちの後をついて小さな丘を越えました。
そこからは谷の方に向かう道がありました。
ソフィーたちは谷の方を見ると驚きました。そこには色とりどりのメロンくらいの光る球体の果実をつけた樹木が谷一面に広がっていました。
球体は美しく光っていて中には赤ん坊がひとつひとつ入っていました。
「なにこれ?人間の赤ん坊が入っているよ。」
とココが言いました。
ソフィーはあまりの美しさと驚きで返す言葉もありませんでした。
子供たちは汲んできた水を木の口に竹の水筒の水を飲ませてあげました。
そう、この木には口があって水をゴクゴクと飲んでいました。
「ソフィー、木に口があるよ。」
ソフィーは驚いて、ただ首を縦に振るだけでした。
水を飲んだ木の光る果実は喜ぶように光が点滅しました。
おおぜいの顔のない子供たちは愛おしそうに木をなでたり光る果実をなでたりしていました。
あたりは色とりどりの光る球体が暗闇の中で輝き、まるでクリスマスのツリーを思い出されました。
それは驚くほどの美しさでした。
その時、静けさを破るような叫び声が谷中に広がりました。
木に水を飲ませていた子供たちはいっせいに走り出しました。
「なに!どうしたの?あの声は何?」
「ソフィー気を付けて!」
パキンパキン!
森の奥から枯れ木を押し倒しながら大きなドラゴンが現れました。
ドラゴンは光る果実を食べ始めました。
ドラゴンは中の赤ん坊だけを吐き出して次から次に光る果実を貪り食いました。
吐き出された赤ん坊は顔がありませんでした。
「ソフィー!ドラゴンだよ!早く逃げなきゃ!」
「逃げるってどこ!どこに逃げればいいの?」
ソフィーが逃げ迷っていると、それまで光る木の果実を食べていたドラゴンは片目だけの目でギロリとにらみました。
「ソフィー!ドラゴンに見つかった!早く逃げて!」
「どこ!どこに逃げる?」
ドラゴンはドスンドスンと大きな足音をたててソフィーたちを追ってきました。
「ソフィー!追ってきたよ!」
ソフィーは恐怖で立ちすくんでしまいました。
「ソフィー!」
とその時、木の上に宙に浮かぶ何者かが現れ叫びました。
「あっちの方に逃げるんだ!」
その宙に浮かぶものは手首も足首もなく、ただ服の袖がヒラヒラと風になびいていました。
ソフィーは一瞬驚きましたがドラゴンの方が怖かったので、宙に浮かぶものの後について走り出しました。
ドラゴンは追ってきましたが宙に浮かぶ者はうまく小道を右に左に行きドラゴンの追跡をかわすことが出来ました。
大きな岩の下でソフィーは息を整えました。
「ああ!怖かった!ドラゴンって本当にいるのね。」
宙に浮いている者が言いました。
「あのドラゴンは腹が減るとあの谷に来て果実を食べるんだ。」
ソフィーは宙に浮かぶ者を見上げて言いました。
「あなたは誰なの?」
「私はこの谷の精霊、この谷を見守る精霊。」
「子供たちは何故顔がないの?」
とココが聞きました。
「あの子供たちはドラゴンが食べた果実の中に入っていたんだが心だけを食べて体だけを吐き出すので顔がないのだ。」
「心だけ食べているの?」
「そうだ!だから子供たちは笑うことも微笑むことも感動することもできない。ましてや泣くこともできない。かわいそうな子供たちなのだ。」
「かわいそう!ソフィー、なんとかできないの?」
「え!私は子供よ!出来るわけないじゃない、最近までベッドに寝ていて歩けなかったんだから。」
「そうだね。ましてや僕は手も足もない。陸の上じゃ何もできない。」
「精霊さんはドラゴン退治したことがないの?」
「私もこの通り手も足もないのでね。」
精霊は手と足の先をパタパタしました。
「しかし、一度だけ人間の手助けで戦ったことがある。」
「え!それはどうしたの?」
「大きな船に乗った人間たちが同情して船から大砲や銃を持ってきて戦ったがだめだった。」
「その人間はどうしたの?」
「多くの人間が死んでドラゴンに海の方に追われて船で沖の方に逃れた。男たちは勇敢に戦ってくれた。あのドラゴンが片目なのは人間たちが大砲で打ち砕いてくれたからだ。」
「もしかして、その船に私の顔を描いた旗がマストにかかってなかった?」
「そこまでは知らない、しかし知りたければ一人だけ船に乗り損ねた人間がいる。死んだ者たちの墓守をしている。」
「え!人間がいるの!そこに案内して!」
ソフィーはもしかしてソフィーに父の船の人かもしれないと思い胸が高鳴りました。
精霊はソフィーたちを森の中に案内しました。
そこには枯れ木で作られた粗末な小屋と多くの十字架のお墓がありました。
「ソフィー、お墓がいっぱいあるよ!」
「そうね。みんな勇敢に戦った人たちのお墓ね。」
ソフィーはひざまずいて十字を切り冥福を祈りました。
すると突然、小屋の中から銃を構えた小さな男の人が現れました。
「誰だ!手をあげろ!」
ソフィーは驚いて手をあげました。
「わ、私はソフィー怪しい者ではないです。」
と震える声で言いました。
「ん?どこかで見た顔だな。」
ソフィーより小さい男は目を白黒させながら考えました。
「お!おお!船のマストにかかっていた旗の顔だ。」
ソフィーは嬉しくなりました。
「そうです、それ私です。」
男は疑い深く銃を身構えました。
「嘘つけ!あの旗の女の子は船長の娘さんで病気で歩けないんだぞ!」
ソフィーは降ろした手をまた高くあげました。
「お前も宙に浮いている幽霊と同じ幽霊だな。」
「私は幽霊ではない、私は精霊。」
「船乗りさん、私は船長の娘ソフィー本物のソフィーなんです。」
「信じられるものか!こんな遠くに子供一人で来られるものか!じゃあ、どうやってここまで来た。」
ソフィーはどうやって説明しようかと目を白黒させながら考えました。
「お父様の手紙が来なくなって心配で眠りに着いたら、えっと、寝てる時に部屋に水が上がってきてベッドが浮いて、部屋から出たと思ったら嵐の海で・・・」
ソフィーは説明するのをあきらめました。
「とにかく気が付いたらピンクウサギ人間の島に着いたの。そしてパパが埋めたプレートを見つけピンクウサギ人間にどこに行ったか聞いてここに来たの。」
「ほう。ウサギ人間を知っているのか。」
小さい男は銃を構えるのをゆるめました。
「じゃあ、島を離れるときにもらった海の病気に効く物の味はどんな味か?」
ソフィーはパッと顔を明るくして叫びました。
「すっぱい!」
小さな男は銃を降ろしました。
小屋の中は意外に広くて切り株のテーブルや椅子があり棚にはきちんと整頓されたものが飾られていました。
「俺はリトルビッグ、体は小さいが心は大きい船乗りだ。あのドラゴンとの戦いでは最後まで銃でドラゴンの目を狙おうと思って近寄りすぎて蹴っ飛ばされた。気を失って気が付いたら船は出た後だった。」
リトルビッグは大きなため息をついて言った。
「きっと、誰かが死んだと思って、そう船長に報告したんだろう。」
「お気の毒、一人で寂しかったでしょう。」
「寂しくなんてないさ、外には多くの仲間が寝ているからね。」
ソフィーとココはリトルビッグの目に涙が光るのを見ました。
「それよりか、お嬢さんその背中の…何ですか?」
「あたしの相棒、ココっていうの。寂しい時話し相手になってくれる。」
「ほう、話し相手に・・・しゃべれるってわけか。まあ顔のない子供もいれば、ドラゴンもいるし、ピンクウサギ人間もいれば幽霊もいるしね。」
「私は幽霊じゃない、精霊だ。」
精霊は天井からソフィーたちのところに降りてきました。
「俺は何も驚かねえ。」
「それよりかリトルビッグさん、あのドラゴンを倒す事できない?」
リトルビッグの目が輝きました。
「やりましょう!やりましょう!仲間の弔い合戦だ!」
「ドラゴンを退治することが出来るのね。どんな方法で?」
「それは解らないが、ドラゴンが寝ている巣穴の場所は解っている。それをおびき寄せて西の谷底に突き落としてしまえば、二度と這い上がることもできない。」
「西の谷に谷底があるのね。」
小屋の隅にいた精霊が言いました。
「あの谷は底が見えないくらい深い谷底です。」
「そう!そこまでおびき寄せて突き落とせばいいのね。」
ソフィーは考えました。
「ソフィー、何かいい考えがあるの?」
ココはソフィーの顔を覗き見ながら言いました。
「ちょっと黙ってて。今考えているから。」
リトルビッグがぼそりといいました。
「あの片目を見えなくするといいのだがなあ。」
ソフィーはパッと大きく目を開けました。
「あたし天才!いい考えがある。」
「どんな、どんな考え?」
ココはパタパタと手をたたきました。
「精霊さんココぐらいの重さだったら持ち上げることが出来る?」
「やってみないとわからない。」
精霊はココを抱えてみました。
ココは宙に浮かび小屋の上まで浮かびました。
「ウワアー、空飛んでる!気持ちいい!」
ソフィーは言いました。
「ココ!天蓋ベッドからスッパイやつ持ってきて。」
「スッパイやつ?あれでどうするのさ。」
「いい考えがあるの。」
ソフィーは満足そうに微笑みました。
ソフィーたちは大きないびきをかいて眠りこんでいるドラゴンをじっと見ていました。
ドラゴンは洞窟の巣の中で夢でも見ているのか時折笑っているようにも見えました。
ソフィーは手で合図を送りました。
するとココを抱えた精霊がゆっくりと宙を浮きながらいびきをかいているドラゴンの真上まで来ました。
「ココ、スッパイ水をゆっくり流し込んで。」
ソフィーは小さな声で命令しました。
スッパイ水はドラゴンの鼻からゆっくりと流し込まれました。
精霊とココは、すぐさまドラゴンから離れましたがドラゴンはまだ気持ちよさそうに寝ています。
「あれ?ドラゴンにはスッパイのが効かないのかな?」
「ソフィー!ドラゴンを見てごらんよ、いびきが止まった。」
「ようし!行くわよ!みんないいわね!」
その瞬間ドラゴンんは大きく口を開け叫びました。
そして、目を開けた瞬間周りにいた顔のない子供たちが、竹の水筒で作った水鉄砲で、いっせいにドラゴンの片目にスッパイ水を発射しました。
ドラゴンは一瞬何が起こったのか分からなくて、動きが止まりましたが次の瞬間、強烈に目が痛いらしく巣の中でもがき苦しみました。
「ココ!次の出番!」
「ソフィー!怖いよう、怖いよう!」
「やるしかないのよ!精霊さんお願い。」
精霊は怖がるココを抱いて苦しんでいるドラゴンの目の前までココを連れて行きました。
「怖い!怖い!バカドラゴン、こっちだこっちだよう!」
ドラゴンは目を手でかきむしりながら、ココの声の方に大きな口を開けて威嚇しました。
危うく精霊とココは飲み込まれそうになりましたが、間一髪逃れることが出来ました。
「危なかったよう!」
「精霊さん、西の谷の方におびき寄せて!ココ!ドラゴンを誘い込んで!」
ココはぶるぶる震えながら叫びました。
「バカドラゴン!捕まえられるなら捕まえてみろ!バカバカドラゴン!」
ドラゴンは鼻息荒くココと精霊たちの後を追いかけますが、目が見えないので岩にけっつまずいたり、枯れ木に顔をぶつけたりしながら精霊とココを追いかけました。
そうするうちにドラゴンはだんだんと片目を開けられるようになりました。
「ソフィー!ドラゴンの片目が開いてきたよ。どうしよう、迫ってきたよ!」
精霊たちを追って走ってきたソフィーはドラゴンの前まで走り出てきました。
「やい!ドラゴン捕まえられるなら捕まえてみろ!」
ドラゴンはソフィーをギロリとにらみながら大きな雄たけびをあげました。
ソフィーは走りだしました。
「ソフィー、気を付けて!」
ココは心配そうにつぶやきました。
「大丈夫かな?」
ソフィーは大きな二本の枯れ木のすぐそばまで来ると振り返り、ドラゴンに叫びました。
「こっちだこっちだ、食べれるものなら食べてみろ!」
ソフィーは手をたたきながら大きな樹の枝の下をくぐりました。
ソフィーを追っているドラゴンは枝の下をくぐろうとしましたが顔が大きくて通れません。
口だけが枝から出ていてフガフガ言っています。
と、その時大きな枝の上にリトルビッグが現れました。
「これでようやく仲間の仕返しができる。覚悟しろ、ドラゴン!」
リトルビッグは枝の上から片目を見開いているドラゴンに向けて銃を発射しました。
ドラゴンは両目を失って、むやみやたらに暴れまくりました。
顔のない子供たちはドラゴンに向けて石を投げつけました。
ドラゴンは雨のように降る石から逃れようと歩き出しました。
「こっちだこっちだ!バカドラゴン!」
精霊とココはドラゴンの鼻先で叫びました。
ドラゴンは精霊たちを追いかけましたが、両目が見えないので転んだり木にぶつかったりしました。
精霊とココは西の谷の崖まで来ました。
下を覗いたココはぞっとしました。
「下は真っ暗で何も見えないよ。」
ココはブルブルと震えました。
精霊とココは宙に浮いているのですが目が見えないドラゴンは知る由もありません。
後ろからは子供たちがドラゴンに向けて石を投げつけています。
崖っぷちまで来たドラゴンに精霊は言いました。
「子供たちの顔を奪った罰を受けろ!」
ドラゴンは何も知らずに精霊たちを追いかけていますが片足は空を切り、そのままドラゴンは崖の下の暗闇の中に雄たけびとともに落ちてしまいました。
「やった、やった!みんなドラゴンをやっつけたぞ!」
ココは大きな声で叫びました。
ソフィーは飛び上がって喜びました。
子供たちは両手に持っていた石を打ち鳴らし喜びを現しました。
とその時、崖の暗闇から多くの光の球が登ってきました。
「ソフィー崖の下から何かが登ってくるよ!」
「えっ、何?この光の球?」
光の球は子供たちの頭を包み込み光り輝きました。
やがて光が収まると子供たちに顔が戻っていました。
そして谷中の子供たちの喜びの声と笑い声が響き渡りました。
第五章
ぽつんと雪と氷山の間を冬用に作り替えた天蓋ベッドが海の上を進んでいます。
天蓋ベッドの四方は板で覆われ上の方は二階を作り足し、煙突まであります。
その煙突からかすかに煙まで出ています。
下の方はアメンボみたいに丸太を組んだ足で天蓋ベッドを支えています。
「リトルビッグさん!もう少し暖かくならない?」
ソフィーは布団にくるまってがたがた震えながらステッキで天井をトントンとたたきました。
その天井の端がパカッと開きリトルビッグが顔を出しました。
「お嬢さん!あと少しで船の次の目的地ですから我慢してくだせい!」
「おなかもすいたの、ぺこぺこよ。もう何日もまともなもの食べてない。」
「あともう少しの我慢です。船の停泊地が近くですから、今探しています。」
二階ではリトルビッグが残り少ない薪を大砲を改良したストーブにくべています。
前方には窓があり大きな氷山が天蓋ベッドの横を通り過ぎてゆきました。
「船長!このリトルビッグが今、駆けつけますから!それまで、そこを動かないでくだせい!」
と、そこに外からココの声が聞こえてきました。
「リトルビッグさん!船が見つかったよ!リトルビッグさん!」
リトルビッグは満面の笑みで窓から顔を出しました。
「どこに停泊しているんだい!」
「ここから北に行ったところ。もう少し!」
リトルビッグは再び天井から顔を出しました。
「お嬢さん!船が見つかりやした。あともう少しです。船に辿り着けば食べ物や飲み物がありますよ。」
「あと少しなのね、元気が出てきた。」
ソフィーは窓を開けて外を見ると大きな山ぐらいの氷山がいくつも見えて天蓋ベッドの横を通り過ぎていきました。
ソフィーは外から吹き付ける凍るような風にも負けない位の笑顔です。
それはずっと会えなかったお父さんと会える喜びの笑顔でした。
大きな氷山を抜けるとそこにソフィーの顔を描いた旗がはためいている大きな船が現れました。
しかし、船は厚い氷に囲まれて身動きできない状態です。
ソフィーとリトルビッグは氷の上に上陸しました。
ソフィーはありったけの服を着込んでいます。
「大変だ!氷に閉じ込められている。これじゃあ身動き取れない。」
そこに海から上がってきたココが来ました。
「この船厚い氷で覆われているよ。」
「でも、船には備蓄の食料が積んであるんでしょう?早く行ってみましょうよ。」
ソフィーたちは走って船の方に向かいました。
ソフィーは船の前まで来ると大きな声で叫びました。
「パパ!パパ!」
リトルビッグも負けずに叫びました。
「おーい!リトルビッグが帰ってきたぞ!誰かいないか!」
しかし、辺りは静かで誰も答えてくれません。
リトルビッグは何かを見つけたらしく小走りに船に走り寄りました。
「お嬢さん、これを見てください。」
「これは何?」
「これは縄梯子です。でもこれは船に積んでなかったので外から誰かが付けたものです。」
「誰がつけたの?」
「わかりません、こんな寒いところに人が住めるとはとても思えない。」
「中に入ってみましょうよ。」
「私の後についてきてくだせい。」
ソフィーとリトルビッグは縄梯子を伝って船の上に上がりました。
船の上には何もかもが凍り、氷柱が垂れ下がっていました。
「お嬢さん、こちらへ。船の中に入ってみましょう。」
リトルビッグとソフィーは扉を開けて中に入ってみました。
リトルビッグは船員の名前をあげて呼んでみましたが物音一つしません。
「誰もいないのかしら?」
「リトルビッグとソフィーは別の部屋に入ってみました。
そこには食卓と椅子が多く並びその上には皿が並べてありました。その皿からは湯気が登っていました。
「ふむー、不思議だ。湯気が立ち上るぐらいあったかいのに誰もいないなんて。」
「このスープほとんどお湯だわ。中身はちっちゃなベーコンしか入っていない。」
リトルビッグは食料棚を開けてみますが空っぽで何も入っていません。
「食料がなく船の中には誰もいない。」
「みんなどこに行ったんでしょう?」
「おーい!誰もいないのか!」
ソフィーとリトルビッグはあたりに音がしないか注意深く耳を澄ませました。
そのとき、小さな音でカリカリと扉を掻くような音がしました。
「なに、この音?何か音がする。」
「なんでしょうこの音?」
「どこから聞こえる?」
ソフィーの目は細長い扉に向き、その扉に近づいて勢いよく開けました。
そしたら、小さな犬が飛び出しました。
犬はブルブルと震えています。
「ワンちゃんどうしたの?船の中で何があったの?」
「この犬はヘンドリックさんの犬だ。」
ソフィーは手を差し伸べました。犬はそのソフィーの手をぺろぺろなめ、身を摺り寄せてきました。
ソフィーはその犬を抱き上げ頬ずりしました。
「かわいそうに、何か怖いことがあって震えているのね。」
犬はキャンキャンと鳴き何かを訴えています。
「どうしたの?船の中で何があったの?」
すると犬はソフィーの腕をすり抜け外に出る扉の前まで来て前足で押し開けるしぐさをしました。
「リトルビッグさん、この子みんながどこに行ったか知ってるかも。」
「犬は鼻がいいからどこに行ったのか分かるかもしれないですね。」
扉を開けると犬は勢いよく船上に出ました。そして外の方を見てキャンキャンと吠えました。
「よっしゃあー!待っとけ、今下におろしてやるからな!」
と言いながら犬を抱えて縄梯子を降りました。
ソフィーもそのあとに続きました。
犬は下に降りると辺りをかぎまわると走り出しました。
「おい!待ってくれ!」
犬は振り返りながらソフィーとリトルビッグを導きました。
そのころ、ココは船の前で待ってましたが走り出したリトルビッグとソフィーにびっくりして話しかけました。
「ソフィー何処に行くの?」
「ココ、今忙しいから待ってて!」
リトルビッグとソフィーは犬を追いかけて息を切らしながら走りました。
「おーい!待ってくれ!」
犬は振り返りながら走りました。
そのうちにだんだんと人間ぐらいの高さの雪だまりの中を右へ左へ走っていきました。
リトルビッグとソフィーはへとへとになりながら犬の後を追っていきました。
「リトルビッグさん、ちょっと待って!」
「はあ、俺も限界です。少し休みましょう。おい!ワン公ちょっと待ちやがれ!」
犬は行ったり来たりして二人をせかしました。
その光景を見ている者がいました。
その者の目は雪だまりの中にあり、いくつもの目がありました。
その目がいっせいに瞬きしたとき、雪だまりは三人の雪男に分かれました。
雪だまりだと思っていたものは三人の雪男が重なっていたのです。
周りの雪だまりも次々と雪男に変わってゆき百を超える雪男たちがソフィーたちのもとに近寄ってきました。
それに気が付いたのが犬でした。犬はキャンキャンと悲鳴を上げて一目散に走って逃げました。
「おい!ワン公待ってくれよ。」
リトルビッグはソフィーを見た時にぎょっとしました。
「お嬢さん走って!」
ソフィーは後ろを向き驚きました。
ソフィーの近くまで雪男たちが近寄ってきたのです。
「きゃあー」
リトルビッグとソフィーは遠くを走っている犬の後を全速力で走りました。
雪男たちはだんだんと増えていき、ソフィーたちを囲むように膨らんでいきました。
犬は大きな氷山のふもとに辿り着き鼻をクンクンさせていました。
そこにリトルビッグとソフィーは息を切らして走りこんできました。
「行き止まりじゃない!私たち取り囲まれたわ!」
「お嬢さん安心してくだせい。あっしがお守りします。」
リトルビッグはソフィーをかばうように前に出て近づいてくる雪男たちから守ろうとしました。
しかし、雪男たちはだんだんと近づいてきました。
すると犬はある場所を吠えながら前足でカリカリとひっかくと、その氷の壁は突然、大きな穴が開きました。犬はソフィーたちを誘うように鳴いて穴の中に飛び込んでいきました。
ソフィーとリトルビッグは犬の後に続いてその穴の中に飛び込んでいきました。
その穴は滑り台のようになっていて右へ左へとソフィーたちは滑って行きました。
辿り着いたところは今まで見たことのない風景でした。氷の山の中をくりぬいて作られた都市です。
まるでそれは絵本で見たバベルの塔を反対にくりぬいたような巨大な螺旋階段の通路をもった都市です。
多くの人らしき人々が行き来していました。
また、その中心には小川が流れている森があり、その木にはいろいろなフルーツが実っていました。
ソフィーとリトルビッグはあっけにとられて見いっていました。
「リトルビッグさん!あそこに桃がなってるよ。」
ソフィーは走って桃をもぎってリトルビッグに渡し、自分も一かじり頬張りました。
「おいしい!久しぶりのフルーツ、こんなおいしい桃初めて食べた。」
「お嬢さん、あちらにオレンジも。」
ソフィーが振り向くと枝が垂れ下がるぐらいのオレンジが鈴なりに実っていました。
犬は小川の中に入って水を飲んだり泳いだりしました。
「こんな寒いところで、こんな大きな都市があるなんて信じられない。」
「船乗りの間には噂があったんです。ここの近くを航行した船の船員が、あるはずのない色とりどりの花が浮かんでいたとかフルーツなどが浮かんでいたとか。」
「きっとここから流れ出たのよ。」
と、その時。
「そうです。ここから流れ出ました。」
ソフィーとリトルビッグが驚いて後ろを振り返ると銀色の長い髪をした老人が立っていました。
リトルビッグはソフィーをかばいました。
「怖がらないでください。昔、海で死んだ恋人を弔おうとした者が禁じていた花や果物を海に流したのです。
「あなたは誰?」
「私はこの都市の長老です。ようやくここまで来られたのですね。あなたの勇気と知性の行動はこのココから聞きました。」
茂みの中から出てきたココは長老に抱きかかえられました。
「ソフィー、黙っていてごめんね。僕はここの住人なんだ。」
「最初からあなたがここに連れて来ることになっていたの?」
「そう。あることがあってそうなったの。」
「あることって、何?」
「私が説明しましょう。」
老人はココを抱いたまま、ソフィーたちに近寄りました。
「今から半年前に私たちはあなたのお父さんが氷の割れ目に落ちて気を失っているのを発見したのです。」
「えっ、パパが氷の割れ目に・・・」
「はい、たぶん氷に閉じ込められた船員の食料を探しに行って落ちたのでしょう。」
「それで、パパはどうなったの?」
ソフィーの胸はドキドキと高鳴り目からは涙があふれました。
「気を失ったままなのです。私たちの医術を学んだ者たちが診ても意識が戻りません。そして、その者たちが唯一可能性があるのはとても愛情を注いだ身内の者が耳元で叫べば意識が戻るかもしれないというのです。でも、その者たちが言うには愛と勇気と優しさを兼ね備えた力がある人物しか心の底まで届かないというのです。」
「愛と勇気と優しさ。」
ソフィーが言うとすかさずココが言いました。
「ソフィーはすべて持ってたよ。」
「そうです。ココの目からすべて私たちは知ることが出来ました。あなたはそのすべてをお持ちです。」
「パパに会いたい、会わせてください。」
「その前にリトルビッグさん。あなたはほかの船員たちの所にお連れいたしましょう。」
「それはありがたい、久しぶりに仲間に会える。」
リトルビッグはうれし涙を手で拭いました。
ソフィーと長老はソフィーのお父さんの所に向かうために螺旋になっている大きな通りを二人で歩いていました。
すれ違う人々は長老にすれ違う時両手を胸に重ねて敬意と尊敬が混ざった笑みで長老を見つめました。
長老は満面の笑みでそれにこたえました。
ソフィーが通りの下の方を見ると一面の緑に覆われた森や草原が見えました。いくつかの小川も流れていて氷山の中にこんな森があるなんて信じられませんでした。
長老はひとつの部屋にソフィーとともに入りました。
ソフィーが中に入ると数人の男女がソフィーのお父さんを看護していました。
「パパ!」
ソフィーは久しぶりに見たお父さんは長いひげに覆われ痩せて傷だらけでした。
それを見たソフィーは悲しくて泣きだしました。
「パパ死なないで!ようやく会えたのだから目を開けて!」
ソフィーはお父さんに抱き着いて頬ずりしました。
ソフィーの涙は次から次と目からあふれ出して止まりません。
その涙がお父さんの閉じた唇の上にポタポタと落ちました。すると、その口がかすかに動きました。
「ソフィー泣かないで・・・」
ソフィーははっとしてお父さんの顔を見ました。
その閉じていた目が段々と開きしっかりとソフィーの顔を見つめました。
「泣かないでソフィー、もう大丈夫だから。」
ソフィーは再び大泣きしてお父さんに抱きつきました。でも今度は喜びの大泣きでした。
長老に抱かれたココとソフィーは草原の中に立っていました。
「さあ、これでソフィーとはお別れです。ココお別れを言って。」
と長老が言いました。
「ソフィーずっとだましていてごめんね。」
「だましたなんて、ここまで導いてくれたんでしょう。」
「まあ、そうだけどね。」
ソフィーとココはお互いに笑いました。
「私はどうやって帰ったらいいの?」
ソフィーは不安そうに言いました。
「私たちの乗り物に乗って帰ってもらいます。ほら、あそこに来ています。」
長老が空を指さしますが、そこには何もいません。
その代り草原は波打つぐらい風が強くなってきました。
草原には大きな鳥の影だけがソフィーたちの周りを飛んで草原に着陸しました。
「何?私には何も見えないわ。」
「それはそうです。見えない鳥なのです。」
長老は両手を前につきだし、上にあげると草原の中にソフィーの天蓋ベッドがもとの形のまま現れてきました。
「あっ!私のベッドだ。」
「そう、あなたのベッドです。鳥の口の中にベッドがあってあなたがベッドの中に入って眠っている間に家まで送り届けます。」
「えっ、寝てる間に?」
「そうです。しかし、ベッドに入る前にこの薬を飲んでください。」
「薬?私病気なんかしてないわ。」
「これは記憶を消す薬です。お父さんたち全員も飲んでもらいます。そしてこの世界の事を一切忘れてもらいます。」
「リトルビッグさんやココの事もわすれるの?」
「そうだよ、ソフィーに会えなくなるのは寂しいけどこの世界の事を知られたくないのさ。」
「わかったわ。今まで私を支えてくれてありがとう、ココの事大好きだから。」
ソフィーはココに頬ずりしてその鼻にキスをしました。
そして、長老の手から薬を取り一気に飲み干しました。
「長老さんありがとう。」
長老はソフィーの手を取り言いました。
「それではお元気でさようなら。」
「さようならソフィー、僕はずっとソフィーの事を忘れないよ。」
ココの目から一滴の涙が落ちました。
ソフィーは見えない鳥の口の中にある天蓋ベッドに滑り込みました。
大きく手を振っているソフィーと天蓋ベッドは段々と見えなくなってそして、大きな鳥の影だけが草原を横切って行きました。
空を飛んでいるソフィーは天蓋ベッドの棚からブリキの缶を取出し手に隠し持った先ほどの薬を缶の中に入れました。
「薬なんか、大嫌い!」
ブリキの缶は元の棚に収められました。
そうしている間も、見えない鳥はすごい速さで空を飛び続けていました。
第六章
庭には色とりどりの花が咲いています。
庭師のおじいさんが丁度咲き頃の花を切ってソフィーに渡しました。
「お嬢さんがベッドから起き上がってこの庭に歩いてこられたのには本当に驚きました。」
「なぜ歩けるようになったのか私の方がびっくりしたわ。」
ソフィーは手にいっぱいの花束のにおいをかいでいると家の扉からお母さんが飛び出してソフィーに抱きつきました。
「ソフィー驚かないで。」
お母さんは体の向きを変えて扉の方にソフィーを向かせるとそこにはお父さんが立っていました。
ソフィーはまた大泣きに泣いて花束をお母さんに渡すと一目散にお父さんの胸に飛び込んでゆきました。
「ソフィー泣かないで、長いこと手紙が出せなくて悪かった。氷の海に閉じ込められて手紙が出せなかったんだよ。悪かったね、心配しただろう。」
「パパは悪くないわ、私が勝手に心配しただけ。」
「そうかそうか。泣くのはおよし。今日は食事に招待している者がいるんだよ、あんまり泣いていると泣き虫だと思われるよ。」
ソフィーが扉の方を見ると、そこにはリトルビッグが立っていました。
ソフィーは嬉しさのあまり走り寄ってリトルビッグの手を握りました。
リトルビッグは顔を真っ赤にしながら
「わ、私はリトルビッグであります。何故リトルビッグかというと・・・」
ソフィーは話を遮って
「私知っているわ!体は小さいが心が大きいリトルビッグさんでしょ。」
リトルビッグは驚いて目を白黒させました。
それを見て皆はおかしくて庭中が笑い声に包まれました。
天蓋ベッドとソフィーの冒険 @tnaka6156
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