仕事の疲れ

「んぁ~~~仕事疲れたでござる」

 俺はオフィスチェアの上で伸びをする。朝からちまちまとプログラミングしていて、やっと少し目処が着く成果がでたきがする。

「お疲れ様、友樹」

 夕陽が気を利かせて肩を揉んでくれた。彼女の細い指がゆっくりと肩に沈み込み、凝り固まった筋肉がほぐれてゆく。気持ちよさに思わずふと声が漏れてしまった。

「あれ、夕陽は喫茶店のほうは?」

 いつもなら彼女は働いている時間だ。俺が作業場所として使わせてもらっているリビングに彼女がこの時間いるのは珍しい。

「今はもう15時だし、お客さんの入りも少ないから。お父さんに任せてる」

 彼女はそう言って、手を俺の二の腕に沿わせた。

 すべすべの指が俺の二の腕にあたって気持ちいい。

「でも疲れって、なんで生じるんだろうな」

 仕事をすると、とにかく疲れる。全身に鉛を注入したように体が重い。

「ずっと同じ姿勢をとっていることによる身体の緊張とかが主な原因らしいよ? この前ネットで調べたとき乗ってた」

 夕陽の手が俺の腰までに来る。この辺りは俺がよく背中をまげて座っているせいで、本当に触られると気持ちが良い。

「もみもみしてあげるね~、お客様?」

 夕陽はよくこうやって俺の身体をマッサージしてくれる。身体の疲れがとれて気持ちいいのももちろんだが、俺はどちらかというと彼女のその優しさによって疲れを癒されていた。俺は機嫌がよくなって、よくその後夕陽にマッサージをし返した。彼女はいつも猫のように大きな瞳を細めて、気持ちよさそうにしていた。

「あれ? 二人で今日はマッサージですか? ゆあもやってみたいです~」

 しばらくしてゆあが何やら面白そうなことを見つけたという表情で、リビングに入ってきた。

「ゆあちゃん、友樹にマッサージされたら変なところ触られちゃうよ?」

 ちょうど俺がゆあにマッサージをしている頃だった。ゆあは興味津々といった様子でこちらに近づいてきたが、それを夕陽がやんわりと制する。

「ゆあは、友樹さんを幸せにする神様なので、大丈夫なのです!」

 謎理論でゆあは押し切ったようだった。

「そこまで言うなら仕方ないわね、じゃ、ゆあちゃん、私たちで友樹をマッサージしましょ。友樹、ソファに横になって?」

「え、俺まだ仕事少し残ってるんだが」

「可愛い女の子二人がマッサージしてあげるって言ってるんだよ? 今、マッサージされちゃお」

 夕陽は誘惑する小悪魔のような表情でそう囁きかける。その声に、俺の仕事をしようという意思はどこかに霧散してしまった。

「ふふ、ゆあが気持ちよくして挙げます」

 そうしてうつ伏せになった俺の腰辺りに夕陽が、そしてなぜか頭のあたりにゆあが乗っかった。

「むごっ」

 俺の後頭部はゆあのスカートに覆われ、なぜか柔らかい布の感触が感じられた。

「それじゃ~マッサージしていきますね」

「いや、なんでゆあは俺の頭に乗ってるんだ! 普通足とかじゃないか?」

 まあゆあの体重は軽く、ほとんど嫌な意味での重さを感じなかったのでよしとする。

「ふふ、友樹さんは首まわりと肩が凝ってたような気がしたので! ふふ……ゆあには見えたのです!」

 そう言ってゆあは俺の肩をもみもみとほぐす。夕陽は俺の肩甲骨の裏辺りなどをじっくりと押していた。

「んっ……くぅ」

 じっくりとゆっくり深い加圧をかける夕陽に対して、こそばしくも絶妙な力加減で柔らかい力をかけるゆあ。その二つの力が織りなすハーモニーに俺は思わず変な声を漏らしてしまった。


 

 

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